広く浅く

秋田市を中心に青森県津軽・動植物・旅行記などをご紹介します。

いがぐりむしの正体

2021-05-25 22:54:56 | 昔のこと
2012年の記事でも取り上げた、昭和末~平成初期の秋田市立小中学校の給食に関連する話題。
今年3月始め、スーパーの冷蔵売り場に、こんなひなまつり用商品があった。
雛 中華点心 DUMPLING ASSORT
見切り品シールで隠れたせいもあるが、一見、お菓子のような色合い。
上からピンク、白、緑とひし餅と同じ色。順に「芝えび使用焼売」「上州麦豚使用てまり焼売」「九条ねぎ使用水晶餃子」。
シュウマイやギョウザは、総称としては「DUMPLING」で合っているらしい。群馬県の「みまつ食品」製。

どれもおいしかったのだけど、白い「てまり焼売」。
加熱前
「手まり」にしてはゴツゴツしているような。
シュウマイの皮の代わりに、米粒を付けたもの。これって…
加熱後
昔、秋田市の給食に出ていた「いがぐりむし」そのものでは?!
2012年は「肉団子の周りに米粒を付けて蒸したもの。外見が栗に似ているから「いが栗蒸し」というわけで、台湾の料理らしい。」と表記していた。
しかし、「肉団子」より「シュウマイの中身」のほうが適切だったかもしれない。味も似ていたような気がする。大きさは今回のと同じか、若干大きいと思う。
断面
こんなところで再会できるとは!
そして、いがぐりむしの実態は「皮で包む代わりに、米粒をまぶしたシュウマイ」であることを気付かされた。


改めて、Googleで主に画像検索。
「てまり焼売」では、普通の皮で包んだシュウマイ(の丸っこい形のなど)がほとんど。「""」で囲わずに「いが栗蒸し」だけでは、栗蒸し羊羹の画像ばかり。
囲った「"いが栗蒸し"」や、ひらがなの「いがぐりむし」では、多くはないがやっと画像が出る。
米粒でなく、カットしたそうめんを付けたものもあり、見た目はそのほうが「いが栗」っぽい。

そのほか呼び名が多い食べ物で、多数派の「肉団子のもち米蒸し」のほか、いくつかあるので後述。
ここでまた、シュウマイか肉団子かになってしまう。明治やキッコーマンのサイトやその他レシピサイトのいくつかでは、「肉団子~」の名称で、このレシピが出ている。それを見ると(それぞれ違いはあるが)、タケノコ、シイタケ、ネギ、ショウガなどを刻んでひき肉に混ぜている。キッコーマンのサイトではカラシ醤油で食べることになっている(タネに味付けして醤油不要とするレシピも多いが)。そうなれば、肉団子というよりはシュウマイ寄りではないか。

昔、「いがぐりむし」が、給食で最初に出た時は、ほんとうの栗が入っているかと思った。ネット上には「虫」だと勘違いしたり連想したりして、気持ち悪く感じた人もいたようだ。
「肉団子のもち米蒸し」だとそんな誤解はないが、肉団子と米の関係が伝わらず、こんな形状の食べ物だと想像はできないだろう。どっちもどっち。


現在の学校給食。秋田市立学校では、どうも出なくなってしまったようだ。
神奈川県真鶴町は「いがぐりむし」の名で2020年度時点で出ていた。
違う呼称では、全国各地で確認できる。明治のサイトでは給食で人気のメニューの1つとして紹介。
ネットの検索結果を見る限り、特に東京都や長野県に多く、小中学校だけでなく保育所でも好まれる献立。
少数派の呼称としては、「いが蒸し(八王子市)」、「くす玉蒸し(長野県須坂市)」、「真珠団子(静岡県富士市、同牧之原市)」、「真珠蒸し(埼玉県久喜市)」、そして「珍珠丸子(チンジュワンズ、杉並区)」。ただし、これの呼称は画像検索やレシピサイトでも見られる。
「糯米蒸肉圓」とするレシピサイトもあったが、中国語では「珍珠丸子」のほうが適切っぽい。
「珍珠」とは中国語で真珠のこと。真珠団子や真珠蒸しは、その連想なのだろう。手まり同様、こんなゴツゴツした真珠はないけれど。

作り方は、米に着色したり紫黒米を付けたりした色変わり(紅白)や、豆腐を混ぜたヘルシー仕様もある。
給食室や給食センターで手作りするものもあれば、業務用冷凍食品(テーブルマーク「もち米付き肉だんご」など)もある。手作り版では、1人1個で大きめに作り、弁当用のアルミカップに入れて蒸すところが複数あった。



最後に給食から離れて。
ひなまつりセットが「点心」であったように、珍珠丸子も点心の1つ、やはり台湾のものらしい。
僕は「点心」と「飲茶(ヤムチャ)」を混同してしまう。
本場と日本では、多少定義が違ってしまっているようだが、「点心」は中華料理の軽食のこと、「飲茶」はお茶を飲みながら点心を食べること、もしくは点心をたくさん食べること、だそう。「食べ物の総称」と「食べ方」という、並列できない違いがあった。

日本で点心や飲茶という言葉も、食べ物・食べ方も、広まったのは1990年代だと思う。ギョウザ、シュウマイ、春巻きなど、点心の1つ1つはそれ以前から親しまれていたものもあるが。
それに貢献した大きなものが、ミスタードーナツの「ミスター飲茶」。所さんの「♪桑港(サンフランシスコ)のチャイナタウン、の飲茶」のテレビCMもあった。
1992年から一部店舗で実施したもので、今はなき鎌田会館運営の秋田市内の店(鎌田会館内ではなく広小路の店など)でも早期に導入していた。
主に飲み物よりも食べ物(点心)がメインなはずだから、もし、ここで「ミスター点心」としても間違いではないだろうし、その後の世の中が少し変わっていたかもしれない。
1994年6月29日放送の「警部補・古畑任三郎(第1シリーズ)」最終話「最後のあいさつ」では、古畑と今泉が飲茶を食べるシーンがある。たくさん食べようとする今泉が、古畑に「少しずつ色々食べるのが、飲茶の本来の楽しみ方」とたしなめられていた。
このように、おそらく当初は「飲茶」のほうがよく使われていた。その後、「点心」に変わっていったのではないだろうか。「てんしん」は日本語と同じ読みだが、「やむちゃ」だと中国語らしい響きでそれらしい感じが増すということもあったのかも。
コメント (2)
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