スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

竜王戦展望&虚偽と誤謬

2007-06-15 20:57:30 | 将棋トピック
 竜王戦は各組の優勝者および本選出場者がすべて決定し,渡辺明竜王への挑戦者を決めるトーナメント表もできあがりました。そこで今日はこれを展望してみたいと思います。
 まず左の山。中原誠永世十段が,1組では2回戦で佐藤康光二冠に敗れたものの,その後,郷田真隆九段,丸山忠久九段を連破して4位で本選入りを果たしました。長年続けてきた理事の激務から解放され,将棋一本に打ちこめる現状で,どの程度までやってくれるかはひとつの見所といえるでしょう。しかしやはり本命は谷川浩司九段で,1組優勝者は挑戦者になれないというジンクスこそあるものの,木村一基八段が対抗といったところでしょうか。若い戸辺誠四段や片上大輔五段が,勢いに乗ってどこまで旋風を巻き起こせるかも注目です。
 一方の右の山は超激戦区,もちろん実績的には羽生善治三冠と佐藤康光二冠が上ですが,深浦康市八段と久保利明八段も実力者ですから予断は許しません。昨年からシステムが変わって,1組に手厚くなりました。その昨年もそうだったのですが,この右の山から挑戦者が出るのではないかというのが僕の予想です。
 いずれにしろだれが挑戦者となってもタイトル戦は楽しみですし,渡辺竜王にとって楽な戦いとはならないことは必至でしょう。

 明日から高松記念が始まります。当地三連覇をかける伏見俊昭選手に注目です。

 不足している認識の内容がどういうものであるかということについては問題が残りますが,第二部定理三五でいわれていること自体についてはさほどの難しい点はないだろうと思います。しかしここで注意しておかなければならないのは,混乱した観念自体が虚偽あるいは誤謬であるのではなくて,混乱した観念のうちにさらにある何らかの認識の不足が認められる場合に,それが虚偽とか誤謬といわれるのであるとスピノザがいっている点です。すなわち,人間はある混乱した観念を有している限りで誤っているというわけではなく,その混乱した観念について,さらにある何らかの認識の不足がある場合にのみ,誤っているといい得るのです。
 僕はこれまで,虚偽あるいは誤謬といういい方で,虚偽と誤謬を同一視してきました。これは,この定理三五からして,スピノザの場合も同様でしょう。しかし,虚偽に反対の意味で対応するのは真理であり,第一部公理六,また第二部定義四から,人間の精神が真理を認識するというのは,人間の精神のうちにその事物の真の観念,十全な観念があるということです。そして混乱した観念はこの十全な観念に反対の意味で対応します。そこで僕は今後はこれを生かす意味で,混乱した観念についてそれを虚偽といいます。したがって,今後の僕のことばの意味の上では,虚偽はそれ自体で誤謬を構成しません。虚偽にさらにある認識の不足が含まれているときに,それを誤謬であるということにします。つまり,虚偽と誤謬をはっきりと異なった意味で用いるということです。『エチカ』の意味からは少し離れますのでご注意ください。
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富山記念&第二部定理三五

2007-06-14 20:53:48 | 競輪
 昨日,決勝が行われた富山記念の回顧です。
 合志選手がSを取り,小嶋選手の前受け。3番手に武田選手,6番手に石丸選手,8番手から新田選手で周回。セオリー通りに新田選手から上昇し,残り2周のホームで小嶋選手を抑えると,このラインを追った石丸選手がさらに抑え,上昇してきた武田選手がバックから打鐘にかけて石丸選手をさらに抑えて先行態勢に。ホームは関東,瀬戸内,東日本,西日本の一列棒状で通過。小嶋選手と新田選手は捲りに出たのですが,武田選手のスピードがよく,とても前まで追いつけず。結局そのまま武田選手が逃げ切って優勝。マークの幸田選手が2着で3着にも3番手の諸橋選手と,関東勢が上位を独占しました。
 優勝した茨城の武田豊樹選手は3月の熊本記念に続き,今年2度目の記念競輪優勝。後ろ攻めになった新田選手がわりと早めに動いたので,先行しやすい展開になったのが第一の勝因でしょう。準決勝などを見ても調子もよかったようです。今後は何といってもGⅠ制覇に期待。もちろんそれだけの力がある選手です。
 小嶋選手は完全な失敗レース。いくら力があってもこれでは手も足も出せないでしょう。前受けはひとつのパターンですが,ほかのラインの動向も気にする必要がありそうです。

 人間の精神mens humanaを現実的に構成する観念ideaの多くが混乱した観念idea inadaequataであると考えられるということ,またそれら表象imaginatioによる混乱した観念は,の例からも明らかなように,それについての何らかの十全な観念idea adaequataが同じ人間の精神のうちにあったとしても,そのことだけによっては除去されることも排除されることもないということがこれで明らかになりました。
 僕は十全な観念と混乱した観念の関係は,前者が実在的なesseであるのに対して,後者は非実在的な無であると考えているわけですが,もちろん第一義的には,前者が真理veritasを構成するのに対し,後者は虚偽falsitasを構成しているわけです。したがってこれでみれば,人間の精神の大部分は虚偽から成立しているのであって,かつその虚偽は,それに関する真理によっても矯正されることはないということになります。すると,人間の精神は,常に誤謬errorに満ち溢れたものであるということが結論されるように思われます。そこで,こうした事柄が『エチカ』においてはどのようになっているかということをみていくことにしましょう。これは第二部定理三五です。
 「虚偽[誤謬]とは非妥当なあるいは毀損し・混乱した観念が含む認識の欠乏に存する」。
 この定理Propositioがいっていること自体には,それほど難解な要素はないのではないかと思います。
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関東オークス&月

