政府が繰り出すお粗末な対策をあざ笑うかのように、増殖の一途を辿るウイルス。今、コロナ禍はどのような新局面を迎えようとしているのか。専門家ら識者4人が、官邸も政府も与党も口を閉ざしてひた隠す衝撃の闇真実を洗いざらい摘出、暴露する。
日本で最初の感染者が報告されてからおよそ1年9カ月、新型コロナ禍は「過去最大級の感染爆発(オーバーシュート)」とも言われる第5波に突入した。
だが、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言はもはや奏功せず、官邸内や政府内には深刻な手詰まり感、いや、完全なお手上げ感すら漂い始めている。加えて、菅義偉総理(72)が「切り札」と豪語してきたワクチンについても「接種が進んだところで事態は打開できない」との、抜き差しならない指摘が国内外から上がり始めているのだ。
─それにしても、第5波の感染拡大にはすさまじいものがありますね。
B 国(官邸、政府、与党など)は当初、まん延防止等重点措置や緊急事態宣言を適時適切に発令すれば、医療崩壊を来さないラインで感染拡大をコントロールできる、と考えていました。そして、医療崩壊を防ぎながらワクチン接種を推し進めていけば、
集団免疫によって新型コロナ禍を終息させることができる、と踏んでいたのです。
─そのシナリオが今回の第5波で完全に崩れ去った、と。
C その通りです。中でも衝撃的だったのは、つい最近、米CDC(疾病対策センター)が公にした分析結果です。CDCによれば、第5波の主流になりつつあるデルタ株の感染力は水痘と同水準であり、1人の感染者による感染力で見た場合、従来株が2.5人程度だったのに対して、デルタ株は実に平均8~9人に感染させてしまうことが明らかになったのです。
B 従来株の場合、国民の約6割まで2回のワクチン接種が進めば、実効再生産数(1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す指標)が1を下回るため、日本は集団免疫の獲得に至ると考えられていました。一方、デルタ株の場合、流行が進むにつれ、感染力が従来株の1.5〜2倍に達するかもしれないとの予測の下、国民の7~8割までワクチン接種が進めば集団免疫の獲得に至ると軌道修正されていたのです。
─そこにCDCによる今回の衝撃の分析結果が公表されたわけですね。
A CDCの分析が正しいとすれば、国民の7~8割までワクチン接種が進んだとしても、集団免疫は達成できない計算になります。しかも諸外国の接種状況を見ると、ワクチンが十分に供給されたとしても、副反応に対する恐れなどから、接種率は6割付近で急速に鈍化します。つまり、現実的には8割を超えて9~10割の接種率を実現することは不可能であり、事実上、国が描いてきた集団免疫シナリオは脆くも崩れ去ったと言えるでしょう。
「コロナは永久に終息しない」衝撃報告(2)厚労省の口車に乗せられて…
D デルタ株による第5波の感染爆発を目の当たりにして、官邸も政府も与党もパニック状態でうろたえている、というのが偽らざる実情です。加えて政府分科会を含めた官邸内では今、「新型コロナ禍は永久に終息しない」との観測が広がり始めており、菅総理も「もうこれはお手上げだな‥‥」との認識を強めていると聞いています。
─永久に、ですか!?
