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藤原緋沙子著 「日の名残り」

2025年01月20日 09時48分16秒 | 読書記

図書館から借りていた、藤原緋沙子著 「日の名残り」(廣済堂文庫)を、読み終えた。
本書は、著者の長編時代小説、「隅田川御用帳(すみだがわごようちょう)シリーズ」第14弾の作品で、「第一話 日の名残り」「第二話 再会」「第三話 爪紅(つまべに)」の、連作短編3篇が収録されている。
「隅田川御用帳シリーズ」は、縁切り寺「慶光寺」の御用宿「橘屋」の女主人お登勢(おとせに雇われた、元築山藩藩士の浪人塙十四郎(はなわじゅうしろうが、「慶光寺」の寺役人近藤金吾や、橘屋の番頭藤七(とうしち等と共に、縁切りを求めて「橘屋」に駆け込んでくるいろいろな女達の様々な事情を探り、絡み合う悪事や謎を解明、愛憎乱れる 女と男の深い闇を、人情と剣とで見事に解決していく、悲喜こもごもの物語である。


読んでも読んでも、そのそばから忘れてしまう老脳。
読んだことの有る本を、うっかりまた借りてくるような失態を繰り返さないためにも、
その都度、備忘録として、ブログ・カテゴリー「読書記」に、書き留め置くことにしている。


「第一話 日の名残り」
▢主な登場人物
 大黒屋卯兵衛・おきく(紀久)、儀兵衛(番頭)、おふゆ(女中)、
 長谷長左衛門・伊津・圭之助、
 政五郎・おつね、唯七(ただしち)・太一、
 東堂幽斎、
 松波孫一郎、
▢あらすじ等
 薬種問屋大黒屋の女将おきくが、離縁を望んで橘屋に駆け込んできた。おきくは、没落した
 御家人長谷長左衛門の娘紀久で、実父が負った借金のため、一家の犠牲になって、5年前に
 大黒屋卯兵衛に嫁いだのだったが、・・・。
 十四郎、藤七が、大黒屋の内情、真相を探索していくと、卯兵衛の裏の顔が浮かび上がり・・、
   十四郎は、紀久の後ろ姿を見ながら言った。
   「圭之助殿は、唯七が考案した紀久月の菊の株を裏庭で育てていたそうだ。
   いつか妹に手渡してやらねばとな」
   お登勢は小さく頷いた。
   紀久はこの先、花が咲くたびに唯七を思い出すだろう。だがお登勢は思う。
   悲しみや感傷に浸るだけでなく、いつかそれを乗りこえて新しい道に踏み出してほしいと、

「第二話 再会」
▢主な登場人物
 浅次郎、おみつ、おいと、
 六兵衛(銀六)・お秀、
 惣兵衛(乙輪屋隠居)、
 万蔵、治左衛門、
▢あらすじ等
 かって、橘屋が間に立って離縁したおみつが、元の亭主浅次郎に金を渡してほしいと言って
 きた。
 博打の借金を抱え、娘おいとと貧苦に耐えながら暮らしている浅次郎を助けたい思いを受け、
 お登勢、十四郎、藤七は、駆け込み事案でも無いのに、動き始める。
 親子の情愛がじっくり書き込まれており、人情に重きを置いた作品になっている。
   「お登勢殿」
   十四郎は、小さな声で叫び、五間ほど横手にある石灯籠に顔を向けた。
   そこには朝次郎が身を隠すようにしておみつとおいとを見つめていた。
   お登勢は頷いて苦笑した。
   春よ来い。
   お登勢は十四郎に笑みを返した。

「第三話 爪紅」
▢主な登場人物
 菊屋与茂七(よもしち)・おその・お才()、重蔵(番頭)、おきわ(女中
 清之助、大和屋、
 日野屋与左衛門、松吉
 楽翁(元筆頭老中松平定信
 近藤金五・千草・浪江、
 柳庵、
▢あらすじ等
 金吾、十四郎が、鼻の下を伸ばしたおそのは、紅白粉(べにおしろい)で有名な「菊屋」の
 若女将だったが、柳庵が万寿院、お登勢に紹介した小間物屋清之助は、元「菊屋」の手代、
 橘屋に駆け込んできた与茂七は、「菊屋」に婿入りした若旦那だった。????。

 十四郎、藤七が、その背後を探索。与茂七は、油問屋日野屋の厄介者で、持参金五百両目当ての
 菊屋と思惑が一致し、無理やり、おそのの婿にさせられたものの、命まで狙われていることが
 判明。

 そこには、悪辣非道な真実が・・・、
  「お嬢様、私はお帰りを待っています。何年でもお待ちしています。あの菊屋でお待ちして
  います」、「ありがとう、清さん」、おそのは震える声で答えると、引かれながら降りしきる
  雪の中に消えていった。

 菊屋の事件が片付いた後に、十四郎は、楽翁に呼びつけられ、
  「お前を白河藩お抱えの剣術指南役と致す」
  十四郎は目を丸くする。
  「お登勢・・・」、抱きしめたい気持ちを抑えて、十四郎はお登勢の白く細い手を両手で強く
  握りしめた。
隅田川御用帳シリーズ、14弾目にして、十四郎とお登勢の関係が急展開、
続編が楽しみになってきた。


「あとがき」・・・藤原緋沙子


「解説」・・・・・細谷正光
藤原緋沙子著「隅田川御用帳シリーズ」全体像として、鴨長明著「方丈記」の書き出しの一節
  「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、
  かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」
が、当てはまるのではないかと、記述されている。


 


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