2007-06-13 22:31:12 | 地方競馬
 3歳牝馬のダートチャンピオン決定戦の関東オークス
 一斉の発馬からマルノマンハッタンが先頭に立ちましたが,外からパチョリがこれを交わし,1周目の正面から2周目の向正面にかけて後続を3馬身から4馬身離しての逃げ。2100メートルなので正確なラップは分かりませんが,前半の1000メートルはおそらく62秒台で,メンバーを考えれば超ハイペースであったと思います。
 中位に控えていた1番人気のホワイトメロディーは3コーナーの手前から進出。パチョリはすぐに後退して,2番手で追っていたカネショウバナナが食い下がりましたがこれも4コーナーまで。直線に入るとホワイトメロディーが抜け出し,後方からのレースになったケアレスウィスパーが追ってはきたものの,前を捕まえるだけの脚色はなく,2馬身半の差をつけてホワイトメロディーが優勝。ケアレスウィスパーが2着で,5馬身差の3着にはアルヴィスが食い込み,JRA勢の上位独占となりました。
 優勝したホワイトメロディーはこれが重賞初制覇。前々走の芝では結果が出ませんでしたが,前走はオープン特別を牡馬相手に僅差の3着になっていて,牝馬同士では力が上でした。前半が速かったということもありますが,2分16秒5という勝ちタイムも良馬場としては優秀と思います。やや折合を欠く面がありますので,ハイペースも味方したのではないでしょうか。
 2着のケアレスウィスパーは前走でホワイトメロディーと同じレースに出走。おおよそそのときと同じ程度の差今日もをつけられていますので,現状での能力は出したものと思います。

 第四部定理一で証明されていることは,具体的に考えればたとえば次のようなことであるといえると思います。
 僕たちは夜空に月を見上げるとき,実際には月がそこにある位置よりは,ずっと近くにあるように知覚します。これが第二部定理一七による,人間の精神による月の表象です。しかし,実際には月は僕たちがそう感じるよりはずっと遠い位置にあるわけですから,第二部定理二五に示されているように,これが混乱した観念であるということは明らかだといえるでしょう。そこでもしも,僕たちが月をただこのように表象し,月の真の位置,すなわち地球と月との間の距離について何らの観念も有さず,また,人間の視覚の特性等についても何も知らないと仮定するなら,僕たちは月が実際にあるよりも近い位置にあると認識することになると思います。
 一方,僕たちが月と地球の間にある距離について,あるいは人間の視覚というものの特性について,正しいことを知っているならば,僕たちは少なくともそのことについてはある真の観念を有しているということになります。しかし,そうした真の観念を有していさえすれば,月が実際にあるような遠くの位置に知覚できるかといえば,そうではありません。むしろそうしたことを知っていようと知っていまいと,月は実際にあるよりは近い位置にあると僕たちは表象するのです。したがって,真の観念が真であるということだけでは,僕たちの混乱した観念,とくに表象が排除されることはないということが,経験的にも証明できるのではないかと思います。
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北海道スプリントカップ&表象の排除

2007-06-12 22:22:12 | 地方競馬
 JRA勢が上位人気を占めた今晩の北海道スプリントカップ(動画)は,そのJRA勢が上位を独占するという堅い決着になりました。
 先手を奪ったのはディバインシルバー。これをトロピカルライトとアインカチヌキが追っていき,この3頭が後続を少し離すという展開。4コーナーで馬群が大きく広がり,ディバインシルバーとトロピカルライトの間が大きく開いたところ,好位のインに控えていたアグネスジェダイとその後ろにいたプリサイスマシーンがここを突いて進出。先に抜け出したアグネスジェダイがプリサイスマシーンの追撃を凌いで優勝。プリサイスマシーンが2着で,外を回る形になったトロピカルライトが3着でした。
 優勝したアグネスジェダイは昨年のクラスターカップ以来の勝利で,このレースは昨年に続いて連覇。気温の上昇とともに体調を上げるタイプ。年齢的にもう上積みはないものと思いますが,衰えているというわけでもありませんので,この夏はもう一暴れできそうです。
 2着のプリサイスマシーンは1000メートルでは少し距離不足でしょう。芝ダート不問で堅実に走る偉い馬だと思います。
 トロピカルライトは少し外を回りすぎた感じ。もう少しうまくコーナリングができていれば,少なくとももっときわどいレースができていたと思います。

 明晩は川崎で関東オークス。混戦模様ですが,ホワイトメロディー◎,ピュアーフレーム○,ケアレスウィスパー▲,シーホアン△の順にこの4頭で。

 富山記念も決勝です。並びは武田ー幸田ー諸橋の関東,新田ー金成の東日本,小嶋ー合志の西日本,石丸ー米沢の瀬戸内で4分戦。やはり小嶋選手◎と合志選手○が主力になりますが,ここはうまく駆ければ武田選手▲と幸田選手△の線もありそうです。

 第四部定理一にあるように,ただ真の観念が真であるというだけでは,人間精神のうちにある,あるいは人間の精神のうちに生じる混乱した観念,とくに表象が除去されたり排除されたりすることがないのであれば,いかにして表象(表象像)が除去ないしは排除されるのかということが,ひとつ問題になってくるのではないかと思います。
 僕はこれについては,第二部定理一七の中にすでにその答えが示されていると考えています。すなわちこの場合には,もしも人間の身体がある物体の現実的存在を排除するような刺激を受けるならば,この表象は排除されるのです。ただし,第二部定理六により,観念はそれが生じるとしても除去されるとしても,その直接的原因は別の観念ということになりますので,正確を期するなら,その物体の現実的存在を排除する刺激を自分の身体が受ける観念というべきかもしれません。そしてこれは,僕が考える表象のうち,定理一七の外部の物体の知覚だけでなく,第二部定理一九の自分の身体の知覚,また第二部定理一七系の想起と,それに関連した想像の場合にも同様であるということになると思います。
 したがって,表象,あるいは混乱した観念を人間の精神から排除ないし除去するのは,十全な観念であるとは限らないのです。むしろ,人間の精神を構成する観念の多くは混乱した観念であるということに注目するなら,ある混乱した観念を人間の精神のうちから排除するのは,別の混乱した観念であるという場合が多いであろうということになると思います。
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峻峰剱賞&第四部定理一証明