D はい。ただ、それでも国としては何もしないというわけにはいかない。そこで打ち出されたのが、C先生も指摘されたように、場当たり的としか言いようがない時間稼ぎの弥縫策でした。とりわけ国のうろたえぶりを如実に示していたのが、菅総理が打ち上げた例の「入院制限」です。
A あれはひどかった。人工呼吸器などを必要とする重症者以外の入院を制限すれば、自宅療養中の中等症患者から大量の死者が出ることは確実ですから。頑として撤回を口にしなかった菅総理はその後、一部の中等症患者に対する入院制限を緩和しましたが、軽症患者ですら一気に重症化してしまうケースは数多くあり、入院制限がもたらす危険性はほとんど変わっていません。それでも愚策は強行されるようですから、新型コロナ禍の下で間違いなく自宅大量死の局面を迎えることになるでしょう。
D 実は入院制限策は、病床調整の責を負う厚労省サイドが、入院できない重症患者から死者が続出して世論の批判を浴びることだけはなんとしても避けたいとの一心から、官邸に持ち込んだものでした。その厚労省の口車に乗せられる形で、菅総理はゴーサインを出してしまったのです。
─オソマツな話ですね。
D しかも厚労省は新型コロナ対策分科会を含め、関係先への根回しを全くしていませんでした。それもアダとなって菅総理はマスコミから袋叩きにされたわけですが、総理が入院制限策のデタラメを事前に見抜いてストップをかけるか、せめてキッパリと撤回していれば、こんなことにはなりませんでした。ただ、それ以上に問題なのは、いかに絶望的なパニック状態にあるとはいえ、官邸が「新型コロナ禍は永久に終息しない」との認識を隠して、入院制限に象徴されるエセ集団免疫策をなおも続けようとしている点です。
─そこですよね。実際、みなさんも「永久に終息しない」とお考えですか。
A 「やがて終息する」と言える材料がありません。先ほど指摘したように、デルタ株の場合、ワクチン接種率の問題だけを見ても、すでに集団免疫シナリオは崩れ去っています。それだけではありません。驚くべきことに、たとえワクチン接種をきちんと2回受けたとしても、高確率で再感染してしまうことが明らかになってきているのです。
─いわゆる「ブレイクスルー感染」ですね。
B ワクチンの種類、統計の取り方などによってバラツキはありますが、これまでに公表された国内外のデータを総合すると、ワクチン2回接種後の再感染率は30%から70%に達するとみられているのです。中間値を取っても実に50%。ただし、公衆衛生学を専門とする立場から言わせていただければ、最悪のケースを想定するという危機管理の原則上、「ワクチン接種を2回受けた人の3分の2がブレイクスルー感染する」と警告しておかなければならないと考えています。
C しかも、諸外国の最新データを見ると、デルタ株の場合、ブレイクスルー感染者の体内に存在するウイルス量はワクチン未接種感染者のそれと同じであることも明らかになってきています。加えてデルタ株感染者のウイルス量は、従来株感染者のおよそ1000倍に達することもわかってきているのです。つまりワクチン接種者といえども、再感染してしまえば従来株の1000倍のウイルス量で感染を拡大させてしまうという、想定を超絶した危機が第5波の渦中で浮上してきているのです。
A=感染症専門医/B=公衆衛生学の専門家/C=ウイルス学の研究者/D=政府関係者
「コロナは永久に終息しない」衝撃報告(3)「死者が出続けるのは仕方ない」
─そんな中、国は来年に向け、3回目のワクチン接種を検討し始めています。
B ワクチン接種後、次第に低下していくウイルス抗体価を回復させるブースター接種を行えば、確かに被接種者自身の発症と重症化の予防には一定の効果が見込めますが、ブレイクスルー感染と再感染者による感染拡大を防ぐことができないのは今と同じ。つまり、3回目、4回目、5回目とブースター接種を重ねたとしても、ワクチン接種者の3分の2にあたる再感染者が感染を広げ続けていくことになるのです。
A 多くの国民が誤解していることですが、新型コロナの感染と発症と重症化は別物です。新型コロナワクチンは発症予防と重症化予防には相応の効果がありますが、B先生が指摘されたように、再感染も含めた感染予防効果は限定的です。テレビなどでは「ワクチンの有効性」という言葉がよく使われていますが、この場合の有効性は主に発症予防や重症化予防に対するものであって、感染予防に対する有効性を意味しているわけではありません。
─やはりデルタ株による第5波を終息させる手はないということですか。
D 国が想定していた集団免疫シナリオは「ワクチンを接種した人は再感染しないこと」と「ワクチンを接種した人は他人にうつさないこと」が前提でした。その2つが消滅してしまったわけですから、危機的かつ絶望的です。菅総理は今、「この際、死者が出続けるのは仕方がない。とにかくその場しぎの策で時間稼ぎをしながら、国民全員のワクチン接種が完了するのを待つしかない」という心境ではないでしょうか。
C 確かにワクチンには相応の発症予防効果と重症化予防効果がありますから、国民全員のワクチン接種が完了すれば、あるいは国民全員が感染してしまえば、その間に大量の死者は出るものの、集団免疫効果で終息に向かう可能性はあります。ただしこのシナリオにもまた、ウイルス学の常識から見て、決定的な見落としが潜んでいます。
─見落としとは?
