『無題』
男と女を想起させる形である。男らしきものの形は平面であり音符も平坦なメロディであるが影を付けたことで空間を生じさせ人物を立ち上がらせている。
一方のポール(立体)は女体を暗示する形を示し、楽譜もリズムを刻んでいる。何よりの相違はポール(木材)と化した木から、枝葉が茂るように伸びていることである。
フェンスの向こうは何もなく(虚無)、上方に黄みを帯びた彩色があることで異様な空気感(世界観)を醸し出しているのは、明らかにここは《現実世界でない》と断定できる要素である。
死後(あるいは異世界)に於いての男女(あるいは両親に限定か)の差異、エネルギーの放出、蘇りへの執着だろうか。
豊かさと凡庸、豊満と平板、狂気と冷静・・・女は狂おしいまでの情熱を有した形であるが、男にある進むべき歩むべき(足)が欠如している。
女の横暴に委縮する男、あるいは女の情熱に無関心な男の景にも見える。
《矛盾》明らかなる不一致、足並み揃えて歩く構図ではなく、空虚な風の中に偶々居合わせた二人、少なくとも幸福の絵図ではないが、不思議に想像を掻き立てる作品である。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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