人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

戦慄の第一ラウンド

2018-04-19 17:56:09 | 回想
先日のボクシング村田諒太選手のミドル級初防衛戦は圧巻でした。
終始自分のボクシングをしていた(相手にそれをさせていなかった)ように見えました。
村田選手の試合でいつも感じるのは、前回の試合でもそうですが、体格面で全く外人相手と比べて見劣りがなく、むしろ優位に感じることです。それであのプレッシャーをかけ続けるのですから、相手はかなり威圧感を受けることでしょう。
これは、今までの我が国のボクサーでは、ことに中重量級では特筆すべきことです。これまで体格で負けていたという試合を何度観てきたことか...(そう言えば、残念なことになってしまった比嘉選手が、この劣った体格差を感じさせたのは、気のせいでしょうか?)
彼は、あのミドル級ゴロフキンと相対しても見劣りしないでしょう。実際の試合では、どうなるのか? 実現も夢では無い気もします。勝つことも?
しかし...村田選手も、ゴロフキンも"あんな試合"をおっぱじめる...何てことは想像もつきません。
あんな試合とは、私がもっとも観ていて鳥肌が立った、33年前4月、米国ラスベガスで行われたミドル級世界戦のことで、ゴロフキンと同じく、同級史上最強の声も高い王者マーベラス.マービン.ハグラーに、後に五階級制覇した、おそらく史上もっともスリリングな試合をするボクサー、"ヒットマン".トーマス.ハーンズが挑んだものです。
この試合はもう伝説になっており、色んなところで語られているので、ボクシング.ファンなら知らない人は居ないでしょう。
ことにその第一ラウンドこそは、多くの人が、"ラウンズの中のラウンド...最もシビレたラウンド"に挙げている程で、私もこんな観ていてションベンをチビりそうになったことはありません。
ハーンズが仕掛けて来るのは予想通りでした。"被弾する前に打て!" 彼の先制攻撃の迫力...そして"恐怖の一撃"のすさまじさは、前年、ロベルト.デュランを失神させた一戦で見せつけています。
驚いたのは、それに応戦したハグラーの方です。彼は普段序盤から仕掛ける事はほとんど無く、ジャブを突いて自分の距離を保ちながら好機を伺う...ネコみたいなスタイルです。ムダの無い、ネコ足のようなフットワークで、"つつー"と忍び寄る...そして、チャンスと見るや、どう猛なファイターに"豹変"するのですi そんなスロースターターの彼がのっけから明日なき戦いをやっているではありませんかi
"アッ...ハグラーの眉間が裂けた!"...しかし怯まずハーンズと強打の応酬を繰り広げる...ラウンドの後半、 ハーンズが打ち合いでは、分が悪いと、距離を取り始める...しかし、すぐにハグラーの装甲車のような前進を許してしまう...白熱の長い1Rが終わり、もう大方の勝敗は見えてしまいました。
2R...ハグラーはいつもの冷静なボクシングを見せます。ハーンズもアウトボクシングで立て直そうとしますが、ハグラーの圧力を防ぎ切れません。ハグラーは勝負どころを掴んだか...
3R...開始早々ハグラーのヒタイの傷がひどくなり、ドクターチェックが入る...ハーンズの勝機はこれによる負傷TKOか?
しかし、これでハグラーに、スイッチが入ったように又強打を繰り出し始めました。"もう、一発命中したら終わるだろう"と思ってたら、すぐテンプルに右がヒットi ハーンズは朽ち木が崩れるようにダウン...
試合の決着が早まったのは、ハグラーの負傷だったかもしれません。"止められる前に仕留めねば"ということ...
いや、あの1Rの両者の"明日なき戦い"を観たら誰でもそう感じざるを得ないでしょう。
試合後のインタビューでハーンズは記者からの「打ち合いを避けて、距離を取りながら戦う、という選択肢は無かったのか?」という質問に「あれしか勝てる方法は無かった」と答えていましたが、打たれ弱い自分の方にリスクのある、オール.オア.ナッシングの戦いを挑んだ彼の心意気もアッパレでした。
試合は一方的だったという観方もあるでしょうが、勝敗は紙一重です。ハグラーのようなどんなタフガイでもマトモに当たったら立ってられる保証等無い、ということを充分に感じさせる猛攻もハーンズは見せてくれました。それだけにハグラーも本気モード全開にならざるを得なく、ボクシング史に残る一戦となったのでしょう。
"これでしか勝てない"、"よしこれで勝てる"...三分間の中にその試合のすべてが凝縮されたような第一ラウンドだったと思います。
後にも先にもあんなスゲー試合は観たことありません。(リアルタイムで観たゾi)



コメント (12)
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