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画面を大きく占める窓をかこむ白の色面(壁)。これは室内の男と小都市のビルの上層部(風景)とを対峙させるツールである。繋がっているが分断を強め、一つの空気に融合させない巨きな意思を感じる。
小都会の真昼、おそらく沢山の人たちが眼下では忙しく働いているのに違いない。しかし、そのざわめきは上まで登って来ない。画の特質から音は排除されるが、もしかしたら、そのざわめきに耳を澄ませているのかもしれない。少なくとも男の関心は机上にはなく、小都市の屋上風景を見つめている。
男に束縛の形跡はなく自由である。見下ろすといった尊大もみられず、彼のオフィスの窓は大きく開放的である。背後からの指令は不明であるが、しばしの休息くらいは約束された職場であるらしい。
空はとてつもなく青く透明であり、光も存分に差し込んでいる。小都会という大きな船に乗船している満足と少しの揺らぎ・・・右手は仕事、何気ないが腰のあたりにある左手は軽微な痛みでもあるのだろうか。
たっぷりした充足感に見えるが、ここには自然がない。周囲は人工物ばかりであり、ここに緑はない。
肯定だろうか、否定だろうか。光の作る影、目の前の建造物の影の暗さ、室内を縁取る黒い影。光と影は共存であり、一体である。
写真は日経「画家のまなざし/十選」齋藤芽生より
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