瀬戸内寂聴さんは、東京新聞の超ロングインタビューで(8月15日の新聞見開き二面すべて)、北京で敗戦を迎えたときの話をしています。
「敗戦を知り、夢中で走って帰りましたよ。日本人はみな殺されると思ったから。預けていた子供が心配で。北京では日本人は威張っていたからね。・・・ほんとうに好きなように中国人をいじめているのを見ていました。
家に帰って、門の戸を閉めて息をひそめていたの。翌日、そっと戸を開けて覗いてみると、路地の向いの壁に真っ赤な紙がいっぱい貼ってあるんです。「仇に報いるに恩を以てす。」そう書いてありました。・・・・われわれ中国人は、戦争に勝ったが、日本人に報復してはいけないといさめる内容ですね。」
多くの日本人は、敗戦でこども置いて引き揚げ、残された子=侵略国の子どもを育ててくれたのは、中国の貧しい人たちです。われわれ日本人が、恩を仇で返したらたいへんです。
我が国では、1923年の関東大震災の時、憲兵隊だけでなくふつうの日本人が、多くの朝鮮人を虐殺しました。各地で、ふだんイジメていた朝鮮人に仕返しされると思い、何の罪もない朝鮮人や、日本人でも社会主義者と目された人たちを殺したのです。
ずいぶんの違いです。
いまの中国に非難すべき点はいろいろありますが、そこから中国憎しの思いに囚われたり、安倍政権のように敵視政策をとることの愚かさと危険をよく知らないといけません。
他者や他国を批判する前にしなけれなならないのは、自己や自国の検証・反省・吟味です。
人でなく、自分を。
武田康弘