ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

アニタ・オデイ/アニタ・シングス・ザ・モースト

2025-01-22 19:28:55 | ジャズ(ヴォーカル)

本日は3大白人女性ヴォ―カルの1人、アニタ・オデイを取り上げます。残りの2人はジューン・クリスティとクリス・コナーで、レコード会社で言うとアニタがヴァーヴ、ジューンがキャピトル、クリスがアトランティックのそれぞれ看板シンガーと言うことになります。この3人は色々と共通点があり、まず全員がスタン・ケントン楽団出身のいわゆる”ケントン・ガールズ”であること、全員がハスキー・ヴォイスであること、そしてこれは失礼かもしれませんがいわゆる美人女性歌手ではなく歌一本で勝負した生粋のジャズシンガーであることです。(この頃はローズマリー・クルーニー、ドリス・デイ、ジュリー・ロンドン、ダイナ・ショア等美貌を売りにした歌手兼女優の人が多くいました)

さて、アニタ・オデイと言えば映画「真夏の夜のジャズ」ですよね。1958年のニューポート・ジャズ・フェスティヴァルの様子を収めたこの映画、色々なジャズマンが登場していますが、アニタがスキャットを交えながら"Tea For Two"を歌う場面、とりわけバックのミュージシャンとのアドリブの掛け合いは映画の中でも最も印象に残る場面の1つでしょう。アニタは決して声量抜群でもないし、特に美声とも思わないですが、映画のシーンに代表されるように独特の"間"や気の利いたアドリブで聴衆を魅了するタイプですね。後はyoutubeに上がっている1963年に来日時に"Four Brothers"を歌う動画もおススメです。当時の日本人ビッグバンドをバックにユーモラスな仕草を交えながら全編スキャットで歌い切るアニタが最高です。

本作「アニタ・シングス・ザ・モースト」は1957年1月にヴァーヴに吹き込まれた1枚。「ジス・イズ・アニタ」「シングス・ザ・ウィナーズ」と並んで彼女の代表作です。この作品、共演者が注目で、アニタと同じくヴァーヴの顔であったオスカー・ピーターソン・トリオがバックを務めています。ただし、エド・シグペン入りの第二期のトリオではなく、ギターのハーブ・エリスがいた頃の第一期ピーターソン・トリオです。このトリオには通常ドラムはいませんでしたので、本作ではジョン・プールが追加のドラマーで入っています。ベースはもちろんレイ・ブラウンです。

全11曲。全て有名スタンダードばかりで、選曲的にはあまり面白みがないと言えばないですが、それでもアニタの歌とピーターソン・トリオの演奏のおかげで水準以上の出来に仕上がっています。主役はあくまでアニタで、ピーターソンは長々とソロを取るわけではないですが、それでも”’S Wonderful"等で見せる高速ソロはさすがの一言。一転して"I've Got The World On A String"等のバラード曲ではロマンチックなピアノを聴かせてくれます。"Old Devil Moon"ではハーブ・エリスのギターソロも聴けます。

一方、アニタも独特のハスキーヴォイスと彼女ならではの"崩し"でおなじみのスタンダードを料理していきますが、真骨頂はやはりスキャットですよね。”Taking A Chance On Love"でも中間部で軽くスキャットを挟みますが、"Them There Eyes"では最初と最後に早口で歌詞を歌う以外は基本スキャットで歌い、後半はドラムとスリリングな掛け合いを披露します。ピーターソン&エリスの高速ソロも素晴らしく、個人的には本作のベストトラックですね。その他では、ミディアムスローでじっくり歌う"You Turned The Tables On Me"、ピーターソンの美しいピアノをバックに情感たっぷりに聴かせるラストの"Bewitched"もおススメです。

 

 


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