『狂気について瞑想する人物』
つまり、狂気とは何かである。
正常でない状態…常軌を佚す。男は首を突き出して何かを凝視しているが、その眼差しの向かうところには何もなく、空無、虚空である。
眼差しは可逆かもしれない。
男は吸いかけの煙草を手にしている。すなわち時間の経過、あるいは止まった時間を示唆しているのかもしれない。男の着衣はごく普通の社会人の枠を外していない、つまり、正常な生活者の様相である。
にもかかわらず、狂気について瞑想するとある。彼自身は狂気でないということであり、狂気を客観的に追求しようとする姿勢である。
『狂気とは何か』この判断を究めようとするのは、自身の中に狂気と判断せざるを得ない何者かに思い当たるからではないか。
結果、彼が見出した答えは《見えないものを見る》、現実に姿形を見えるものとしない幻想、幻惑・・・自身の中の妄想かもしれず、自分自身を知る(見つめた先)茫洋とした世界に執着しつつ探求を続ける主観とそれを見る客観を一つにしたものである。
写真は『マグリット』展・図録より
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