ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

モーツァルト/戴冠式ミサ

2015-04-08 13:01:32 | クラシック(声楽)
モーツァルトの宗教音楽と言えば先日ご紹介した「レクイエム」が最も有名ですが、死者のための鎮魂曲と言うこともあって全体的に暗く、日常的に聴くにはあまり適しているとは言えません。その点、今日取り上げるミサ曲第14番、またの名は「戴冠式ミサ」はモーツァルトが20代前半の頃に書いたミサ曲で、いかにも青年期らしい明るく輝かしい旋律に全編彩られており、肩肘張らずに楽しめる内容です。1曲目「キリエ」こそミサ曲らしい荘厳な雰囲気ですが、2曲目「グロリア」からこれぞモーツァルトといった感じの生命力にあふれた活き活きとした旋律が次々と現れ、聴いていてワクワクしてきます。3曲目「クレド」、4曲目「サンクトゥス」もこの盛り上がりが続き、落ち着いた四重唱の5曲目「ベネディクトゥス」を挟んで終曲の「アニュス・デイ」へ。この曲の前半はアルト独唱で、まるでオペラのアリアのような美しさです。最後は壮麗な合唱でフィナーレとなります。



CDはヘルベルト・フォン・カラヤンがベルリン・フィルとウィーン学友協会合唱団を指揮したものです。「戴冠式ミサ」は25分ほどの短い曲なので、カップリングでブルックナーの「テ・デウム」が収録されています。モーツァルトと同じオーストリア人ですが、時代も作風も全然違うので正直あまり良い組み合わせとは言えません。この「テ・デウム」も一連の交響曲と並んでブルックナーの代表作に伍されることも多い曲ですが、個人的にはあまり良さがよくわからない。フィナーレの盛り上がりはなかなかのものですが、逆に言うとそれまでが地味です。まあ私はブルックナーの数ある交響曲も7番&8番以外はほぼ聴かないタチなので単に趣味が合わないだけと言えばそれまでですが・・・モーツァルトの宗教曲は他にも「大ミサ曲」「雀のミサ」などがありますが、個人的にはこの「戴冠式ミサ」が一番のお薦めです。
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モーツァルト/レクイエム

2015-03-01 13:47:04 | クラシック(声楽)
本日はモーツァルトの「レクイエム」です。何を今さらと言うほどの有名曲ですが、レクイエム=鎮魂歌=暗い、という図式がどうも私の中のモーツァルト像と結びつかず何となく敬遠していた次第です。この曲はいろいろいわくが付いています。まず、この曲がモーツァルトの“絶筆”であるということ。モーツァルト自身は14曲中8曲目の「ラクリモーサ(涙の日)」を書き終えた時点で病に倒れたため、後半部分は弟子のジュースマイヤーという人物が書いたとか。またこの曲はある匿名の人物からの依頼で書かれ、モーツァルト自身はその使者を死神の使いと恐れていたとかいう説もまことしやかに伝わっています。(映画「アマデウス」ではさらに飛躍してライバル作曲家のサリエリが死神の使いに扮してモーツァルトを追い詰めたという設定にしています)



そんな伝説に色付けされた曲ですが、やはり死者のためのミサ曲だけあって重々しい雰囲気です。明るく天国的な旋律が持ち味のモーツァルトにとっては異色の作品と言えるでしょう。モーツァルトは他にも交響曲第40番など短調の曲はありますが、それらはあくまでメランコリックなだけであって、ここまで重苦しさを感じさせるものはありません。死神の恐怖に怯えていたなんてのは言い伝えだとしても、どことなく自身の体調から死期を予兆していたのかもしれません。もちろんかのモーツァルトですからただ単に重苦しいだけでなく、オーケストラと合唱を巧みに融合させ、随所に盛り上がる曲に仕上がっています。特に荘厳な第2曲「キリエ」、荒々しい第3曲「ディエス・イレー(怒りの日)」、映画「アマデウス」でも使われた第7曲「コンフタティス(呪われた者)」、そして遺作となった「ラクリモーサ」など聴き所は多いです。9曲目以降はジュースマイヤーの補筆ですが、師匠の意を十分に汲み取っていたのか、完成度はそれなりに高く、特に前半と後半で違和感はありません。CDはベーム、カラヤン、アーノンクール、ショルティら巨匠達の演奏が出回っていますが、私が購入したのは近年(2006年)の録音でドイツの中堅指揮者クリスティアン・ティーレマンがミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団を振ったものです。
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ベートーヴェン/ミサ・ソレムニス

2014-12-30 15:01:35 | クラシック(声楽)
年末のこの時期になると巷ではベートーヴェンの「第九」を合唱するのが恒例行事になっていますが、同じベートーヴェンの合唱曲でも「ミサ・ソレムニス」を耳にする機会は多くありません。「第九」と違って全編が合唱ということ、そして80分に及ぼうかという長大なボリュームが演奏機会を制限しているのかもしれませんが、内容的には「第九」に引けを取らない大傑作と言えます。「ミサ・ソレムニス」とは元来カトリック教会のミサの一種で、ベートーヴェンのこの曲も歌詞をはじめ形式的には教会の典礼に則っていますが、そこで繰り広げられる荘厳な音世界はベートーヴェンならではです。