2007-06-11 22:04:26 | 競輪
 富山記念2日目優秀の峻峰剱賞(動画)。事前の予想と異なり,南関東は新田ー松坂ー加藤という並びでした。競走得点は加藤選手が上なのですが,松坂選手がS級1班であるのに対し,加藤選手はS級2班ということで,こうなったものと思います。
 前受けは石丸選手。3番手が小嶋選手で7番手から新田選手という周回。残り2周から新田選手が上昇。バックから打鐘にかけて石丸選手を抑えて前に。小嶋選手も外に出して打鐘過ぎから巻き返す構えであったので,新田選手もそのまま流さずに先行となりました。小嶋選手の捲りに対して新田選手もある程度は抵抗しましたが,バックでは小嶋選手が捕えて前に。そのまま中部勢が捲りきり,浜口選手の追撃を振り切った小嶋選手が1着。マークの浜口選手が2着で,3番手の古田選手が浜口選手の外へ行ったので,内をついた4番手の島野選手がこれを僅かに捕えて3着。古田選手も4着ですので,結束した中部勢が完全に上位を独占しました。
 今日は前を回った3人は,いずれも正攻法で先行するのを得意とするタイプではなく,かますか捲るかしたい選手。その中では新田選手が最も先行する選手ですので展開は予想通り。また,こういうメンバーでしたので,新田選手自身にも自分が先行という意識があったようで,その分,ほとんどもつれることのないレースになりました。こうなれば力が上位の選手が順当に勝つ確率は高くなりますので,小嶋選手にとっては楽なレースだったのではないでしょうか。連勝ですので完全優勝を目指すことになります。

 明日は北海道スプリントカップ。今年は旭川で夜の開催です。ここは3歳のトロピカルライト◎に期待。アグネスジェダイ○とプリサイスマシーン▲が強敵で,アドミラルサンダー△とヒロショウグン△が押え。

 第四部定理一のスピノザの証明は,これから明らかにしていくことを援用していますので,ここではそのまま使うことができません。しかし僕の考えでは,この定理というのはたとえば第二部定理二五第二部定理二七から明らかなのではないかと思います。
 なぜなら,これらの定理から,人間の精神が外部の物体や自分自身の身体を表象するとき,この観念は混乱した観念であるということが明らかになっています。ところでこれらは定理なのですから,ある普遍性をもって証明されているわけです。ということは,人間の精神を構成している,これらの混乱した観念以外の観念がどういうものであったとしても,この定理は成立するということになるでしょう。すなわち,人間の精神のうちにほかにどんな十全な観念が存在するとしても,人間は外部の物体や自分自身の身体を表象し,これは混乱した観念であるということになるのです。
 つまり,たとえAの真の観念が予め人間の精神のうちに実在すると仮定しても,Aがこの人間の身体を刺激する限り,この仮定には関係なく,この人間の精神のうちにはAの混乱した観念が生じるということになります。したがって,単に真の観念が真であるということだけでは,混乱した観念が人間の精神のうちから排除されることはないということになります。
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ROD&第四部定理一

2007-06-10 20:51:23 | NOAH
 8日のNOAHの横浜大会では,予定通りのGHCタッグ選手権の試合が行われました。
 挑戦したディーロ・ブラウン選手とブキャナン選手のチームはRODとして全日本プロレス(NOAH旗上げ後の)に参戦。全日本プロレスはGAORAで見ることができますが,G+のNOAHのようにチェックしているわけではなく,やっていれば見ることもあるという程度ですので,僕にはあまり印象に残ってなく,今回の初参戦となったNOAHでの試合を見た限りですが,ふたりとも大柄ではありますが,パワーに頼るというタイプではなく,むしろ器用な動きをする選手という印象。プロレスラーのタイプとしては,テリー・ゴディ選手に近いものを感じました。ふたりが揃って同じようなタイプですので,リズムが合っていれば強さを発揮できると思いますが,それが崩れてしまった場合には,意外な脆さを見せてしまうのではないかという危うさも感じました。とくにタッグマッチの場合,ややタイプの異なった選手が組む方が,チームとしては成功するというケースも往々にしてあります。
 ふたりは身軽な動きもでき,この日は秋山選手を本部席の机の上にダウンさせ,ブラウン選手がトップロープからボディープレスをやりましたが,これは圧巻でした。この攻撃で秋山選手は左胸(肋骨?)を痛めたようで,苦戦を強いられたものの,最後は力皇選手がブキャナン選手に無双を決め,防衛を果たしています。ただ,そういう試合だったこともあり,秋山選手はあまり納得がいかなかったようです。

 明日は富山記念の2日目優秀の峻峰剱賞です。並びは予想で,新田-加藤ー松坂の南関東,小嶋ー浜口ー古田ー島野の中部,石丸ー米沢の瀬戸内。当然ながら小嶋選手◎と浜口選手○で,新田選手▲か石丸選手△の絡み。

 現実的に考えた場合には,人間の精神mens humanaを構成する観念ideaの多くは混乱した観念idea inadaequataであると考えられるということはこれで明らかになったといえます。そこで次に,人間の精神のうちに混乱した観念があるといわれる場合に,そうした個々の混乱した観念は,どのような性質をもちながら人間の精神のうちにあるのか,また,人間の精神のうちにそうした混乱した観念があるということが,当の人間にとってどのような意味をもつのか,そして,混乱した観念をその精神のうちに有するような人間が,いかなる意味で誤っている,誤謬errorを犯しているといい得るのかということを考えていくことにします。まずその契機としては,第四部定理一から入っていきます。
 「誤った観念が有するいかなる積極的なものも,真なるものが真であるということだけでは,真なるものの現在によって除去されはしない」。
 このテーマの最初にいったように,十全な観念idea adaequataと混乱した観念の関係は,有と無の関係に相当します。にも関わらずこの一文を読む限り,スピノザは混乱した観念にもある積極的なものが属すると考えているとしか理解できませんが,これについては後に明らかにすることにします。今はこの定理Propositioに含まれる意味として,たとえばある物体Aが真verumである,すなわちある人間の精神のうちにAの真の観念idea veraがあるというだけでは,その同じ人間の精神のうちにあるAの混乱した観念が除去されるというわけではないという点に注目していくことにします。
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棋聖戦&人間の精神

