浅野秀弥の未来創案
【市営交通民営化の行方】
維新戦略にまんまと乗る自民
「大阪市営地下鉄民営化へ自民賛成に転じる、基本方針案市議会可決へ」。戦前戦後を通じ、大阪市長が営々と受け継いできた地下鉄だが、なぜ吉村市長は黒字化しているのに民営化という名の下に放り出すつもりなのか?
前任者の橋下氏が強烈な個性を有していただけに、ソフト路線の吉村市長は同じ事を繰り返しても、一見穏やかに見える。それを良いことに、反維新の旗を高く掲げて長年戦ってきた自民党の地方議員が、勝手に物分かりよく協力に転じてどうするつもりなのか?
自民党大阪府連は、安倍政権の意向をひそかに受けたようで、維新と対抗する牙を抜かれ菅官房長官の顔色ばっかりうかがっている。全国屈指の低得票 率に陥る大阪自民は、維新を倒さないと地方議員も国会議員も将来展望が開けない。ところが、官邸にとっては維新と裏でつながっているものだから、「大阪は 自民が勝っても、別動隊の維新が勝っても政権にはプラス」とほくそ笑んでいる。
大阪市議会(定数86)の自民党市議団(20人)は、市営地下鉄を民営化する「基本方針案」を、未着工路線の整備を進めることなどの条件付きで賛 成する方針。市側との協議が進めば、基本方針案は9月議会で、大阪維新の会(37人)と公明党(19人)を合わせ、賛成多数で可決される見通し。
基本方針案は地下鉄事業を市100%出資の新会社に移す内容で、市議会で継続審議となっている。新会社化したら、固定資産税や株式会社としての法 人税を納めることに。収益化に成功した駅構内のコンビニなど物販販売を加えると、年間約400億円の利益を生み出す地下鉄を、市はなぜ民間会社にしてしま うのか? いずれ都構想を再燃させ、今度こそ大阪市を消滅させたい連中には基礎自治体はできるだけ身軽な方がよいからだ。
これまで、大阪市民が当然のように受けていた恩恵が引き剥がされ、維新の息が掛かった新たな利権屋に再配分されるに過ぎない。「長い物には巻かれろ」の負け犬根性が染みついた大阪自民は、そんなことはとっくにご承知だろう。