槿の花
画・江嵜 健一郎
10日ぶりに例の更地を訪れたら槿(むくげ)の花が元気に咲いていた。槿は下から下から咲いていく。槿は一日花と言われる。そのため忌み嫌う人もいるそうだ。しかし、花が一日でしぼんでも翌朝、次々つぼみが開花するから「新しい美」という花言葉が生まれたとヤフーのブログに出ていた。
中国、インドが原産。日本には平安時代に入った。幹や花は薬用に供される。韓国の国花である。
芙蓉の花もほぼ同時に咲き始めた。画材には不足しないが、体がついていかないのが嬉しい悩みである。
この日も下草取りに精を出した。水も肥料もやらないが下草取りは気を抜かないようにしている。花に確かめたわけではないが足元がすっきりするのであろう。居心地よさそうにしてる感じは確かに受ける。
一方、今年は特にグロリアスが元気である。下草取りをしていると通りがかりのさるご婦人がフエンスを超えて道路側にはみ出して咲いているグロリアスを見て「きれいな花ですね。名前は何というのですか」と声をかけて来た。「グロリアスといいます。豪華なという言う意味ですと物知り化をして答えたら「大変勉強になりました。ありがとうございました」と言ってその場を去った。
狭い路地ひとつへだてて小さなコンビニがある。いつものおばさんが、店から出てきて、息抜きに一服つけるために顔をだしたとき「何もお渡しするものはありませんが」と一言言ってレインリリーのはがきサイズのスケッチ画のコピーを渡した。
10日ばかりご無沙汰していたが、溝がいつもきれいだ。先のおばさんが拾ってくれているに違いないとささやかながらそのお礼の意味を伝えたかったからだ。
日本には昔おすそわけという習慣があった。花のお陰で道行く人が声をかけてくれるが、身近に住んでいても声をかける方も少なくなった。誠に寂しい限りである。(了)