優れた書と評判でしたので、 『日本人のための憲法原論』(小室直樹著・集英社刊)を読みました。
一般の大学教授とは次元を異にする明快な論法で感心しました。わたしの見方とダブる点も多く、共感しつつ読み進めましたが、最後の「つまずき」を見て、、うーん、やはり、「物書き」!旧態の概念に縛られてしまい、新たな発想や原理的思想を生み出すことができない。その点、残念だなと思いました。
彼の意見は次のようなものです。
「現代の日本は、天皇が『人間宣言』をしたために、何が正しいか、悪いかを決めてくれる権威を失って、金だけが尺度になってしまった。今や、子どもたちはモラルを完全に失ってしまった。このようなアノミーを作り出した原因を遡れば、すべて新憲法に行き着く。占領軍は、伊藤博文がせっかく『憲法の機軸』として導入した天皇教を取り除くことで、「自由」も「平等」も非常にいびつなものにしてしまったのだ。平等も自由も『神の前の』が必要で、それが日本では『天皇の前の』だったのに。」
小室さん、いつまでも古い常識にとらわれていては人類の生活・思想は、前に進みません。「絶対神」を措定しなければ、個人の自由と平等を柱とする人権思想、民主主義思想は成立しないと考えるのは、弱い思想としか言えないでしょう。
絶対性と世俗性、普遍性の関係についてここで細論することはできませんので、わたしの書いた 「恋知」第二章「恋知とはなにか」 をぜひ、ご覧ください。
武田康弘