C 感染予防、発症予防、重症化予防など、あらゆる点で既存ワクチンの防御機能をすり抜けてしまう新たな変異株、いわゆる「エスケープ株」の存在が見落とされているのです。エスケープ株はワクチンの防御機能だけでなく、感染で得た免疫防御機能もすり抜けてしまいますから、現在のデルタ株がエスケープ株に置き換われば「全てはご破算」「イチからやり直し」ということになります。
A 実はつい最近、米CDCも「あとほんの数回の突然変異によって、今あるワクチンから逃れる危険なエスケープ株が出現する」旨の警告を発しました。ウイルス学をはじめとして、感染症学や公衆衛生学などに携わる国内外の識者も口を揃えて「近い将来、ワクチン接種や感染によって獲得された免疫防御をすり抜けるエスケープ株が出現することは100%確実」と断言しています。
─確実なのですか。
C 不可避です。新型コロナウイルスは猛烈な勢いで変異を繰り返しています。大半はさして問題のない変異株ですが、その中から偶然的にひとつ、その他の変異株を圧倒する力を持った変異株、すなわちエスケープ株が出現します。感染力も強いエスケープ株は、あっという間に従来株を駆逐していきますが、こうした危険な変異は感染が拡大すればするほど起きやすくなるという傾向もあります。
A=感染症専門医/B=公衆衛生学の専門家/C=ウイルス学の研究者/D=政府関係者
「コロナは永久に終息しない」衝撃報告(4)「全てはご破算」を繰り返す
B 事実、日本でも中国由来の武漢株から英国由来のアルファ株、そしてインド由来のデルタ株へと、変異株への置き換わりが起こりました。そして置き換わりのたびに、変異ウイルスの感染力、発症力、重症化力は増しています。したがって近い将来、出現が確実視されているエスケープ株の脅威は、間違いなく現在のデルタ株を上回るものになります。というか、エスケープ株は従来株を圧倒する力を持っているから、置き換わりが起こるわけです。
─南米諸国でまん延し始めているペルー由来のラムダ株がエスケープ株である可能性については?
C ブラジル由来のガンマ株や南アフリカ由来のベータ株なども含めて、現時点では各種の変異株が拮抗状態にあると考えられます。今後、ラムダ株がデルタ株をも押しのけて世界を席捲するような事態になれば、ラムダ株はエスケープ株だったということになりますが、現時点ではなんとも言えません。ただ、個人的には「近い将来、これまでにない全く新しい変異株が突如出現して、それが恐怖のエスケープ株として地球上を席捲していく」という危機感を持っています。
A いずれにせよ、そのようなエスケープ株が出現すれば、C先生が先におっしゃった「全てはご破算」「イチからやり直し」ということになります。新たなワクチンの完成を待つ間、爆発的な感染拡大が起こり、医療崩壊を招いて多数の死者が出る。国の対策は後手に回り、ワクチンの供給も遅れて‥‥という、どこかで見た光景が再び繰り返されるのではないでしょうか。医療現場を預かる身としては、二度と目にしたくない光景ですが。
B しかも問題となるのは「次のエスケープ株」だけではありません。次のエスケープ株の後には「次の次のエスケープ株」、さらには「次の次の次のエスケープ株」が待ち構えています。そして、このようなエスケープ株の連鎖、変異株のジャンプアップが起こるたびに「全てはご破算」「イチからやり直し」ということになるのです。
─出口なし、ですね。
A ただ、明るい見通しが全くないというわけではありません。私の臨床経験で言えば、例えば新たに承認された抗体カクテル療法は、デルタ株の重症化予防にはよく効きます。また、デルタ株については、抗ウイルス薬や抗炎症薬などを駆使した「重症化させないための治療法」「死亡させないための治療法」も確立されつつあります。今後、新たな治療薬が開発され、新たな治療法が確立されれば、エスケープ株の脅威を対症療法的に乗り越えることは不可能ではありません。
B 公衆衛生学の立場から言えば、個人でできることもたくさんあります。基本は「感染しない」「感染させない」ための行動を徹底することです。さらに「感染しても重症化させない」ための努力も大切です。その場合、健康や体調の維持に努める、基礎疾患があれば改善に努める、免疫力を低下させない、といったあたりがキモになるでしょう。
A=感染症専門医/B=公衆衛生学の専門家/C=ウイルス学の研究者/D=政府関係者
*「週刊アサヒ芸能」8月26日号より