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下の加江海岸を見て、凡そ5キロ程歩いて大岐海岸に着いた。
目の前に広大な白い砂浜が広がっている。
その長さは凡そ1キロ半ほど。
国道を離れ浜に降り、小さな木橋を渡り砂浜を歩いてみる。
ここが遍路道に成っているのだ。
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途中浜にウミガメがいた。
近づいて見たが、全く動かないし、随分と干からびたように見えたから、てっきり死んでいる
かと思ったが、翌日その場所に姿が無かったので、海に戻ったのかも知れない。
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海岸から宿までは、凡そ4キロ、思ったよりも早く、夕方4時前には入る事が出来た。
以布利の民宿「旅路」は老夫婦が営む小さな宿だ。
到着早々、お接待だからと洗濯をしてくれる。
今晩の泊り客は3人。
夕食のテーブルには、高知のおきゃく(宴会)に付きものの皿鉢料理や刺身皿などが並べられた。
アジの姿鮓、お稲荷、ノリ巻き、たまご巻き、焼き鳥と何とか貝(名前を聞いたが忘れてしまった)
果物等々が大皿に、彩りも鮮やかに豪華に盛り付けられている。
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「何時も作るわけではない、今日は特別だ」
「この貝は、湯がいてから一つ一つ殻を叩き割って取りだした」と女将さん。
そう言えば、入浴時窓の外で、コンコンと何かを叩くような音が聞こえていたが、この貝を割る
音だったのだ。
もう一人の泊客は、「城陽市の自宅から、奈良を経て和歌山まで歩き、フェリーで徳島に渡り、
1番から歩き続けている」と言う「古希を期に、遍路に出た」男性だ。
その遍路とは、不思議な事に前2泊も同じ宿であったと言う。(続)
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