政府が、他の国の政府と、個々人の権利を縛る協定を結んでも、それが無効であるのは、国連の「世界人権宣言」等により明白で、異論の余地はありません。
日本政府が韓国政府に賠償金を払ったから、韓国人の徴用工問題(戦時中に韓国人が日本に徴用されて単純労働を強いられた)は解決積みという日本政府の言辞は、個人の人権を守るという政治の最大の目的を知らないことの証明です。「国家権力」と「個人の尊厳」が次元を異にする概念であることも知らないとは情けない限り。
韓国の新大統領の「徴用工には個人請求権がある」との発言は、原理原則上正しく、わが日本政府の言い分は、明白な誤まりです。
これは人権思想を内容としてもつデモクラシーのイロハです。それも知らない官僚と政治家の頭と心の悪さには、ただ呆れ返るのみ。日本の教育の本質的欠陥(=本質論なきただの事実学)の露骨なまでの象徴です。
恥を知りなさい!なんというテイタラク。
武田康弘(元参議院行政監視委員会調査室・客員調査員=「日本国憲法の哲学的土台」を国会職員に講義)
ごぶさたです。
不勉強で申しわけないのですが、「政府が、他の国の政府と・・・それが無効である」というのは、世界人権宣言の具体的に第何条に書かれているのか、教えてください。
その時々の情緒が最優先し、それまで積み重ねてきた政府解釈をいとも簡単に覆す法的安定性のなさ。これでは、日本に限らず、諸外国も韓国と交渉するリスクが高まるだけで、韓国自身に何らよい結果をもたらしません。世界中を見渡してもそうですが、特定の国への敵意を煽って国をまとめようとするのは、前近代的国家というほかありません。
「個人請求権」は、韓国と日本の国家間=政府間の約束事とは異なる次元にあります。
どのような政府であれ、国家権力で個人の自由権を奪うことは出来ないのです。
それが、国連の世界人権宣言の根本思想なのです。
ご指摘いただいた条文に改めて目を通しましたが、これは一般論として「差別的取扱いはよくない」というもので、国際法の国内的効力に言及しているものではありません。それに、請求権は人権に含まれるのでしょうか。
対立の当事者双方が「私が100%正しい」と言い張っていたら、どんな問題も解決しません。徴用工問題(慰安婦問題もそうですが)は、個人に請求権を認めることだけが唯一絶対の正解ではありません。外交は数学や物理とは違うんです。韓国は民主化以後も含め、左派政権のときですら、この問題は解決
済みとの立場を維持してきたのですよ。
私は、法律や歴史の専門家ではない武田さんが、「私はこう思う」ではなく「100%正しい」と断言してしまうところに、カルト的な怖さを感じます。
世の中には、自分の政治的主張を維持したいがために、対立する当事者が和解に向かうことを良しとせず、むしろ対立したままでいることを望む人たちが存在します。武田さんもそのお一人のように見受けられます。とても残念なことです。
けれども、政治レベルでの国家間の問題は「わき切れる」ものではないのは、竹田さんの言われる通りです。
わたしが、あえて厳しい言い方をしたのは、個人の権利にあたることを国家間で取り決めても、ほんらいは無効だという認識がない「日本の常識」=政府と個々人を同一視する風潮・思想に対する警鐘です。
個人の重さ=実存のかけがえのなさこそを基盤に置かなければ、すべては砂上の楼閣であり、韓国大統領がどう言おうが、それは二の次の話です。政府間ではなく、個人の関係性こそが基盤です。政府は、個々人を人権思想に基づいて下支えるのがほんらいの役割で、政府(韓国政府にせよ日本政府にせよ)が決めるのはありません。
この原則への理解→了解がないのでは困ります。