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万博では飛ばない…!大阪万博の目玉「空飛ぶクルマ事業」に参画する老舗タクシー会社が明かした「現状と未来」https://news.livedoor.com › detail
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2024年4月26日 7時0分 現代ビジネス
万博では飛ばない…!大阪万博の目玉「空飛ぶクルマ事業」に参画する老舗タクシー会社が明かした「現状と未来」
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技術的には実現可能なところまできている
開幕まで1年を切った大阪・関西万博において、目玉の一つとされているのが「空飛ぶクルマ」だ。高度な技術力の結晶であり、一般客にサービスとして提供できるようになれば100年に一度の交通改革となる、とさえ言われている。万博でお披露目となればそのインパクトは強烈なものになるだろう。しかし一方で、実現に向けては厳しい声が飛び交っている現実もある。
大阪の老舗タクシー会社である「大宝タクシー」は、タクシー会社として「空飛ぶクルマ」事業に唯一参画している企業だ。'22年に「そらとぶタクシー株式会社」を設立し、1台約7億円の機体を50台分購入する契約を結ぶなど、準備を進めてきた。
同社の舵取りを行うのは、双子の寳上(ほうじょう)卓音さんと寳上和音さん。現在30歳の若手経営者である二人は、万博での実現を目指す「空飛ぶクルマ」の現状についてこう明かす。
「すでに国内で高度50m以上の有人飛行にも成功しており、技術的にはサービスが提供可能なところまできています。しかし、どの事業者さんと話しても、『万博では飛べない』というのが共通認識です。
許認可の問題が重くのしかかっているうえ、運営側は何もかも対応が遅すぎる。事業者側は準備を進めていますが、正直現状では何もできない。万博までにはとても無理で、早くて'25年後半、'26年中には『空飛ぶクルマ』がサービスとして提供されることを想定しています」(卓音さん)
大手企業も次々と参入
万博の来場者数は約2820万人にのぼると想定されている。そこでサービスが提供できないとなると、同社としての損害は大きくなるはずだ。しかし、卓音さんは「万博で実現しなくても、eVTOL(空飛ぶクルマ)事業が日本のプライベートジェット市場を活性化させることは間違いない」と力を込める。
将来的に「空飛ぶクルマ」はどのようなサービスになるのか。和音さんが続ける。
「空飛ぶクルマとはつまり、AIで操縦が可能な乗客を乗せて移動する小さな飛行機です。垂直に飛べる飛行機、という表現が一番しっくりきますね。すでに有人飛行にも成功しており、丸紅さんやJALさんなど大手企業も参入していますが、飛行場を作ったりという動きはまだない。我々はすでに土地取得や飛行所の手配にも動いており、先進的に動いている1社だという自負があります」
価格はメーカーによりバラつきがあるが、1台5億~11億円ほど。保険料だけでも年間で1300万円程度するという。しかし寳上兄弟は、それに見合うリターンもあると力説する。同社の換算では年間でフル稼働させた場合、1台あたり4.4億円の売上げを見込んでいる。
「粗利としては決して悪くない。5年くらいで減価償却ができる計算ですね」(和音さん)
外国人富裕層がターゲット
アメリカでは1万機、イギリスでも400機以上が存在するとされるプライベートジェットだが、日本ではわずか80台ほど。それも大半は稼働していないという。そのため、まずは海外からの観光客が主なターゲットになる、と卓音さんは言う。
「たとえば新大阪から万博会場の夢洲まで行くとしましょう。どこまでの速度にできるかまだ決まっていませんが、時速300キロ程度だと仮定すると5~10分程度で到着します。金額はおよそ、1分9000円程度。
従来の交通インフラではアクセスがしにくかった熊野古道や高野山、琵琶湖といった自然豊かな観光地に富裕層のインバウンド客を運ぶことを想定しています。6~7人で相乗りしてもらい、40万円ほどのプランを打ち出していく予定です」
離陸場所であるポートの確保、着陸先の土地取得に機体代の先払い料金など、初期費用だけでも70億円にのぼる。それでも、すでに外資系コンサル会社や航空局OB、大手保険会社や証券会社、大手旅行会社などを巻き込み共同で事業に参画しているという。中堅のタクシー会社である「大宝タクシー」では、どのように資金繰りをしているのか。
「現状はファンドからの投資が中心で、特に外資系が占める割合が多くなります。もともと海外で市場があることと、今後日本市場への期待があることが大きい。
あとはCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)事業者やリース会社との提携を強めて、離陸場所なども他社が持っているものを使用させてもらい、いかにコストをかけずにやるかという方向で動いています。
タクシー会社がやるメリットは、着陸先などからの移動の足も必要であり、地域と提携して総合的な移動サービスを提供出来る点にある。資金力で劣っても、工夫次第でタクシー会社が母体でも充分に実現できます」(和音さん)
元自衛官が応募してきた
和音さんは「ゆくゆくは初乗り680円という利用しやすい金額で、事業を拡大させていきたい」と意気込む。そうなると気になるのは、いかにパイロットを確保するかということだ。
大宝タクシーでは年収約600万円で募集をしたが、年収1000万円超えも珍しくない職種だけに、簡単に人材が集まるとは思えない。しかし、卓音さんは「実は就職活動をしているパイロットは少なくない」と明かす。
「タクシードライバーも人材を確保するのは難しい業種です。当然、パイロットも同様の懸念をしていたのですが、実験的に1週間求人をかけただけで、資格保有者30人から募集がありました。
なかでも多いのは、元自衛官です。応募者に話を聞いていると、町工場のライン作業や、チェーンの飲食店で働いているケースが多かった。そういう方々にとって、民間のヘリ会社と近い年収約600万円という条件は魅力的だったそうです。
エアラインのパイロットは確かに年収1000万円超えもザラですが、採用人数はごくわずか。そんな背景からも人材確保にも不安はなく、むしろタクシーよりも事業拡大はしやすいと考えています」
なぜタクシー会社が挑戦するのか
空飛ぶクルマの実現において事業者目線で今後障壁となるのは、いかに法整備や許認可がスピード感を持って行われいくかだ、と二人は口をそろえる。
日々タクシー会社の運営を行いながらその1つ1つと折衝を重ねることは、骨が折れるし、リスクも伴う。同業のタクシー会社からは、「地に足をつけてビジネスをしろ」とも皮肉めいた批判を浴びることもある。
それでも、夢の事業へ注力するのはこんな理由がある、と和音さんは言う。
「結局、ワクワクするような面白いことをやりたいというのが根幹にあるんですよ。もともと水陸の交通インフラを担ってきて、最初は『じゃあ次は空だろう! まだやってない未来産業で面白いよね』くらいの軽いノリだった部分もあります(笑)。
でも、そんな事業を小さな大阪のタクシー会社が中心になり動く、というストーリーゆえに応援してくれている人もいるとも感じる。若い世代から大阪を変えていきたいですね」
空飛ぶクルマ事業には、国内外ですでに多くの企業が参入の意思を示している。老舗タクシー会社の若手経営者の話を聞くと、我々の生活にその価値が付与されるのは、そう遠くない未来ではないかとも感じさせられた。
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