思索の日記 (クリックで全体が表示されます)

武田康弘の思索の日記です。「恋知」の生を提唱し、実践しています。白樺教育館ホームと共に

【ナーズムオラトリオ】(ファジル・サイ作曲)とは。

2024-06-05 | 芸術
【ナーズムオラトリオ】(ファジル・サイ作曲)とは

オラトリオとは、辞書的には以下の意味です。
( [イタリア語] oratorio 祈祷所の意から ) キリスト教的題材をオーケストラの伴奏による独唱、合唱を用いて劇的に構成したもの。 通常、演奏会形式で上演される。 一六世紀半ば、イタリアの宗教音楽劇に始まり、一七世紀中頃、形式が確立。

ところが、ナーズムオラトリオ(クリック)は、キリスト教でもイスラム教でもなく、まったく宗教性がありません。神概念がなく、信仰もありません。
世界的な大詩人であったナームズ・ヒクメット(1902~1963・トルコ)は、一神教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)を否定した無神論者(実存論のヒューマニスト)であり、時代的・現実的な制約のために共産主義者を名乗っていましたが(サルトルらがはじめた世界的な解放運動によりトルコ イスタンブールの監獄を出てソビエト連邦に亡命)、いわゆる「○○主義者」ではなく、人間主義者で、恋愛感情に基づく人間愛にあふれた人でした。

そのナーズムの詩16篇を読誦するオラトリオは、神ではなく人間賛美と人間告発(アメリカによる原爆投下と少女)と人間的抒情性にあふれています。歴史上、例のないこのオラトリオは、幼いころよりヒクメットの詩に親しんでいた桁違いの天才=ファジル・サイによりつくられ、2001年にイスタンブールで初演され大成功をおさめましたが、宗教によりかかり(宗教は民衆のアヘン)、ほんとうの人間性を忘却していた世界の歴史を変える偉大な一歩と言えます。まことに21世紀の幕開けにふさわしい真のルネサンス(古代のタレス・ソクラテスと古代インドのブッダが象徴する人間復興)の幕開けにふさわしい傑作です。

理屈抜きに大きく豊かな感動でみたされます。これほど魂がやすまる曲はありません。
ナーズムとサイの融合は、すさまじいまでの仕事を成しました。


                      作曲・ピアノ     ファジル・サイ



武田康弘


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