2007年刊行の東野圭吾の小説・
私の得意ではないジャンルである。
不倫、社内恋愛・・・・。
手近で・・・と言うのがダメである。
手近は仕方ないとしても、浮気、不倫はもってのほかである。
主人公は40歳手前の会社員:渡部。渡部は妻と娘と
マイホームで生活している普通の会社員である。
おおよそ浮気はないといっても過言ではないキャラクター。
その渡部が会社に来た派遣社員と不倫関係に陥る。
ほらね、手近で浮気・・・・。
手近は・・・特に不倫はダメよ。
会社にバレたら人生を棒に振ったも同然である。
自身は出世できないし、相手も会社にいられない。
浮気、不倫は言語道断であるが、悪い事は言わないから、
社内や知り合い関係内では止めた方がいい。
不幸になる人は多く、その上にある幸せは大きいとは思えない。
渡部は不倫を毛嫌いしていた(メリットナシと言う観点)。
しかし(馬鹿であるが)社内にやって来た派遣社員と不倫関係になる。
最初はそんなつもりは毛頭なかった。(だれしもそうか?)
しかし渡部は31歳の仲西秋葉を意識し始めると、
不倫関係になるのは早かった。まぁ秋葉にもその気があったわけだ。
渡部の大学時代の友人の新谷はそんな渡部に忠告する。
その的確な視点と忠告は、経験者ならではであろう。
(最終章に独白がある。)
誰も幸せにならないと忠告する新谷の言葉を自らには置き換えず、
渡部はアリバイ工作を依頼する。クリスマスイブ、バレンタインデー。
不思議なのは渡部の妻である。恐らくかなり勘が鋭く、
結婚後なんの問題もなかった渡部がイベントの時に、
家を空けると言う事に違和感を感じ、おかしいなと思ったのだろう。
渡部は後ろめたい気持ちを持ちながら秋葉との関係を深めていく。
秋葉には人に言えない秘密があった。
15年前・・・秋葉の家で殺人事件があった。
16歳の秋葉は殺人の第一発見者だった。
秋葉の家は資産家で父親の愛人が自宅で殺されたのだった。
状況から通り魔的な事件ではなく、閉鎖的な内部の犯行と、
思われていたが決定的な証拠はなかった。
事件当時、家にいたのは秋葉と叔母(母の妹)だけだ。
外部からの侵入者でなければ犯人は秋葉か叔母。
時間は決定的な証拠がなく時効寸前まで来ていた。
時効まで半年・・・・・。
打ち明けられた渡部は複雑な心境となる。
渡部は秋葉にのめり込んでいくにつれて、
打算的な考えと運命的な考えが絡み合って行く。
社内不倫がバレれば出世に響くし、相手は辞めさせられる。
単なる浮気と思えば問題は小さくすむかもしれないが、
離婚して不倫相手と再婚などと考えたら問題は大きい。
殺人の重要参考人である秋葉を信じながらも、
どこかで疑いを持っている渡部。
不倫は遊びではなくなり、渡部はいつしか本気になってしまい、
妻と離婚して、娘を捨て、マイホームを捨て、
秋葉と再婚したいと思うようになる。
新谷の忠告も聞かず、のめり込んでいく渡部の心理状態、
経験者である新谷の忠告通りに進んで行ってしまう。
最終的には事件は・・・そりゃないわ・・・と言う結末になる。
言わせてもらえば、刃物で心臓を一突きで死んでしまった愛人、
葉物の突き刺さった角度や深さで、どんな状況で刺されたかは、
判別できるであろう。15年もの間、それがわからないと言う
事は考えられないし、警察の捜査を甘く見てはいけないと思う。
なるほどな、とは思ったが、
上記によって、そりゃないな、とも思った。
2011年んみ映画化され、キャスチングは渡部役=岸谷五朗、
秋葉役=深田恭子、渡部の妻役は木村多江。新谷役は石黒賢。