
江戸時代、城南宮門前の茶店に「せき女」と言う娘がいて、編み笠の裏に
餅を並べ、道行く旅人に食べさせていたのが大評判になり、「おせきもち」と
言う名を残したという450年の歴史を誇る街道の名物がある。

鳥羽伏見の戦いではお店が焼けたとか、新選組の近藤勇も来店して食べ
たとか、歴史を感じさせるエピソードが残された老舗がある。

城南宮の前に店を構える「おせき餅」である。
この店の名物「おせきもち」は、一口サイズの腰の強い白餅とよもぎ餅が有
り、それに丹波大納言のあっさりとした甘さの小豆餡をたっぷりと惜しげも無
く絡めた和菓子である。
ここには、ふわっとした漉し餡で包まれたまん丸の「おはぎ」もあり、もう一
つの名物として人気を得ている。

城南宮には立ち寄らず、国道沿いに建つ鳥居からの参拝で先を急ぐ・・・、
つもりであったが、その門前の「おせきもち」と書かれた赤い看板が気になっ
て、休憩がてらその店に立ち寄ってみた。
疲れた身体には熱いお茶の渋さと、程よい甘さの「おせきもち」「おはぎ」
は、元気回復の秘薬のようなものである。

再び旧街道に戻り暫く歩くと、白粉を塗ったようなかわいい女の子風のお
地蔵さんを祀る小さな祠が有った。どんな謂れが有るのかはわからない。
さらに進むと、その先に茅葺の山門がチョコンと建つ小さなお寺が有った。
「恋塚寺」である。
門前に謂れの書かれた看板が建てられていたが、ほとんど文字が消えか
かり、苦労してもなかなか読み取ることが出来ないが、ここもどうやら袈裟
御前所縁のお寺らしい。(続)