2007-06-09 22:17:09 | 将棋
 棋聖戦五番勝負第一局は期待通りの大熱戦になりました。
 振駒で先手を得たのは佐藤康光棋聖。挑戦者の渡辺明竜王との対戦では,昨年の竜王戦第一局第五局と同様の,角換り相腰掛銀先後同型になりました。
 僕が観戦を始めたのが2時前で,64手目の△3七歩成の局面。この後,68手目の△3五角は▲2三飛成を許すだけに驚きました(このあたり,渡辺竜王はやってみたかった手順とのこと)。
 ここで佐藤棋聖が1時間を超える長考の末,▲2三飛成を決断。70手目の△3三同銀に▲同歩成からの二枚換えは△2九飛からと金を抜かれますので73手目の▲3三歩成までは必然の手順でしょう。
 78手目の△8八歩は詰めろ。▲7九歩の受けに△3二歩と後手が2枚の飛車で受けに回ったところ,▲8三銀。この手は思いつきませんでしたが,取れば▲4二金以下,後手玉が1一に逃げたところで▲2三歩で先手が勝つのでしょう。
 86手目の△3二玉にまた手が止まりました。ここで指された▲1五香は,香を逃げたのか,歩を取ったのか,香の利きを通したのか,僕には真意が分かりません。これに対する△9五歩(渡辺竜王は△8八歩も考えたとのこと)も,いい手なのかどうか,僕の能力では判断できないです(この2手について,Logical Spaceさんが解説してくれました)。
 89手目の▲6二飛(この王手はあまりよい手ではなく,▲5一飛ならもっと楽に先手が勝てたようです)に逃げると,玉が3四にいったときに△5二角から7四の金を抜く筋があるので,△4二桂は仕方がないのだと思います。
 96手目,△2一玉と逃げた局面は後手玉が詰めろでもない上に先手玉が詰めろなので,後手が勝つのではないかと思いました。詰めろを防いで▲9一銀不成。実はこれに対しても△8八桂成~△7七金で後手の勝ちと思い込んでいたのですが,▲同銀△同桂成▲9八玉で先手が勝つようです。
 よって100手目は△7七金ではなく△7六歩。これは△7七歩成▲同銀△同桂成▲同玉△7九龍以下の詰めろ。▲2三香△同龍▲同角成で龍を抜いても,今度は香車を渡しているので△7七金で詰み(この手順中▲2三同角成ではなく▲7八歩なら先手が勝つそうです)。今度こそ後手が勝ちかと思いきや,▲8九桂。どうもこれで先手玉は逃れていたようです。
 この後,104手目の△9六歩に▲2四香(遠山四段はこの手が妙手といっています)が最終的な決め手。△同角では詰んでしまうので仕方のない△同飛成ですが,▲7七桂が詰めろになって万事休す。佐藤棋聖の先勝となりました。
 僕の能力の問題もあるかと思いますが,最後までどちらが勝つのか分からない大熱戦で,やはりこのシリーズは大いに期待できそうです。楽しみな第二局は23日に指されます。

 明日から富山記念です。間隔が詰まっているのが気にはなりますが,やはりここは小嶋選手が中心でしょう。

 人間の身体が外部の物体に刺激されると,第二部定理一七によりその外部の物体を,また第二部定理一九により自分自身の身体を,その人間の精神は表象します。そして前者は第二部定理二五,後者は第二部定理二七により,どちらも混乱した観念であるということが理解できます。
 一方,『エチカ』上巻の117ページの第二部自然学②要請六から分かるように,人間の身体というのは,外部の物体を刺激し,また外部の物体から刺激されるのにきわめて適したある物体なのです。したがってこれらのことから,人間の精神のうちには実に多くの混乱した観念が現実的に生じるということが分かるのではないかと思います。
 さらにこれだけではありません。こうして人間の精神のうちに生じた混乱した観念を原因として,さらに別の観念が生じるということが考えられます。こうした場合,そうして新たに生じる観念については,とくにその内容を吟味するまでもなく,その原因が混乱した観念である以上はやはり混乱した観念であると断定してよいということもすでに明らかになっています。
 人間の精神というのは,第一には観念によって構成されます。これは思惟の様態の第一のものが観念であるという第二部公理三から明白だと思います。そこで,人間の精神を現実的に構成している観念の多くは,実は混乱した観念であるということになると思います。
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バレークイーン&第二部定理二七証明

2007-06-08 20:51:37 | 血統
 皐月賞を勝ったヴィクトリーの母系を紹介します。
               
 日本では新しい牝系で,祖となっているのは1988年にアイルランドで産まれたバレークイーン(1-l)という馬。繁殖牝馬としては日本だけで活動している馬ですが,輸入されたときには現地で種付けされたCaerleonの仔を受胎していました。このCaerleonは日本では種牡馬活動をしていないのですが,輸入された馬の多くが活躍して,日本の競馬に大きな適性を示した馬。無事に産まれたバレークイーンの初仔もその1頭で,それがフサイチコンコルド。つまり初仔がダービー馬になったわけです。
 ヴィクトリーの母,グレースアドマイヤはその翌年の産駒。この馬も重賞で2着1回,3着1回とそこそこ走りました。
 繁殖に入ったグレースアドマイヤが最初に産んだのがリンカーン。1世代上にシンボリクリスエス,同期にはネオユニヴァースゼンノロブロイ,1世代下にハーツクライ,2世代下にディープインパクトと,いずれも日本競馬史に名を残すような強敵に阻まれ大レース制覇こそならなかったものの,重賞は3勝しました。
 このリンカーンの半弟としてヴィクトリーが誕生したわけです。いかにこの牝系が優秀であるか,また,将来は大きく発展していくであろうということが分かるのではないかと思います。

