続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

M『幕の宮殿』

2022-03-03 05:59:52 | 美術ノート

   『幕の宮殿』

 宮殿の幕なら分かる、しかし、幕の宮殿である。幕=宮殿ということだろうか。
 変形のパネルが六枚それぞれ孤立しているのか連結しているのかは不明だが、重なりつつも並列の態である。幕というものは一枚の布であり何かを被うものである。

 この場合、何を被っているのだろう、被いきれない室内の壁が露呈しており、壁も床もほぼ同色である。
 殿というものは大きな建物を指し、皇帝の御殿である。(あるいは神殿)
 建屋の一室に収まる凸凹のパネル一連が宮殿なのだろうか。殿は空間であり平面ではないが、あえてそう名付けているのだろうか。

 馬の鈴(伝説、口伝etc)、雲を浮かべた青空、緑の林・・・その三枚の前後に黒いパネル。いずれも時空を推しはかれないほどの巨きさを所有する、無限、果てないほどの地上を被うものである。黒い画面が夜であるならば、各三枚は昼である。
 見えるものと見えないもの。
 縮小された画面の持つ無限の広がりを持つ世界。
 被われたものは被うものをはるかに超越するという視覚の誤読。

 この差異の変遷、ひどく居心地の悪い不可解。これが幕の宮殿であり、決して宮殿の幕ではあり得ないものである。

 写真は『マグリット』展・図録より


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