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『冒険の衣服』
白いベールに覆われた裸婦が両手を上にあげて横たわっている。この両手は招いているのか拒否しているのかの判別は不明である。
上空にはオサガメが女とは逆の方向を向いて泳いでいる。
ここは、海底なのだろうか。幾層もの板が重なっているのは地層だろうか。億年の眠りの中で女が求めているもの、あるいは拒否しているもの…生々しさはなく清冽な印象である。しかし、あくまで裸婦である。
オサガメは男? 自由に浮遊しているが手足は不足であり、人間の女に接する術をもたない。この関係性は条理を外している。海底に沈みこんだ女の生死は?生きる条件を外した相に生きるということは、すでに幻であり、寓話の世界である。
女の着衣は薄衣で無防備である。
男(オサガメ)は鋭く硬い甲羅で、まるで戦闘服のようであるが、元来着衣など無い生き物である。
『冒険の衣服』(大胆な企て)とは何だろう。女は生きているが死んでいる、不自由である。男は女に関心を持たず、活性の自由を生きている。
通常抱く観念的な見解(感想)からいえば、意思疎通のない男と女の風景である。
この関係を暴く、大胆な構想である。
写真は『マグリット』展・図録より
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