 明日は棋聖戦五番勝負第一局が指されます。Logical Spaceさんがリアルタイム解説をされると思います。私用がありますが,早く終れば僕も見にいくつもりです。

 ここでは簡潔に,第二部定理二七に関しても第二部定理一六系を援用して証明することにします。すなわち,第二部定理一九により,人間の身体humanum corpusがある外部の物体corpusに刺激されるaffici場合に,その人間の精神mens humanaのうちには自分自身の身体が現実的に存在するという観念ideaが生じるわけですが,この観念をそうした物体との関係を離れて,この自分自身の身体単独でみてみれば,人間の精神のうちに生じるこの観念は,第二部定理一六系二により,単に自分自身の身体の本性naturaを含んでいるだけではなく,その自分の身体を刺激するafficere外部の物体の本性をも含んでいるがゆえに,これはその自分自身の身体についての十全な観念idea adaequataではない,いい換えれば混乱した観念idea inadaequataであるということになります。
 もちろん僕は,これでこの定理Propositioが証明できていると考えていますが,やはり第二部定理一七の場合と同様に,この場合もこれは『エチカ』における本筋の証明Demonstratioとはいえないとは思います。ただ,第二部定理定理一七の本筋の証明神との関係で証明したことのうち,外部の物体について示した事柄を,自分自身の身体に置き換えることによって,そういう証明が可能であるということは間違いないでしょう。これを繰り返すことはさすがに無用なのではないかと感じますので,この定理についてはそれを省略するということにします。
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バイソン・スミス&第二部定理二七

2007-06-07 20:42:02 | NOAH
 鬼門である2度目の防衛戦に成功した三沢光晴選手にバイソン・スミス選手が挑戦するGHCヘビー級選手権のタイトルマッチは,予定通りに3日に札幌で行われました。
 挑戦したバイソン・スミス選手は全日本プロレス時代には来日経験がなく,NOAHの旗上げ後に初来日を果たし,その後NOAHでは常連といっていい外国人レスラーになりました。以前に,絶対王者といわれていた時代の小橋選手に挑戦したこともあり,これが2度目のチャレンジ。基本的には大きな体格を生かしたパワーファイトを得意とする選手です。
 この試合は,前半は三沢選手の方が主導権を握っていたように感じられましたが,中盤戦に入ってスミス選手が本領発揮。しかし,三沢選手を完全に追い詰めるといったところまではいけず,最後は後頭部にエルボーを食らって3カウントを奪われ,タイトル奪取とはなりませんでした。
 三沢選手がこういったタイプの選手をあしらうのが上手ということもありますが,スミス選手自身も,スタン・ハンセンとかテリー・ゴディ,スティーブ・ウイリアムスやベイダーといった,三沢選手がかつて戦ってきた超一流のパワーファイターの域にまでは達していないようです。ただ,年齢的にはまだ33歳ということですので,今後に関してはもう少し期待できるのかもしれません。
 NOAHのホームページはリニューアルされて見やすくなりました。

 それでは最後に,人間の精神による事物の表象のうち,人間の精神による自分自身の身体の知覚について。これもまた混乱した観念であるということを証明することにします。これについては『エチカ』では第二部定理二七になります。
 「人間身体のおのおのの変状[刺激状態]の観念は人間身体そのものの妥当な認識を含んでいない」。
 ここでおのおのの,といわれているのもまた,個々のとか,特定されたすべての,というように解釈していいと思います。
 第二部定理一九により,人間の身体が外部の物体とある種の関係をもつとき,その人間の精神のうちには自分自身の身体が現実的に存在するという観念が生じます。これが人間の精神による自分自身の身体の表象,知覚ですが,これは,この自分自身の身体についての十全な観念ではない,すなわち混乱した観念であるというのがこの定理の意味になると思います。いい換えれば,僕たちはこのような方法でしか自分自身の身体については認識(知覚)できない(これについての証明はここでは省略していますが)ので,一般に,人間の精神のうちにある自分自身の身体の観念は,混乱した観念であるということになるのです。
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東京ダービー&神との関係

2007-06-06 22:24:53 | 地方競馬
 3強による争いが注目の的であった今年の東京ダービーだったのですが,その一角を占めたトップサバトンは発走で大きく遅れてしまい,ただ1周回ってきただけ。とてもレースに参加したとはいえず,馬や関係者,またファンにとっても残念な結果となってしまいました。とはいえ,競馬にはこういったことも避けられないという一面はあります。
 事前に逃げ宣言をしていたマンハッタンバーの先導で前半の1000メートルが61秒0。これ自体はハイペースといえるでしょうが,向正面では後続もやや離れていましたので,まずまずのラップであったといえるでしょう。
 2番手のロイヤルボスが早めに追い上げていって4コーナーでは先頭。その外からアンパサンド。さらに今日は中団からのレースになったフリオーソが馬群を割るように上がってこの外へ。3頭の叩き合いからロイヤルボスが脱落し,外の2頭が抜け出し,先に先頭に立っていたアンパサンドがフリオーソの追撃を凌いで優勝となりました。2着にフリオーソで3着にロイヤルボス。
 北海道からの転入後ずっと善戦を続けてきたアンパサンドはこれが嬉しい南関東重賞初制覇。戸崎圭太騎手は一昨年のトゥインクルレディー賞以来の南関東重賞制覇。距離面にやや不安を感じたので3強の中では最も低く評価したのですが,あまり問題なかったようです。戸崎騎手も2度目の騎乗でこの馬のよさを発揮できました。2分5秒0という時計も,アジュディミツオーのときを上回っていますので,やはり全体的なレベルは高そうです。
 惜しかったのは2着のフリオーソで,4コーナーを回ってきたときの感じではこちらが勝つのではないかと思ったのですが,直線に入っても手前を変えなかったのでいまひとつ伸びを欠いてしまったのではないかと思います。左回りの方が現状では力を発揮できるようですが,右回りでの走り方を覚えてくれば,さらなる上積みがありそうです。

