どう言う訳か20代後半頃から、信州の「松本民芸家具」に興味を持つように
なった。とは言え、当時でも結構値が張る家具で、おいそれと手を出せるもの
ではなかったが、独身貴族(?)の気安さか、それでも何とか一つまた一つと、
茶卓(テーブル)やキャプテンチェア、書棚、茶箪笥など比較的手ごろに買え
るものを揃え、将来は家中の家具はこれで賄おう等と高望みを考えていた。
しかしその後結婚する折り、さすがに女房の両親に「全部松本家具にして下
さい」とも言えず、この時点で夢は見事に潰えてしまった。
以後経済的な事もあり買い増しも儘ならず、それだけに憧憬だけが募っていた。
だから定期的に地元の百貨店で催される展示即売会などには足繁く通い、良い
ものを見てため息をつく事だけは忘れずに続けてきた。
そんな中長年陽の当たる縁側に置いていたせいか、40年ほど使い続けた茶卓の
二枚合わせの天板に1ミリほどの隙間が生じていたので、即売会の会場で相談する
と「直せますよ」とのこと。
多くの物が安価に量産され使い捨てにされる中、生涯の伴侶となるべき家具
を目指し、無垢の木材を使用し(主に樺桜や水目桜)一つ一つ丹念に機械力も
借りながら手作りにこだわる製品には、その加工の責任を明らかにするため作
った職人の印が入れられている。
そうして造られた家具には木材固有の柔らかさ、温かさがあり、長く使って
も飽きがこない。使い込むほどに色も艶が増し味も出て、痛んでも元通りに修
理が出来、半永久的な家財となる。
そんなわけでこの家具がたいそう好きになった。(続)
「片上ひなめぐり」「井原鉄道井原線」
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