ハードバピッシュ&アレグロな日々

CD(主にジャズ・クラシック)の感想を書き留めます

デイヴ・パイク/イッツ・タイム・フォー・デイヴ・パイク

2025-01-09 20:57:57 | ジャズ(ハードバップ)

本日は白人ヴァイブ奏者のデイヴ・パイクをご紹介します。この人は60年代後半にデイヴ・パイク・セットと言うグループを結成し、ギターやインド楽器のシタールを取り入れた独特のサウンドを追求するのですが、それらの作品がレアグルーブの古典として後年クラブシーンで注目されたそうです。私も今回のブログを書くにあたり、どんなもんかと試しに聴いてみましたが、いや~正直ガチャガチャ騒がしいだけで何がいいのかさっぱりわかりませんでした。この人に限らず60年代後半あたりから迷走するジャズマンは多いですよね。まあ本人達はいたって真面目に新しい音楽性を追求していたのでしょうし、支持する人もいるのでしょうが・・・

ただ、そんなパイクもデビュー当初は普通のジャズを演奏していました。特に有名なのが大手のエピック・レコードから発売された「パイクズ・ピーク」であのビル・エヴァンスと共演していることもあり昔から一定の人気があります。ただ、今日ご紹介するのはその少し前にリヴァーサイドに吹き込まれたパイクにとってのデビュー盤です。録音年月日は1961年1月30日と2月9日。パイクこの時22歳の若さでした。メンバーはバリー・ハリス(ピアノ)、レジー・ワークマン(ベース)、ビリー・ヒギンズ(ドラム)。さすがリヴァーサイドと言った面々が脇を固めています。

全8曲。バップスタンダード、歌モノスタンダード、オリジナル曲がバランス良く配分された作りになっています。オープニングはチャーリー・パーカーの”Cheryl"ですが、普通にバピッシュな演奏ですね。年代的にもう少しモード寄りかと思っていたのですが、いたって正統派のビバップです。ただ、このパイクは結構声を出すんですよね。ソロのところで興にのってムニャムニャ言いながら演奏します。ピアニストとかではバド・パウエルとかキース・ジャレットとか声出す系は多いのですが、ヴァイブでは珍しい(そうでもないか?)これでピアニストも同じように唸る人だとさすがにうるさいのですが、バリー・ハリスは声は出さずにそれでいて抜群のテクニックとグルーブ感で演奏を締めてくれます。本作には他にもタッド・ダメロン”Hot House"、マイルス・デイヴィス”Solar"も収録されていますが、どちらも原曲そのままのバップ風の演奏です。歌モノは”On Green Dolphin Street”と”Little Girl Blue”の2曲。特に前者が良いですね。バイクの清涼感溢れるヴァイブのイントロからハリスのスインギーなピアノソロ→再びパイクのソロと展開します。実に爽やかな演奏ですね。後者はリズムセクションを除いたヴァイブの無伴奏ソロですが、アドリブの途中で何の曲かわからなくなります。

オリジナル曲の方はまずパイクの自作曲”It's Time"が良いですね。リリカルなメロディを持った美しい曲で、バラードの表現力もなかなかのものです。22歳とは思えない大人のバラード演奏ですね。”Forward"は一転して急速調のバップナンバーです。ラストトラックはパイクではなくトランペッターのドン・チェリーが書いた”Tendin' To Business"と言う曲。チェリーと言えば前衛ジャズの旗手でこの頃オーネット・コールマンと活発に活動していましたが、この曲自体は拍子抜けするくらいオーソドックスなブルースです。ちなみに肝心ののチェリーやコールマンにはこの曲を演奏した形跡がなく、謎の曲です。以上、後年のデイヴ・パイク・セットと比べると普通と言えば普通過ぎるくらいのジャズ作品で、ヴァイブが好きな人にはおススメです。

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