 本筋の証明は,実際にはこれだけでは万全とはいえないかもしれません。なぜなら,第二部定理七系の意味からして,神のうちにある観念はそのすべてが十全な観念ですから,本来はある有限知性のうちにある観念が十全な観念であるかどうかを検証するためには,その観念がどのような仕方で神のうちにあるかをみることが,スピノザの哲学における本来の方法であるといえるからです。
 ここで再び第一部公理四第一部定理二八に注目すれば,ある物体の観念は,その物体の原因となっているほかの物体の観念を有する限りで神のうちにあるということが分かります。一方,第二部定理一七第二部定理一二を援用して証明されるわけですから,ここにも何らかの十全な観念があると考えられなければならないのですが,それは神がこの人間の精神の本性を構成する限りで,いい換えれば,神がこの人間の精神の本性を構成する対象であるこの人間の身体の観念を有する限りで神のうちにある観念なのであって,それとはほかのものの観念を有する限りで神のうちにある観念ではありません。したがって,この場合にこの人間の精神のうちにあるある物体の観念は十全な観念ではなく,混乱した観念であるということになります。
 この人間精神のうちにある観念は,この人間精神の本性を構成するとともに,ほかのもの(つまりこの物体の原因となっているほかの物体)の観念を有する限りで神のうちにあるということになります。よってこれを第二部定理一一系に照らし合わせることによっても,人間の精神のうちにある物体のこの観念が混乱した観念であるということができると思います。
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高松宮記念杯&本筋の証明

2007-06-05 22:21:50 | 競輪
 大津びわこ競輪場恒例のGⅠ,高松宮記念杯の決勝
 Sは岡部選手が取りましたが,小嶋選手の前受けとなり,下がった岡部選手が3番手,4番手に佐藤選手,7番手に北津留選手で周回。残り2周のバック,北津留選手の上昇に合わせて佐藤選手が上昇。小嶋選手を抑えると,斎藤選手の牽制で北津留選手が外に浮いたところ,引いた小嶋選手がここを突いて進出,もつれて北津留選手と山田選手が落車。ホームは北日本3車の後ろに小嶋選手が入って通過。岡部選手が単騎で追い上げるのに合わせて小嶋選手が発進,バックでぐんぐんと迫り,山崎選手も番手から出ようとしますが捲りきった小嶋選手が先頭に。一旦は離された山崎選手が追っていって直線は一騎打ちとなりましたが,振り切って小嶋選手が優勝。山崎選手が2着で,形の上では小嶋選手の後ろに入った岡部選手が3着でした。
 優勝した石川の小嶋敬二選手は2月の西王座戦以来のビッグ優勝(グレードレースもそれ以来)。GⅠは一昨年の寛仁親王牌以来で3勝目。今日は九州も北日本も二段駆け模様でしたが,落車のアクシデントに構わず早めに仕掛けていったのが功を奏したと思います。道中でよほどの失敗がない限りは安定した着順を得ることができ,現在の競輪界では最強といっていいのではないでしょうか。
 2着の山崎選手はおそらく大ギアをかけている分,踏み出しでやや遅れてしまったのではないかと思われます。しかしその分だけ最後は肉薄できたともいえるわけで,今日のところは小嶋選手が強すぎたというところなのかもしれません。

 明日は大井で東京ダービー。まず3強の争いと思われますが,フリオーソ◎の巻き返しに期待。ただ,トップサバトン○とアンパサンド▲も力の差はそうもなさそうです。一角が崩れてもレッドドラゴン△かアートルマン△。

 第二部定理二五は一応はこの仕方で簡潔に証明することができるわけですが,エチカにおける本筋の証明というものがあるなら,それは次のようなものになるのではないかと思われます。
 この場合には,まず第一部公理四に訴えることになります。この公理からして,まず,ある観念が十全な観念であるためには,この観念が,この観念の対象となっているものの観念に依存していなければならないということ,すなわち,この観念を認識する知性が,この観念の対象の原因の観念を十全に認識していなければならないことが分かります。同じことは,第二部定理四〇からも導けると僕は思います。
 次に,ここでは物体の観念が問題となっていますが,物体が延長の個物であることに注意すれば,第一部定理二八により,物体の原因はそれとは別の物体であることも理解できます。すなわち,ある知性のうちにある物体の十全な観念があるためには,その同じ知性のうちに,その物体の原因である別の物体の十全な観念がなければならないのです。
 しかし第二部定理一七のうちには,そうしたものの観念が含まれていないのは明らかです。したがってこの仕方で人間の精神のうちに生じる外部の物体の観念は,その物体の十全な観念ではないということになります。
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フサイチコンコルド&第二部定理二五証明

2007-06-04 21:03:00 | 名馬
 5月のかしわ記念を勝ったブルーコンコルド。何度も紹介しているようにこの馬の母系はアストニシメントの一族なのですが,この馬の名前のもととなった父,フサイチコンコルドもまた活躍馬です。
 体質に弱いところがあり,デビューは遅く3歳の1月。この新馬を勝つとまた2ヶ月の休養を挟んでオープン特別も勝ちました。今度は3ヶ月休んでダービーに出走。これを制しました。以前はともかく,キャリア3戦目でのダービー優勝は驚異的で,今後もこういう記録はそうも出てこないのではないかと思います。
 秋は古馬相手のオープン特別を復帰戦に選びこれを2着。ここをステップに菊花賞に向かいましたがこれは3着に敗れ,その後は走ることなく引退となってしまいました。
 種牡馬としてはこのブルーコンコルドが現在のところは代表産駒。ほかに重賞の勝ち馬が3頭輩出しています。

