”P.C.L”って御存知でしょうか?
何も知らなかったら、私などパソコンに関する何かだと思ってしまいそうです。
知ったかぶりして、P.C.Lを満喫の皆さんこんにちは…なんて…これ”パソコンライフ”のつもりです。
私はいつもミスター・レトロからレクチャーを受けてるから知っていました。東宝映画の前身です。
黒澤明、ゴジラ、若大将、無責任男、銀座のお姉ちゃん(何だ、そりゃ!)のイメージの東宝ですが、この映画は松竹カラー(モノクロですが)が強いですね。
こないだ年配の人に”このヒト(監督の名前)知ってますか?”と訊いたら、
”ああ、名バイプレーヤーだった…ニヒルでねえ…”と…どうも様子がヘンだと思ったら、私も大ファンだった俳優の成田三樹夫さんと勘違いしてました。知らないのだそうです。もっともゴツイ顔の人だったので、イメージが合わないのは確かです…
P.C.L配給「妻よ薔薇のやうに」(1935)成瀬三喜男監督
まず、残念なのはこのメロドラマのようなタイトルです。当初は「二人妻」というものだったのですが、風紀上好ましくない、というお達しにより変更されてしまったとか…これだと内容がイマイチ伝わってきません。
私は昔の邦画を観まくっていた、平成4年ごろ京都のミニシアターで観ました。
さすがに私もこんな古い映画はあまり観てないので、知ってる俳優は主演の千葉早智子(役柄そのままのお嬢さん、モガ~モダンガール…付いてこれます?)と藤原鎌足(前世も同名…ウソ。日本映画黄金時代の名脇役。この成瀬作品、黒澤作品では常連の、笠智衆さんと並ぶオールタイムのおっちゃん)しか知りませんでした。
一攫千金の夢を追いかけて家出した父に愛人が出来、子供まで居るらしい…力づくでも父を連れ戻そうと、娘はその芸者あがりの妾との対決も辞さずと、血気盛んに信州の田舎まで乗り込んでみたが…したたかな女と思いきや、実によく出来た良妻賢母のような女性だった…。
娘の家に送られてくる仕送り?もこのヒトが工面していた…
父を恨みたいところだが、こんなことになってしまったのも暖かみに欠ける、母の父に対する態度にも問題が有りそう…
田舎のほのぼのとした風情がそう感じさせるのか、ドラマに出てくる人たちには本当に悪そうに見える人は居ません。
ドロドロしそうな状況ながらも深刻そうな人も見当たらない。達観したのか、ドライなのか、父の寄り戻しを諦めた娘は、
「私は私で上手くやっていくわ…」と明るく父に語る…
眠る蝶々、飛び立つ雲雀…どっかから聞こえてくるわらべ歌…
そうですね…ことは起きていることが起きてるって感じですかね…。
何の因果か…人間の力ではどうにもならない、運命の糸に絡まれながら人の生は淡々と流れていく…。
人間の性(さが)を感じさせながらも、あちこちに散りばめられたユーモア…
それを成瀬監督は、夏の終わりの涼風のようにさらりと描いています。
戦後の代表作の「浮雲」のようなジトーッと湿っぽく、ダル重い感じとは対照的です。
それにしても冒頭の丸の内界隈の風情には、三輪自動車(動く骨董品)などは除いて、現在とあまり違和感を感じさせません。
だがこの時分、日本は軍国主義化が急速に強まり、抜き差しならぬ事態へと足を踏み入れて行ってしまうのです。
大本教弾圧事件はこの年に起こり、全国的に思想、信仰の粛清の嵐が吹き荒れていたのでした…
でも、ありきたりな日常を通してのささやかなユートピアは何時の時代でも変わらないようです。
こんな時代にこんな作品が作られていたのか!…灰色一色なんかじゃなかったのです。
そりゃ、そうだろう…生まれてから死ぬまで灰色の人生もある訳無いですしね…。
夏が終わる頃、自分の人生と重なるところもあり、いつも思い出される映画です。
