教育カウンセラーの独り言

今起こっている日本の教育の諸問題と受験競争の低年齢化している実態を見据えます。

【ギネス公認】世界最高齢!92歳”現役”日本人パイロット驚異の仕事術 キャリア ピックアップ

2016年01月08日 20時09分37秒 | 92歳”現役”日本人パイロット

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2015-05-19


 新富士の飛行場に、「飛行機の神様」と呼ばれる“92歳の現役日本人パイロット”がいる。その名も高橋淳氏。パイロット歴はなんと70年、現在までの飛行時間は2万5000時間を超える。世界最高齢パイロットとして、昨年ギネスにも認定された。

 すごいのは年齢だけじゃない。類まれなる飛行技術を持ち、専門の小型機をはじめとして、50種類以上の飛行機を乗りこなす。前方を飛ぶ飛行機の隣にピタリとつけて並走するなど、プロも唸る華麗な操縦テクニックは90歳を超えた今でも健在で、その高い技術にプロ・アマ問わず教えを乞う人が後を絶たない。自衛隊にも何度も呼ばれ、講演をしているそうだ。

 どうしたら90歳を超えてもなお、第一線で活躍し続けることができるのか。「飛行機の神様」高橋氏に話を聞いた。

 

せっかく生まれてきたんだから、僕は死ぬまで進歩したい

 僕はね、鳥みたいに飛べるようになるのが目標なんだよ。若い人からは「飛行機の神様」なんておだてられてるけど、自分では満足したことないねえ。年々、少しはうまくなっていると思うけど、鳥みたいに悠々と飛べるようになるには、まだまだだね。

 僕はね、飛んだ後、毎日反省してるんですよ。速度の落とし方が甘かったなとか、こうすればもっと上手く着陸できたなとか。飛んだときだけじゃない。自衛隊で講演をしても、教官として生徒を教えた時でもね、いつだって仕事が終わった後、反省してる。今日もそうだよ。こうやって取材を受けても、こうやったらもっとうまいこと話せたんじゃないかってね。帰ってから一人で反省会だよ(笑)。

 何でそんなに反省するのかって? そりゃあ、進歩したいからですよ。せっかく生まれてきたんだから、僕は死ぬまで進歩したい。昨日の自分より今日の自分のほうがかっこよくありたい。それが生きるってことだろ? 

 

世の中は何でも平等じゃない。でも、必ず楽しいこともある

 仕事を辞めたいと思ったこと? 一度もないねえ。それどころか、仕事を休みたいと思ったこともないよ。朝起きると仕事したくて、体がうずうずする。もう何十年もそんなだね。どうしてって? そりゃ飛行機に乗るのが好きだからだよ。

 はじめて飛行機に乗ったのは、16歳のとき。小さいころから飛行機の模型を作るのが好きだったこともあって、たまたま見つけた新聞社主催のグライダー講習会に参加したんだよ。飛行時間は30秒くらいだったけど最高だったねえ。それからパイロットになろうと本気で考え出した。だけど、時代は戦争に向かってまっしぐら。20歳になれば軍隊に入らなきゃならないだろ。だったら最初から軍隊でパイロットになってやろうと、予科練(海軍飛行予科練習生)に志願したんだ。

 本当はさ、2、3年で除隊しようと思ってた。飛ぶ技術だけ身に付けて民間のパイロットになればいいやと。だけど、入隊してすぐに太平洋戦争が始まっちまった。こりゃあ、とんでもないことになったと思ったよ。

 僕がいたのは10機飛び立って5機しか戻ってこられない激戦区でね。空がすべて敵機で埋まっているなんて日も多かった。

 敵機で真っ黒になった空を見て、「今日はダメかもな」なんてつぶやくやつはみんなやられてたね。遺書なんて書いたらまず帰れない。要は精神力の問題なんだよ。僕は絶対、弱気にはならなかった。「絶対生きて帰ってやる」といつも思ってた。だって死んだら好きな飛行機に乗れないじゃない。だからどんなに苦しくても危ない状況でも最後まであきらめない。何が何でも生きて帰って、好きなように空を飛んでやるって、いつも思ってたよ。

 結局、基地で残ったパイロットは僕だけだった。そんな体験があるから、その後、どんな苦しいことがあっても幸せだと思えたのかもしれないねえ。

 よく「若いころの苦労は買ってでもしろ」っていうけど、本当にそうだと思うよ。今の若い子は精神面が弱いね。それじゃいい仕事はできないよ。もっと仕事で苦労しなきゃ。それこそ、嫌な上司にどなられたら「ありがとう」だよ。その分、心が鍛えられるんだからお礼を言わなきゃ。僕が海軍にいたときは、上官から毎日こん棒でぶん殴られた。隣がヘマをすりゃ、連帯責任でみんなこん棒でバコーンだ。不条理だって? 世の中ってのはさ、そもそも不条理なんだよ。何でも平等じゃない。だけどどんな状況にいても、楽しいことも必ずある。それを見つけて楽しく過ごすようにすればいいの。