 明日は高松宮記念杯の決勝。並びは北日本が4人いますが,佐藤ー山崎ー斎藤で,岡部は単騎。小嶋ー山田の中部,北津留ー荒井ー合志の九州。ここは先行争いがあるとみて小嶋選手◎と山田選手○で。もちろん荒井選手▲と山崎選手△にもチャンスがあるでしょう。

 第二部定理二五は,僕の考えでは第二部定理一六系二に訴えることで証明が可能です。しかしこのためには,第二部定理一七の証明の手続きを確認しておかなければなりません。
 第二部定理一七の証明に第二部定理一二を援用する限り,人間の身体が外部の物体とある関係を有するときにその人間の精神のうちに生じる観念は,ある十全な観念であるということになります。第二部定理一二が抱えている問題を避けるために,ここではそれがどのような十全な観念であるのかということについては,はっきりとした結論を出していませんが,仮にここで,この人間の身体を刺激している外部の物体について,何らかの十全な観念があると仮定してみます。
 ここで定理一六系二に訴えれば,この観念が単にその外部の物体の本性だけを含むのではなく,同時にこの人間の身体の本性を含んでいるということについては明らかだといえるでしょう。したがってこの観念がこの外部の物体について何らかの意味で十全であるとすれば,それはこの外部の物体の本性と同時に,自分自身の身体の本性を含む限りで十全である,いい換えれば,この観念はこの物体が人間の身体を刺激する限りでこの人間の精神のうちに生じるのですから,まさにこの物体とこの人間がある関係を有する限りで十全なのであって,もしもこの関係を離れ,単にこの物体をそれ単独でみるならば,十全ではない,すなわち混乱した観念であるということになります。よって,人間身体の刺激状態の観念は,この身体を刺激する外部の物体の十全な観念ではないということになるのです。
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安田記念&第二部定理二五

2007-06-03 22:30:42 | 中央競馬
 春のマイラー№1決定戦の第57回安田記念
 コンゴウリキシオーが先手を奪い,香港のエイブルワンがこれを追って前半の800メートルが45秒9。ミドルペースのレースになりました。
 逃げたコンゴウリキシオーが直線に入ると一旦は後続との差を広げ,このまま逃げ切るのかと思われましたが,インの4・5番手で控え,直線では馬場の中央まで持ち出したダイワメジャーが馬体を合わせるように接近。ゴール間際で計ったようにこれを捕えて優勝。コンゴウリキシオーが2着に逃げ粘り,2馬身半離された3着には好位から外を伸びたジョリーダンスが入っています。
 優勝したダイワメジャーの母系はスカーレットインクの一族。馬と上原博之調教師は昨年のマイルチャンピオンシップ,安藤勝己騎手は桜花賞以来の大レース優勝。この馬は瞬発力の勝負となると弱く,スローペースを苦にする面がありますが,今日はコンゴウリキシオーがある程度のペースで逃げ,そういうレースとならなかったのがおそらく最大の勝因。インに控えて外に出し,後続を確かめてから追い出し,最後は再び左に寄せてコンゴウリキシオーに合わせていった安藤騎手の騎乗も完璧だったと思いますし,ドバイ帰りながらしっかりと仕上げた上原調教師の手腕も称えられるべきでしょう。
 2着のコンゴウリキシオーもダイワメジャーと似たタイプで,今日は目標になってしまった分の負け。ずっと中距離路線で戦ってきた馬ですが,ここ2戦の成績からはマイラーと思われ,この路線では今後も活躍しそうです。勝ち馬程度の器用さが身につけばさらにいいでしょう。あと,余談ですが僕もいささか心を痛めているのであえて書きますが,この馬が勝っていたらレース後のインタビューを巡って一悶着あったかもしれず,ほっとしている人もいるのかもしれません。
 香港勢はいい競馬ができませんでした。この4頭は前走で同じレースに出走していたのですが,これはエイブルワンが極度のスローペースで逃げ切ったレースで,前半から早いラップが連続した今日のレースに対応できなかったものと思われます。

 それでは人間の精神による事物の知覚についても,それが混乱した観念であるということを,今度はしっかりと『エチカ』に訴えて証明していくことにします。知覚には,外部の物体の知覚と,自分自身の身体の知覚の二種類があるわけですが,まず先に,第二部定理一七における,外部の物体についての知覚からいきます。これは第二部定理二五です。
 「人間身体のおのおのの変状[刺激状態]の観念は外部の物体の妥当な認識を含んでいない」。
 おのおののというのは,個々の,あるいは個別のということでしょう。
 第二部定理一七から分かるように,人間の身体がある外部の物体Xから,Xの本性を含むような仕方で刺激される場合,この刺激状態の観念がその人間の精神のうちに生じます。その観念は,この外部の物体Xが現実的に存在している,つまりこの人間にXが現前しているという観念なのですが,この定理でいわれているのは,このとき,このXの観念を,人間の精神は十全に認識していない,すなわち,人間の精神のうちにあるこのXの観念は十全な観念ではないということになります。したがって,この定理が,人間の精神による事物の知覚が十全な観念ではない,よってそれは混乱した観念であるということ意味を表しているということについてはこれで問題がないものと思います。
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名人戦&想起と想像

