ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

ジョン・コルトレーン/コルトレーン・ジャズ

2016-02-07 23:53:55 | ジャズ(モード~新主流派)
ジョン・コルトレーンのキャリアは主に3つに大別されます。ハードバッパーだった1958年までのプレスティッジ時代、モードジャズ路線を開花させた1959年から61年のアトランティック時代、そしてフリー路線を突き進んだ以降のインパルス時代。私はフリージャズが苦手なので、もっぱらプレスティッジかアトランティックのコルトレーンに親しんでいるのですが、特にアトランティック時代は「ジャイアント・ステップス」「マイ・フェイヴァリット・シングス」「オーレ」などモダンジャズ史上に残る傑作揃いで、コルトレーンが最も輝いていた時代と言えると思います。そんなアトランティック時代にあってイマイチ目立たないのが今日ご紹介する「コルトレーン・ジャズ」。失礼ながら私などこのアルバムの存在自体を認識しておらず、アトランティックのコルトレーンは全部聴いたと思い込んでいたくらいです。確かに上記の傑作群に比べるとこれ!と言ったインパクトに欠けるのは否めませんが、それでも普通に上質のジャズ・アルバムですよ。何せ絶頂期のコルトレーンに加え、サポート・メンバーがウィントン・ケリー(ピアノ)、ポール・チェンバース(ベース)、ジミー・コブ(ドラム)と豪華メンバーですからね。悪かろうはずがありません。



演奏ですが、「ジャイアント・ステップス」以降のコルトレーンはモードジャズとして括られるのですが、実際はそんな単純なものでもないようです。本作は時系列的には「ジャイアント・ステップス」の半年後の1959年11月~12月にかけてのセッションがメインですが、ピアノがウィントン・ケリーと言うこともあり、ハードバップ調の曲も半分くらいあります。歌ものスタンダードの“Little Old Lady”と“My Shining Hour”はコルトレーンも変に原曲のメロディをこねくり回したりせず、ケリーのいつもながらのスインギーなピアノと合わせて実に軽快な仕上がりです。“I'll Wait And Pray”もバラード演奏の王道を行くものです。他は全てコルトレーンの自作曲なので、曲調はモーダルですが、ケリーのピアノは相変わらずハードバピッシュです。この中ではコルトレーンがソニー・ロリンズを意識して書いたという“Like Sonny”が秀逸です(演奏はまるっきりコルトレーンですが)。

ところが一曲だけ収録されている“Village Blues”だけが翌1960年10月の録音で、バックがマッコイ・タイナー(ピアノ)、スティーヴ・デイヴィス(ベース)、エルヴィン・ジョーンズ(ドラム)に交代しており、曲調が一変して後期のコルトレーンを特徴づけるスピリチュアルな雰囲気に満たされています。ジャズにおいていかにリズムセクション、特にピアノが重要な役割を占めているかと言うのがこの作品を聴くとよくわかりますね。結局、この新生トリオはその直後にモダンジャズ最大の傑作の一つ「マイ・フェイヴァリット・シングス」を生み出します。本作はいわば過渡期のコルトレーンを記録した貴重なアルバムと言えるかもしれませんね。
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