鬼箭木と書いてニシキギと読み、俳句では晩秋の季語ですが、紅葉の美しいことで持て囃されるこの木は、私の感覚では冬の到来を告げる木です。庭の2メートルほどの紅葉は、気温が下がるごとに多様の色彩の変化を見せて散っていきます。一様に紅に染め上がるときよりも少し前の姿が好きですが、すぐに変貌して自ら愉しむかのようです。オレンジ色の弾けた実もたのしく、裸木になって、ごつごつした幹だけの姿は、やはり鬼箭木がふさわしいかもしれません。
雨上がりの今日はもう赤のグラテーションだけになってしまいました。今月の剪定にやってきた庭師の邪魔になりながら、好みの枝を探してのお遊びです。
気取った鬼箭木より、錦木の表記の方がストレートで好みです。それに、謡曲「錦木」や、古歌の「思ひかねけふ 立初る錦木」を連想して、ほのぼのとしたロマンを辿ることができますから。