続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

吉川宏志(私的解釈)画家が絵を。

2022-01-19 14:53:10 | 吉川宏志

 画家が絵を手放すように春は暮れ林のなかの坂をのぼりぬ

 画家が絵を手放す、譲渡…わたくしの手元から離れた、ゆえに再びわが物として眺める機会はない。
 もちろん加筆や修正は許されぬこと。大きな喪失感、わたくしから離れたことであの絵(作品)はどんな運命をたどるだろう。あずかり知らぬあの絵の未来、未練、執着、責任は計り知れない。見えないことへの不安と期待、たしかに絵(作品)はわたくしの視界から消えてしまった。
 費やした時間、完成までの思い入れの重さはすでに幻と帰した。

 見えない未来、華やぎの朧は曖昧模糊と霞んでいく。暮れなずむ林の混沌、大きな虚脱を繕うように一歩一歩坂を上って行く。
 わたくしは失ったのだろうか、あるいは確信を得たのだろうか。

 正負の均衡はつねに危惧されるべきものである。沈思黙考、絵(作品)は《恋・熱愛》だっかもしれない。春の慕情を打ち消すように未練を背中に残し、ゆるやかな坂を振り向かず上って行ったわたくしである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