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大阪万博で儲かるのは結局だれ? 政府が主張する「3兆円近い経済波及効果」を中小企業や地域が取りこぼさないための方策を専門家が指摘
2025/03/04 07:00集英社オンライン
大阪万博で儲かるのは結局だれ? 政府が主張する「3兆円近い経済波及効果」を中小企業や地域が取りこぼさないための方策を専門家が指摘
大阪万博で儲かるのは結局だれ? 政府が主張する「3兆円近い経済波及効果」を中小企業や地域が取りこぼさないための方策を専門家が指摘
(集英社オンライン)
今年4月から開催される大阪万博は3兆円近い経済波及効果があると、日本政府が主張している。実際のところ、その効果が大企業に偏らず、中小企業や地域が潤う方策はあるのだろうか。大阪のシンクタンク「アジア太平洋研究所」で、同じく試算を行った大阪経済大学の下山朗教授に聞いた。
『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』より一部抜粋・再構成してお届けする。
万博で儲かるのはだれか…経済波及効果を取り込む策とは
─経済産業省は2024年3月、万博による国内経済への波及効果が全国で約2・9兆円だと発表しました。下山さんたちの研究でも効果は2・7兆円〜3兆円超ですが、金額が大きすぎないですか。(2024年7月取材)
下山朗(以下、同) 今回の万博では会場の建設や運営、関連のインフラ整備などに計7275億円(うち国は1620億円、大阪府・市は1344億円、万博協会は1160億円)が費やされます。このほか、私たちは国内外の来場者が使う入場料や宿泊代などを計8913億円と想定し、万博に投下されるお金の総額が約1.6兆円になると考えています。
経済波及効果はこうした投下総額をもとに、産業ごとの取引の流れを示す「産業連関表」を使って算出します。私たちは、投下総額の大半を占める来場者の消費予想額をより丁寧に算出しており、現実に近い数値になっていると考えています。
─金額が独り歩きしている印象ですが、どんな業種や会社が利益を得られるのでしょうか。
直接的に潤うのは、建設や観光業です。観光業には、運輸、宿泊、飲食、シーツやタオルを扱うリネン業なども含まれます。こうした業界に商品やサービスを提供する会社は、その規模に関係なく、受注量が増えるでしょう。一方で、みやげ物をのぞけば、町工場などの製造業には、恩恵が及びにくいと思います。
─万博開催の機運が高まっていません。なぜだと思いますか。
産業界が万博をビジネスチャンスにつなげる方法や、市民がそのために果たせる役割について、万博協会や行政機関が十分に説明していないことが一因だと思います。例えば、町工場が集まる大阪府東大阪市や八尾市、堺市などでは、地元業者が万博を見に来る外国人観光客を自社工場に招き、地元産品をアピールしようとしています。
これに対し、万博協会や多くの自治体は、万博に送り込む地元住民の人数を確保することに必死で、こうした外国人の誘客や、地元産業の対外宣伝、工場訪問体験ツアーなどのもうかる仕組みづくりに力を割けていません。
来場者も経済波及効果の主な源泉
─関西経済が、万博がらみの公共投資や来場者の消費を最大限取り込むには何が必要ですか。
来場者数を増やすことや、近隣の地域への延泊を促す仕掛けづくりはもちろん大切ですが、それ以外に、建設や観光客の受け入れに関して必要となる原材料やスタッフを、地元で調達する割合「域内調達率」を高めることも重要です。
─関西の産業界からは、万博にからむ利益の取りこぼしを懸念する声が出ています。
私は今回の万博が、関西の人々にとって、地元の魅力を再評価できる機会になればいいと思っています。それは、特産品や観光地としての地元の魅力を再評価する動きにもつながります。
一方で、関西の各自治体など行政機関は、万博で関西を訪れる観光客が日本ファン、関西ファンになり、将来のリピーターに育つよう力を注ぐ必要があります。現状の取り組みではまだまだ不足です。
経産省がはじく大阪・関西万博の経済波及効果は、万博協会の来場者予想(国内客2470万人と海外のインバウンド客350万人)をよりどころにする。万博協会は、国内客の6割強に当たる1560万人が、関西広域エリアから訪れると見込む。
しかし、近畿の2府4県に鳥取、徳島両県を加えた同エリアの総人口は2160万人で、おおむね4人に3人が訪れないと目標には達しない。協会は、一定数のリピーターに加え、小中高など学校行事で訪れる子どももいるとして、目標の達成は可能だという立場をとる。
ただ、こうした子どもの入場料が公費でまかなわれていることには留意が必要だ。
写真/shutterstock
『ルポ 大阪 関西万博の深層 迷走する維新政治』(朝日新聞出版)
朝日新聞取材班