このような本を読み始めました。ずいぶん前に買った本です。
内容も濃密な本で、正直言ってタカ長のようなぼんくら頭には難解な本です。しかし、頭の体操のつもりで読み始めました。
難解ですがハッとするような知見を得ることもあります。そのひとつです。
中国駐大阪観光代表処のホームページから借用させて頂いた画像です。
中国に万里の長城があります。北方の狩猟遊牧民の侵入を防ぐために築かれたものです。島国に生まれ育った日本人には北から侵入されるという感覚はないように思いますが、中国の人には切実な問題だったことはタカ長も多少は理解できます。
その北方の狩猟民の文明と農耕民の文明についても書かれています。少し長文になりますが、引用させていただきます。
狩猟民の文明と農耕民の文明の決定的な違いが少なくともひとつだけある。それは、食物連鎖のなかに人間が組み込まれているかいないか、ということです。狩猟民の世界では、人間は狩りをして動物を殺し、その肉、皮、骨のすべてを利用します。それと同時に、動物も人間を襲い、殺し、その肉を食べる。つまり、人間と動物の関係が食物連鎖の環のなかに入っているのです。この場合、人間と動物は対等の関係、食うか食われるかという対等の関係にあります。(中略)
しかし、やがて農耕文明に入った段階で、人間はその食物連鎖の環のなかから人間だけを脱出させる。人間は動物を殺して食べてもいい。しかし動物は絶対に人間を襲って殺してはいけないというモラルを、人間中心主義の立場で作り上げてきたのです。これは、まことに大きな精神革命ではなかったかと私は思っているのです。
裏山の登山口に掲示されたこの紙は、あれから3年が過ぎるのにそのまま放置されています。この掲示のことは痴劣でコメントする気にもなれませんが、登山道にクマが出たとか、町にイノシシが出たと大騒ぎするのは、農耕文明の人間至上主義の発露そのものだと思うのです。
いまこの地球上には困難な問題が数多くあります。温暖化の問題、砂漠化の問題などなど、どれも地球規模の問題といえるものです。
そのような時代にあって、われわれが最も多くを学ばなければいけないのは、もしかすると、農耕文明からよりも狩猟文明からかもしれません。人間と動物が対等の関係で生きていく。人間も食物連鎖の環の一部だという自覚のなかに生きていたころの文明の意義、それをもう一度考え直し、これからの自分たちの生き方、さらには地球と共生する生き方に、それをどう生かしていくかについて考えていく時期に来ているのではないかというのが、私の考えです。
とても示唆に富んだ一文です。この本が出版されたのは2004年で、それから15年の時間が経過しています。しかし、この貴重な提言は省みられなかったように感じます。
タカ長が考えても仕方ないことですが、そのようなことを考えるのも頭の体操、ボケ防止の効果に期待して、たまにはかたい本を読みたいと思っています。