『レディ・メイド:木製コート掛け』
床に固定?本来壁に固定すべく用途の物である。床に固定したのでは使用目的の意味を削除されてしまう。
意味のあるものが意味が通用しない状況に設置されることの不遇。
目的は達し得ない、目的はこの物の主旨である。
物から存在理由を剥奪する設置、誤用。
コート掛けの死である。役に立たず、むしろ障害物と化したコート掛けには唖然とするほかない。
しかし、そこには仕掛けた本人(作家)の意思がある。
「存在とは何であったか」
水は生命に必須の物質であるが、災害においては生命を脅かす負の物質と化す。
コート掛けは生活において便利なものであるが、床に設置されたのでは不便なうえに邪魔である。
物は主張の術をもたない。ただ在るがままである。人間の叡智(知恵)によって、物は然るべき効果を生むような配慮がなされる。
有益―無益、有害―無害・・・。
床に設置されたコート掛けは、無益であるばかりか有害でもある。鑑賞者はこの提示を踏み越えていく、軽い軽蔑と失笑を残して。しかし、デュシャンは何気ないものの配置の誤用による社会のシステムを危惧している、有るべき正しい機構に矛盾はないかと。
写真は『DUCHAMP』ジャニス・ミンク(www.taschenより)
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