
日本三名園の一つ「岡山後楽園」の北側、旭川の支流・東派川に架か
る蓬莱橋を渡ると正面に、玄関前に柳の木が植えられた、何やらメルヘ
ンチックな建物が見えてくる。
三角屋根の上には風見鶏が立ち、赤い煉瓦造りと白のなまこ壁で装わ
れた和洋折衷の建物で、入り口には蒲鉾型のドームが被せられ、なんと
も言えない魅力的な風情を醸し出している。

ここは岡山県出身の画家・竹久夢二の生誕百年を記念して開館した、
「夢二郷土美術館本館」である。
館内には、夢二の描いた絵や版画、スケッチ、掛け軸や屏風などを始め
デザインした本の表紙などが展示されている。
すぐ隣には、展示室やカフェ、ミュージアムショップを併設したおしゃ
れな外観の「art cafe夢二」も建っている。



夢二は明治17(1884)年に、邑久郡本荘村(現瀬戸内市)で生まれ、
本名を茂次郎と言い当地では16歳までを過ごしている。
そこには約250年前に建てられたと言う茅葺屋根の生家も残されていて、
夢二の子供部屋などが当時のままに保存公開されている。
近くには夢二が自らデザインを手がけた洋風建築、少年山荘も復元さ
れていて、一帯は公園となり歌碑なども建ち、これらの建物は「夢二郷
土美術館分館」となっている。

「夢二郷土美術館本館」と「カフェ」が建ち並ぶ前の道は、奥に向か
うと来客者の駐車場がある。
その道をよくよく見ると、何か曰くが有りそうに、僅かに緩い曲線を描
いているのが解る。
これが昭和37(1962)年に廃止となった、西大寺鉄道「後楽園駅」の
跡で、それを窺い知る唯一の手掛かりである。(続)



