ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

チェット・ベイカー/チェット・イズ・バック!

2014-03-15 11:00:45 | ジャズ(ヨーロッパ)
前回のバルネ・ウィランに引き続き、ヨーロッパ産のジャズをご紹介します。リーダーのチェット・ベイカーはもちろんアメリカ人ですが、他のメンバーは全員ヨーロッパ人で、録音も1962年1月ローマで行われたものです。サックスとギターを加えたセクステット編成で、ベルギー人のボビー・ジャスパー(テナー&フルート)、ルネ・トマ(ギター)、ブノワ・ケルサン(ベース)、スイス人のダニエル・ユメール(ドラム)、そしてイタリア人のアメデオ・トンマージ(ピアノ)という組み合わせです。50年代にウェストコーストジャズのスーパースターとして君臨していたチェットがなぜイタリアで、しかも“チェット復帰”を意味するタイトルの作品を発表したのか?その経緯は解説に書かれていますが、何でもチェットは重度の麻薬中毒に陥っており、60年8月にイタリアの演奏旅行中に不法所持で逮捕。そのまま1年以上をイタリアの刑務所で過ごしたそうです。本作は久々にシャバに出たチェットがヨーロッパのジャズメンに囲まれて思う存分吹きまくったセッションと言うことになります。



以上、いろいろ曰く付きの作品ですが、演奏内容自体はとても素晴らしいです。チェットのトランペットはブランクを感じさせない力強さで、むしろアイドル的人気を誇っていたウェストコースト時代に比べ、よりストイックで研ぎ澄まされたような印象すらあります。共演者もボビー・ジャスパーは過去エントリーでも取り上げたように、超一流のマルチリード奏者ですし、ルネ・トマもソニー・ロリンズのアルバムにも参加するなど当時ヨーロッパ最高のギタリストと呼ばれていたそうです。ピアノのトンマージは全く知りませんでしたが、無難なサポートぶりを見せています。全8曲、うち4曲がバップチューンで、セロニアス・モンク“Well You Needn't”、チャーリー・パーカー“Barbados”、ソニー・ロリンズ“Pent-Up House”、オスカー・ペティフォード“Blues In The Closet”と名演揃い。歌モノスタンダード3曲はうち2曲がバラード“These Foolish Things”“Over The Rainbow”ですが、それよりミディアムテンポの“Star Eyes”が素晴らしいですね。残りの1曲はアメデオ・トンマージが作曲したブルース“Ballata In Forma Di Blues”です。なお、今回発売されたCDには他にボーナスが4曲あり、チェットがエンニオ・モリコーネ指揮のストリングスをバックに、例の中性的な甘いボーカルでイタリア語の歌を歌うという企画ですが、個人的には全く無視!ハードバップトランペッター、チェットの真髄を味わうには前半8曲で十分です。
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