思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

一番「縁」が深く、好きな交響曲は、ベート-ヴェンの3番「英雄」です。

2017-05-30 | 芸術

 わたしが、最初にオーケストラを聞いたのは、小学5年生のときに父に連れられてです。上野の東京文化会館で、曲目は、ベートーヴェンの交響曲3番「英雄」でした。その前に序曲でも演奏されたかどうか?覚えていません。とにかく長かったです(笑)。1963年ですから、54年前のこと。

 自分のお小遣いで最初に買ったLPは、ベートーヴェンの交響曲5番(ショルティ指揮・ウィーンフィル)と6番(エーリッヒ・クライバー指揮・アムステルダム・コンセルトヘボウ)、高校生になったばかりのころ。次に「英雄」を買いました。ベーム指揮、ベルリンフィルです。LPは2000円でとても高かったですから、大事に繰り返し聴き、みな覚えてしまいました。

 それで、今日まで半世紀以上にわたりさまざまな音楽を聴いてきました。好きな作品も書き切れないほど多いですが、一番多く聴いてきて、今も聴いているは、「英雄」です。少しも飽きることがなく、いつも心身と頭の全部が満足する曲です。

 

 「英雄」の最初は、母の兄が残したSP(フルトヴェングラー指揮)でしたが、何枚もあり聞くのがたいへん。高校生以降は、LPで、またFM放送を録音して。今はCDですが、長いことお気に入りだったのは、クレンペラー指揮・フィルハーモニー管弦楽団、1959年の録音です。一昨年は、このオケでサロネンの指揮する「英雄」を東京芸術劇場で聴き、感無量でした。

 今は、新しい演奏もみなそれぞれ面白く、さまざまなよさを楽しんでいます。新たな感動が次々と、です。昔のワルターやフルベンもよく、「英雄」の魅力は絶対的で、しかもいつも新しい~~~~~~。ただし、やはり一番感動するのはクレンペラー盤で、音楽の大きさと格が違います。

 今年12月には、ジョナサン・ノットが、東響と「英雄」をやります。いまからドキドキしますが、驚くことに、そして嬉しいことに、ノットがインタビューで次のように言っていました。

「BBCミュージックマガジンが、指揮者たちに「最も好きな交響曲」と「最も重要な交響曲」を3曲あげてほしいというアンケートを取ったが、結果は両方とも「英雄」が一番だった。わたしも両方に「英雄」を上げた。英雄は、非常に現代的で、スリリングで大胆だ。」

 ナポレオンが共和主義を欧州にもたらすという期待が見事に裏切られた時、ベートーヴェンは怒り、スコアの表紙に書いたあった「ポナパルトに捧げる」の文字を消しましたが、ではエロイカ=英雄とは誰でしょう。もちろんベートーヴェン自身ですが、同時に、市民精神に富む共和主義者すべてが英雄です。ノットは、この曲は、「神」ではなく「人間」の民主主義的関係を歌ったものと言います。まさしくその通りで、デモクラシーの交響曲です。

 だから、オケの全員が話し合って解釈を決めるドイツカンマーフィルの演奏は、理念通りですし、ノットの民主的な人柄と言動もまた理念の現実化にふさわしいもの(東響の演奏会は12月ですが、すでにドイツの若手オケでの演奏がYouTubeで視聴できます)。かつてのクレンペラーの磐石不動の名演も各楽器の音が全部平等に聞こえ、しかもクリアーで十分に歌い切り、民主的でした。レイホヴィッツは、今生まれたばかリのように新鮮でダイナミック、心身が動きだします。ラトル・ウィーンフィルは、速めのテンポながらウィーンフィルの美質をよく引き出した現代的演奏(名演とまではいきませんが)。アインザッツに拘らないプレートル・ローマ聖チェチリア管は、楽しく豊かなエロイカ・・・これからもさまざまな心躍る「英雄」が登場するでしょう。楽しみは永遠です。


武田康弘

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