この二か月ほど、ジェリー・リー・ルイスのCDやDVDをいろいろと聴き観てきたが、彼は誰とも似ていない。
プレスリーやビートルズが忘れ去られることがあったとしても、彼は忘れられないだろう、というよりも、彼は人間の普遍的な情動と律動を新しい音楽として生み出したという意味で天才であり、その行為と併せて「神話」上の人物と評するしかないと思う。
彼の死後、彼の音楽は普遍的という意味で「クラシック」として残る、わたしにはそう思われる。モーツァルトがロココ風の音楽の原型=イデアをつくったのと同じく、ジェリ・リーは、ロック風の音楽の原型=イデアをつくったのだ。作曲はさほど多くないが、編曲して歌い奏するパフォーマンスの強靭さは呆れかえるほど。まるで、ロック風音楽のイデアそのものが立ち現れる現場に居合わせるかのよう。奇跡のような神話的世界の現出!
☆彡写真は54才時
武田康弘