曲はまずゆったりしたテンポの「キリエ」で始まります。続く2曲目「グロリア」は18分を超す大曲で、序盤に爆発的なコーラスで始まった後、中間部を経て終盤に空前の盛り上がりを見せます。3曲目「クレド」も20分超のボリュームで同じく終盤のコーラスが圧巻です。4曲目「サンクトゥス」はいわゆる緩徐楽章で地味ながらも美しい曲。途中で挟まれる独奏バイオリンの哀愁に満ちた旋律が胸にしみます。5曲目「アニュス・デイ」はこの大曲のフィナーレを飾る曲ですが、意外に静かで厳かに幕を閉じます。もともと教会音楽なのでコンサートのように拍手万雷なんてことは想定していないのでしょう。CDはカラヤン、ベーム、ショルティなども出回っていますが、私が買ったのはオットー・クレンペラー指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団のものです。1965年の録音ですが、未だにこの曲のスタンダードとされている名盤です。
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マーラー/亡き子をしのぶ歌、さすらう若人の歌 他

2014-12-13 12:23:12 | クラシック(声楽)
今日も声楽曲を取り上げますが、宗教音楽ではなく世俗の歌、いわゆる“歌曲”というものを取り上げます。この分野ではシューベルトやシューマンがつとに有名ですが、正直私にとっては未開拓の分野で敷居が高く感じます。その点、同じ歌曲でもリヒャルト・シュトラウスの「4つの最後の歌」や今日取り上げるマーラーの歌曲集なんかはオーケストラの伴奏付きなのでまだ取っつきやすいですね。特にマーラーは自作の交響曲にも一部を引用したりしていますので、聴いたことのある旋律もちらほらあります。



今日ご紹介するのはマーラー演奏の大家として知られるエリアフ・インバルがメゾ・ソプラノのドリス・ゾッフェルを歌手に迎え、ウィーン交響楽団を指揮して録音したものです。マーラーの歌曲の中でも代表的な「亡き子をしのぶ歌」「リュッケルトの詩による5つの歌曲」「さすらう若人の歌」が収録されています。前半の2つはドイツの高名な詩人であるフリードリヒ・リュッケルトの詩に曲をつけたもので、特に詩人が我が子の死を悲しんで作られた「亡き子をしのぶ歌」が有名です。歌詞はもちろん悲痛な内容ですし、曲調もそれにあわせて全体的に暗めですが、その中にハッとした美しさを感じさせるあたりがさすがマーラーといったところでしょうか。一方、「さすらう若人の歌」はもっと明るく親しみやすい内容。とりわけ第2曲「朝の野を歩けば」は心が浮き立つようなチャーミングな曲で、マーラーもよほど気に入ったのか交響曲第1番第1楽章にメロディがそっくりそのまま転用されました。他ではオーケストレーションがダイナミックな第3曲「僕の胸の中には燃える剣が」、幻想的な旋律で静かにフィナーレを迎える「恋人の青い瞳」もおススメです。
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ロッシーニ/スターバト・マーテル

2014-12-08 08:40:44 | クラシック(声楽)
今日も宗教音楽でイタリアの作曲家ロッシーニの「スターバト・マーテル」を取り上げます。これまで同名の曲はドヴォルザークプーランクでも取り上げましたが、我が子イエス・キリストの死を嘆く聖母マリアの悲しみを歌にしたカトリックの聖歌のことです。歌詞はあらかじめ定められているのですが、メロディは作曲家の自由と言うことで、各人の個性がいかんなく発揮されます。ロッシーニは言うまでもなく音楽史上に冠たる大オペラ作家でしたので、さながらオペラを思わせる魅惑的な旋律に溢れています。全部で10曲ありますが、いかにも宗教音楽らしいのは冒頭の「哀しみの聖母はたたずみ」、4曲目「人々の罪のために」、5曲目「愛の泉である聖母よ」、9曲目「肉体は死んで朽ちはてるとも」ぐらいで、後は歌詞を見なければオペラのアリアと言われても何の違和感もない歌心たっぷりのメロディに溢れています。でも、それらの曲が何とも魅力的です。2曲目の悦楽的なテノール独唱「悲しみに沈むその魂を」、続く美しいソプラノ二重唱「だれが涙を流さない者があろうか」、6曲目のイタリア民謡を思わせる素朴な四重唱「おお聖母よ」、ソプラノ独唱で静かに歌い上げる7曲目「キリストの死に思いをめぐらしたまえ」、ドラマチックな構成で終盤のソプラノの絶叫が鳥肌ものの8曲目「さばきの日にわれを守りたまえ」、フィナーレは「アーメン、とこしえにわたり」の歌詞を延々と繰り返しながら最後はオーケストラと一体となって感動のクライマックスを迎えます。



CDは韓国の世界的指揮者チョン・ミュンフンが天下のウィーン・フィルを振ったものです。数多くの名指揮者がこの曲を録音していますが、その中でも名盤の誉れが高いようです。上述のとおりオペラ的要素も強いので歌手も重要で、本盤ではリューバ・オルゴナソーバとチェチーリア・バルトリがソプラノ、ラウール・ヒメネスがテノール、ロベルト・スカンディウッツィがバリトンでそれぞれ熱唱を聞かせてくれます。宗教音楽と言うとどうしても堅苦しいイメージですが、この曲はある意味不謹慎と言ってもいいぐらい盛り上がる曲ばかりですので、敷居の高さから敬遠している人でも楽しめる内容だと思います。
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