何も知らなかったら、私などパソコンに関する何かだと思ってしまいそうです。
知ったかぶりして、P.C.Lを満喫の皆さんこんにちは…なんて…これ”パソコンライフ”のつもりです。
私はいつもミスター・レトロからレクチャーを受けてるから知っていました。東宝映画の前身です。
黒澤明、ゴジラ、若大将、無責任男、銀座のお姉ちゃん(何だ、そりゃ!)のイメージの東宝ですが、この映画は松竹カラー(モノクロですが)が強いですね。
こないだ年配の人に”このヒト(監督の名前)知ってますか?”と訊いたら、
”ああ、名バイプレーヤーだった…ニヒルでねえ…”と…どうも様子がヘンだと思ったら、私も大ファンだった俳優の成田三樹夫さんと勘違いしてました。知らないのだそうです。もっともゴツイ顔の人だったので、イメージが合わないのは確かです…
P.C.L配給「妻よ薔薇のやうに」(1935)成瀬三喜男監督
まず、残念なのはこのメロドラマのようなタイトルです。当初は「二人妻」というものだったのですが、風紀上好ましくない、というお達しにより変更されてしまったとか…これだと内容がイマイチ伝わってきません。
私は昔の邦画を観まくっていた、平成4年ごろ京都のミニシアターで観ました。
さすがに私もこんな古い映画はあまり観てないので、知ってる俳優は主演の千葉早智子(役柄そのままのお嬢さん、モガ~モダンガール…付いてこれます?)と藤原鎌足(前世も同名…ウソ。日本映画黄金時代の名脇役。この成瀬作品、黒澤作品では常連の、笠智衆さんと並ぶオールタイムのおっちゃん)しか知りませんでした。
一攫千金の夢を追いかけて家出した父に愛人が出来、子供まで居るらしい…力づくでも父を連れ戻そうと、娘はその芸者あがりの妾との対決も辞さずと、血気盛んに信州の田舎まで乗り込んでみたが…したたかな女と思いきや、実によく出来た良妻賢母のような女性だった…。
娘の家に送られてくる仕送り?もこのヒトが工面していた…
父を恨みたいところだが、こんなことになってしまったのも暖かみに欠ける、母の父に対する態度にも問題が有りそう…
田舎のほのぼのとした風情がそう感じさせるのか、ドラマに出てくる人たちには本当に悪そうに見える人は居ません。
ドロドロしそうな状況ながらも深刻そうな人も見当たらない。達観したのか、ドライなのか、父の寄り戻しを諦めた娘は、
「私は私で上手くやっていくわ…」と明るく父に語る…
眠る蝶々、飛び立つ雲雀…どっかから聞こえてくるわらべ歌…
そうですね…ことは起きていることが起きてるって感じですかね…。
何の因果か…人間の力ではどうにもならない、運命の糸に絡まれながら人の生は淡々と流れていく…。
人間の性(さが)を感じさせながらも、あちこちに散りばめられたユーモア…
それを成瀬監督は、夏の終わりの涼風のようにさらりと描いています。
戦後の代表作の「浮雲」のようなジトーッと湿っぽく、ダル重い感じとは対照的です。
それにしても冒頭の丸の内界隈の風情には、三輪自動車(動く骨董品)などは除いて、現在とあまり違和感を感じさせません。
だがこの時分、日本は軍国主義化が急速に強まり、抜き差しならぬ事態へと足を踏み入れて行ってしまうのです。
大本教弾圧事件はこの年に起こり、全国的に思想、信仰の粛清の嵐が吹き荒れていたのでした…
でも、ありきたりな日常を通してのささやかなユートピアは何時の時代でも変わらないようです。
こんな時代にこんな作品が作られていたのか!…灰色一色なんかじゃなかったのです。
そりゃ、そうだろう…生まれてから死ぬまで灰色の人生もある訳無いですしね…。
夏が終わる頃、自分の人生と重なるところもあり、いつも思い出される映画です。