「小江戸」と呼ばれる街がある。
江戸時代の風情のある地を指して、
埼玉の川越、千葉の佐原のほか
「遠州の小江戸」と呼ばれた静岡の
掛塚(現在は磐田市。旧竜洋町)等、
日本各地に点在している。
その筆頭はやはり川越。
教養キャンパスが東武東上線の
朝霞台駅最寄だったので、
大学時代に訪れた記憶がある。
すでに「小江戸」と呼ばれていたが、
鄙びた感じがあった。
演劇の世界。これまた少々昔に、
歌舞伎などの伝統演劇に対して
西洋から取り入れたスタイルを
「新劇」と称したのだが、
やがてアングラや小劇場などの
さらに新しい波が押し寄せ
〈旧新劇〉と揶揄されたり。
小さい劇場で上演していたことから
「小劇場」と括られた中から
人気を博して大きな会場に進出した
一部のカンパニーを〈大小劇場〉と。
そのノリでいえば、数日前に
30年以上の時を経て歩いた川越は
〈大小江戸〉であった!
完全な(?!)観光地化がなされ、
内外からの人が溢れて、
情緒というものが残念ながら皆無
ただ。
テーマパークにしないと、
人は集まらないのだろうなぁ
と理屈は充分に理解できる。
一枚目の写真は、そんな川越の
ランドマーク「時の鐘」。
鐘の鳴る時間目掛けて多くの人波。
個人的には、鐘の裏手の住居で揺れる
洗濯物とのコントラストが
一番印象に残ったりした。
人の住まう町だから当然洗濯はする。
我々と変わらない日常を生きている。
その一方で、しもた屋が
家を改装して饅頭だのお面だのを
売っていて、それも興味深かった。
静かに暮らしたいのに、
とんでもない数が押し寄せる。
だったらいっそ商いをしちゃえ的な
なんと人間的な思考ではないか!
商家ではない一般の家の意味で
しもた屋を使ったけれど、
辞書では二番目に置かれていて。
先に来る意味は、商売をやめた家。
⋯⋯その意味では「逆しもた屋」だ。
商売という観点では。
東武とJRの「川越駅」と
「小江戸」エリアを結ぶ
クレアモールという商店街が
(他に西武新宿線「本川越駅」からの
ルートもある)
見事にチェーン店。
ラーメン、カフェ、薬局にジムetc.etc⋯
それはそれである種の
テーマパークといえるラインナップ。
繰り返しになるが。
まずは生活する人々がいて、
周辺で暮らす方々も含めて
それがとても便利なことは知っている。
ますます情報が手軽に入手でき、
悲しいかな、それに踊る時世。
自らの足で〈楽園〉を見つけ出すのは
容易ではないのも分かっている。
〈穴場〉と発信された瞬間に
そこはもうそれでなくなってしまうし。
話は変わるが。
鄙びていた頃の「大小江戸」になる前の
川越に、確かに行ったのだが、
面子がまるで思い出せない。
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