2007-06-02 21:01:36 | 将棋
 5月30日と31日に指された名人戦七番勝負第五局の回顧です。
 勝った方が名人位に王手を掛けるという大事な一番は挑戦者の郷田真隆九段の先手で初手は第一局と同様に▲2六歩。今度は森内俊之名人も△8四歩と受け,相掛りの▲2八飛と△8四飛の対抗形に。先手が4筋の位を取ったのに対し後手から30手目に△7五歩と仕掛けるという,先手が浮飛車に構えた場合の先手と後手が入れ替わったような,ちょっと珍しいと思える将棋になりました。
 封じ手は35手目の▲4四歩でしたが,このあたりで郷田九段はすでに作戦失敗と感じていたようです。先手が飛車を浮いて4筋に歩を垂らしたのに対し,44手目の△2三歩~△3三金が力強い受け方で,先手は押さえ込まれました。決定的な敗着は55手目の▲6六歩で,ここは再度▲4四歩と垂らす方がまだよかったそうです。森内名人も次の△4六歩で優勢を自覚したとのこと。
 ここで▲4八金はおそらく最も粘れる手。以下,△8八歩から角を打ち込み飛車を切るという猛攻をかけ,先手玉が打歩詰めで不詰みとなった78手目から,△3三角▲4二歩△同角と受けに回ったのは僕には変調というか不思議に感じられたのですが,遠山四段によるとこういうのは「絶対に逆転を許さないという気迫」の現れだそうで,確実を期したということのよう。もちろんそのまま反撃を凌ぎ,後手の勝ちとなっています。
 これで連敗後の3連勝で森内名人が防衛に王手。この流れからしてみても防衛の線が濃くなったように思いますし,大方の見方もそのようですが,郷田九段にはこれを覆してほしいところです。

 明日は安田記念。この路線に強い香港のトップクラスが4頭も出走しているのでどれかが勝つのではないかと思います。順番をつければジョイフルウィナー◎,ザデューク○,グッドババ▲,エイブルワン△。日本馬ではダイワメジャー△とサクラメガワンダー△。

 次に,こうした人間の精神による事物の表象というのが,混乱した観念であるということを証明していくことにします。簡単ですので先に想起と想像から。
 表象は観念ですので,これは十全な観念であるか混乱した観念であるかのどちらかです。そこでもしもこれが十全な観念であるなら,第二部定義四により同時に真の観念であり,第一部公理六により,その観念には実在的な対象が存在するということになります。
 さて,人間の精神がたとえばAを想起する,あるいはAを想像するというとき,これはこの人間の精神のうちに,現実的に存在するAの観念があるということ,すなわち,この人間はAが自分自身の現前に存在しているという観念を有しているということをどちらの場合も意味しているのですが,想起とか想像というのは,それ自体で,実際にはAがこの人間には現前していないという意味を含んでいます。したがって,この観念はその対象が実在的ではない,いい換えればこの観念は実在的な対象を有さないということになります。
 あとは事前の仮定を遡ればいいだけです。つまり,想起と想像は,真の観念ではなく,よって十全な観念でもなく,したがって混乱した観念であるということになります。
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アグネスタキオン&表象の種類

2007-06-01 21:05:37 | 名馬
 今年の桜花賞を勝ったダイワスカーレット。そこで書いたようにこの馬の母系はスカーレットインクの一族になるのですが,父も活躍馬ですのでここで紹介します。
 ダイワスカーレットの半兄であるダイワメジャーの父がサンデーサイレンスであるのに対し,ダイワスカーレットの父はアグネスタキオン。このアグネスタキオンはサンデーサイレンス産駒ですので,ダイワスカーレットとダイワメジャーの血統構成は,アグネスタキオンの母の部分だけが異なるということになります。こういう場合,ダイワスカーレットはダイワメジャーの半妹ではなく,4分の3妹といわれることもあります。
 そのアグネスタキオンのデビューは2歳の12月。新馬戦を勝つと果敢に重賞挑戦。これも見事に勝利しました。前に取りつくときの脚が圧巻で,テレビで見ていて思わず「強い」と呟いてしましました。
 この2戦で一気にスター候補となり3歳初戦は皐月賞の最重要トライアルの弥生賞。ここは極度の道悪になったのですが,それをものともせずに勝つと続く皐月賞も勝って4戦4勝で大レース制覇。三冠馬の誕生かと騒がれましたがこの後,屈腱炎を発症,あっけなく引退となってしまいました。わずか5ヶ月の競走馬生活。距離に限界があるタイプであったようには思っていますが,無事にいっていれば後のディープインパクト級の活躍の可能性すら感じさせた馬でした。
 産駒はダイワスカーレットが2世代目。最初の世代からもNHKマイルカップを勝ったロジックを出していて,種牡馬生活もきわめて順調といえると思います。

 明日から大津びわこ競輪場でGⅠの高松宮記念杯が開催されます。

 僕のいう表象の定義というのはこのようなものですので,それでは僕の考える人間の精神mens humanaによる事物の表象imaginatioには,どんな種類のものがあるのかを示しておくことにします。
 まず一般的に,僕は人間の精神のうちに,自分の身体corpus,または自分の身体以外の外部の物体corpusが現実的に存在するという観念ideaが生じるとき,この観念についてはそれをすべて表象,あるいは人間精神がそうしたものを表象するimaginariといいます。
 したがってまず代表的なものは第二部定理一七第二部定理一九の仕方による表象で,これは僕たちが使い慣れていることばでいえば,知覚ということになります。具体的な意味では僕は視覚による知覚をあげていますが,もちろんそれに限らず,聴覚や触覚等によるものであれ,いわゆる五感を通して形成される事物の現在の観念はすべてこの知覚に含まれます。
 そして第二部定理一七系の想起memoriaもまた表象です。すなわち,実際に事物がその人間に現在しているかしていないかは,それを表象というかどうかということには関係していません。そしてこの想起に関連して,一般に僕たちが想像とか妄想とかいったことをなす場合にも,事物の現在の観念が人間の精神のうちにあるといえます。したがってこれも僕は表象に含めます。
 おもだったものは以上。僕が表象ということばで示そうとしていることは,一般的なことばでいえば,知覚,想起,想像の3種類の認識であるということになります。
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