からくり出張所

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ウルトラマチックの復活

2011年06月07日 12時01分17秒 | からくり情報

 このところ午前中は家で仕事というパターンが定着してしまいカメラを抱えた鐵道旅、いわゆる窓鐵が出来なくなっています。近所の街へチラッと出かけてますが、この週末は前回紹介した中古カメラ市でした。 早田カメラで鉄人から不調なカメラの調整法を伝授されたのでせっせと取り組み、無事復活したのでメモしておきます。

独逸フォクトレンデル社のウルトラマチックというメカニズムの極致のカメラです。 このカメラ自体が完動品としてみるのが希なもの。希だから高いのかというと動かなくなる確率が高いので安いという皮肉な製品です。 もともとフォクトレンデルのカメラはひねくれた機械が多くて分解を拒否する構造が多いようです。機械的な謎解きをやりながら修理するという技術者泣かせとでも云えます。 私も十年ほど前に近代カメラを修理しようと思いましたが、早田さんから十年早いと云われてしまいました。既に一昔前、ますます腕が落ちたのでこれらのカメラの修理は諦めました。

Dscn0702

中でも修理が大変なものがこのカメラ、初期の欧州一眼レフは、レンズシャッターによるものが殆どで、シャッターボタン押下と同時にファインダーが暗転するのが一般的でした。このカメラのみ撮影しても明るい画面が残ります。クイックリターンミラーという今では当たり前の機能をフィルム巻き上げレバーでチャージしたエネルギーを使い、一気にやってのけるのです。 その後主流となるフォーカルプレーンシャッター機では内部の機能分担が確立されたので単純なメカになるのですけどレンズシャッターでは極めて複雑な動作を要求されてしまいます。Nikonにもレンズシャッター式一眼レフニコレックスというものがありましたが、早々と撤退したと思います。故障が多いのです。 このブログをご覧になるとウルトラマチックの複雑な動作をご理解いただけると思います。(引用感謝)

ボディのあちこちのゼンマイをチャージしつつ作動させるメカニズムでオートマター的な構造はこのメーカも含め独逸カメラに見受けられます。 考える設計の原点のようで大変興味深く好きな世界です。

Dscn0705

前置きが長くなりましたが、クイックリターンするはずのファインダーが暗転したままで本来開いているはずの遮光セクター(板)が閉じたままになっています。潤滑油が粘って動作を邪魔しているのかなぁ-? でした。 早田さんの助言は、5Bまたは6B鉛筆芯を粉にして塗(まぶ)せばいいと云う簡単なもの。 その通り実行してみると見事にもとの動作が戻りました。 これでお宝が復活しました。カメラの下に置いた鉛筆がみそであります。

これはセルフタイマーを作動させた状態です。この薄い金属板が潤滑油のため動作が渋くなっていました。

「こいつは修行カメラである。」、「常に使い続けないと駄目になる。」、「シャッターを切ってもチャージしてもスプリングに常に負荷がかかっている。動かし続けることが保管法である。」 などの止まれば倒れる自転車の運転と云われていたのをやっと理解しました。(汗)

「まだ動いている? あ、よかったね。」だそうです。 「強いて云えば、バルブで開いた状態が負荷がかかっていないのかなぁ-?」だそうです。 えらいものを背負い込んだものだと今更ながら思っております。(苦笑)

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とはいえ、メカマニアから見たらお宝には違いなく、この時代に複雑な機構でシャッター優先AEカメラを作り上げたことには脱帽してしまいます。私の中学二年生の頃ですね。このようなカメラが存在するなど考えたこともありませんでした。(笑)

Dscn0706

このセレン光電池の受光窓はいま見ても不思議な姿です。上部の四角な出っ張りはレンズの絞りとシャッター値をファインダーに表示するためのプリズムです。ファインダー内には現在の露出状況も表示されているので仕様的には現代カメラと遜色ありません。 が、唯一の弱点は自分の複雑さに一人相撲で負けてしまったと云うことでしょう。(苦笑)

カメラは1962年製、50年前のものとは思えぬデザインと機能に恐れ入るカメラであります。 楽できる設計があったと思うのですが、あえてこの構造で作り込んだというゲルマン精神には恐れ入ります。これが国民性とでも云うのでしょう。

これをご覧の皆さまの感想にはいかがなものがありましょうか?

久し振りのカメラネタ。少しは前向きになったものの、原発の後始末が相変わらず気になってなりません。 もうお昼、とりあえずの連絡もあったので外出できそうです。

そうそう、この鉛筆の粉での修理はあくまでもきちんと整備したカメラが不調になったときの手段なのでその辺に転がっているカメラには応用できません。このカメラは早田カメラブランド品なので復帰したのだと思います。念のために。