 

大工にそば店…ど素人が作った飛行機に乗って、腕を磨いた

 終戦後は、大手の航空会社から声がかかったけど、断っちまった。パイロットはアメリカ人がやるから、しばらくはパーサーとして働いてくれという話だったから。それからは飛行連盟に入って小型機の教官をしたり、赤十字飛行隊として被災地に物資を運ぶ仕事をしたりね。いろいろだな。

 独立したのは49歳のとき。フリーのパイロットになってさ。そこからは、飛行機で食べていくためには何でもやった。空の便利屋だな。

 映画の撮影や国内地図の写真撮影からはじまって、飛行機で絵文字を書く広告の仕事。変わったところでは、天然記念物のトキを運んだりもした。

 キツかったのは、テストパイロットの仕事だね。大工やそば店の店主が趣味でつくった飛行機に試乗するんだよ。素人が作ったものだから危なくってしょうがない。飛行機に車のエンジンのせてたりするんだからさ(笑)。パイロット仲間からは「淳さん、よくやるねえ。オレは絶対乗らない」ってあきれられてたな。まあ、こっちも命がけだから、隅々まで機体を調べるわけよ。飛行機の設計もイヤというほど勉強してさ。それで設計図を穴のあくほど見るわけよ。この機体は大丈夫かなって。それでいけそうなら乗るんだけど、すぐには飛ばない。離陸する前に少しずつ試しで走らせて、クセを見分けていく。少しずつならしていきゃあ、どんなじゃじゃ馬も乗りこなせるってわけ。でもさ、なかには、「組み立ててから設計図を書いた」なんてのもいたな。さすがに後で聞いて背筋が凍ったよ。


 思えばこのキツい仕事が後々になって役に立ったね。あいつはどんな飛行機でも乗りこなすって噂になってさ、いつの間にか「自分にしかできない仕事」が舞い込むようになった。そうなったら仕事には困らない。ギャラだって高くなる。いいことづくめよ。

 いくら好きな仕事に就いたって、楽しい仕事ばっかりじゃない。生活のために嫌な仕事だってしなきゃならないこともある。家族を抱えてたらなおさらよ。でも、振り返ってみると、その嫌な仕事が後々、自分の力になっているんだな。嫌な仕事だって悪いことばかりじゃない。だからって気負ってやるんじゃないよ。嫌な仕事はささっと片付けて、すぐに忘れちゃえばいいのさ。それで、楽しいことだけを考える。メリハリが大事なんだよ。

 

好きと向いている。両方ないと一流にはなれない

 いい仕事をするコツ? 何でも先を読むことだ。先の先まで読んで手を打っておけば、大事故にはならない。どんなに優秀な人間だってミスはある。だけど、早めに見つければいくらでも修正できる。そのためには余裕を持っておくこと。どんなときにも80%の力で取り掛かることが大事なんだよ。残りの20%はいざというときのために取っておく。いつも100%でやろうなんて甘いね。100%なんてそうそう続かない。すぐに息切れしちまうだろ。常に80%で余裕を持っておくことが大事なんだよ。 

 あと大切なのは、自分の資質が生きる仕事に就くことだ。好きなだけじゃダメ。資質がないと一流にはなれないよ。仕事のできない奴は、好きだという気持ちと資質、どちらかが欠けていることが多いんだ。

 パイロットの資質? パイロットは気が利く人じゃないとダメだな。「たばこ、持ってきてくれ」って言われたら、ついでに灰皿も持ってくるようなヤツ。それくらいの気が回らないとろくなパイロットにはならないから、別の仕事に就いた方がいい。オレは初対面でも「向かないから辞めた方がいい」ってはっきり言うよ。あきらめるのは早い方がいいからね。

 もし、向いている仕事がわからないんだったら、試しに飛び込んでみたらいい。いろいろやってみたらいつかは見つかるよ。ただやるだけじゃダメだ。一生懸命やらなきゃ、向いてるかどうかなんてわかんないだろ。そうやっていろいろやってみて、定年までに見つけりゃいいんだよ。60歳から仕事を替えたって、90歳までに30年ある。それだけありゃ、死ぬまでにはいい仕事ができるだろうよ。

 



プロフィール
1922年生まれ。1941年甲種飛行予科練習生として海軍に入隊。戦後は小型機のパイロットとして航空測量、写真撮影などの仕事に就く。49歳で独立し、フリーのパイロットとして活躍。国際航空連盟の「ポール・ティサンディエ」賞をはじめ、国土交通大臣賞、厚生労働大臣賞など、数々の賞を受賞。社団法人日本飛行連盟名誉会長でもある。著書に「淳さんのおおぞら人生、俺流」(イカロス出版)。
参考:「最高齢プロフェッショナルの教え」(徳間書店刊)

取材・文/高嶋ちほ子 撮影/栗原克己

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