『天才の顔』
もしあなたの右の目が罪を犯させるなら、それを抜き出して捨てなさい。 五体の一部を失っても、全身が地獄へ投げ入れられない方が、あなたにとって益である。 (略)
『目には目を、歯には歯を』といわれていたことは、あなたがたの聞いているところである。 しかし、わたしはあなたがたに言う。 悪人に手向かうな。 もし、だれかがあなたの右の頬を打つなら、ほかの頬をも向けてやりなさい。
(マタイによる福音書より)
右目、左頬の欠落。 どうしても上記の言葉を思い浮かべてしまう。 「罪を犯した右目、右の頬を打たれたら左の頬をも向けなさい」
この石膏像が天才の顔だという。 キリストの教え、キリストは天才だと称賛しているのだろうか。
中空に渡した板はコの字型に刻まれているがこれは何を示唆するのだろう、時間かもしれない。 周囲は暗黒だが石膏の顔とそれを乗せた板だけには光がさしているのは「光あれ」という言葉の具現か…。 にもかかわらずビルボケ(死人)は漆黒である。
天才の顔は中空の薄い板の上に乗っているだけである。 危うい位置関係、少なくとも盤石ではない。
これはマグリットの基督教に対する感想ではないかと思う。
写真は『マグリット』展・図録より
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