数年前まで 自営業を続けていて、仕事柄、時間的余裕、精神的余裕も無く、ゆっくり読書する習慣等 まるで無かった人間である。完全に仕事から解放された以降、数多のブログを拝見拝読する中で、「そうだ!、読書もいいね!」となり、ある時から 「読書」も、自分のライフスタイルのひとつになりつつあるような気がしている。「晴耕雨読」と言う言葉が有るが もしかしたら、心のどこかで そんな暮らしを 望んでいたのかも知れない。もっとも 「読書」と言っても 気力、体力、記憶力、視力、減退爺さん、今更 理解に苦しむような難しい本等 読破出来るはずも無し、読書初心者としては とりあえず、気楽に、一気に読め切ることの出来るような 時代小説の類に手を伸ばしているところだが。
先日 図書館から借りてきた 諸田玲子著 「狸穴あいあい坂」(上)(下)(大活字本)を 読み終えた。
諸田玲子著 「狸穴(まみあな)あいあい坂」
(目次)
「ムジナのしっぽ」
「涙雨」
「割鍋のふた」
「ぐずり心中」
「遠花火」
「ミミズかオケラか」
「恋心」
「春の兆し」
まず 作品の冒頭に
「江戸城の南、広大な増上寺の西方に位置する麻布は 坂が多い。いや多いなんてものではない。鳥居坂、長坂、芋洗坂、南部坂、くらやみ坂、一本松坂、新坂、仙台坂、大黒坂・・・どこもかしこも坂だらけだ」・・・とある。
先日 東京都港区の「港七福神めぐり」(ウオーキング)をしてきたが、「狸穴あいあい坂」は まさに その現在で言う 麻布、六本木界隈が舞台になっている作品。
もし 「港七福神めぐり」(ウオーキング)する前に この書を読んでいたら もっとあっちこっち寄り道をしたくなったかも知れない。
「港七福神めぐり」(ウオーキング)の余韻がまだ残っていた先日、図書館で ふっと手を伸ばして借りてきた書だ。ネットで調べてみると 東京都港区内には 89の坂が有り その内の42の坂が 麻布地区に集中しているのだそうだ。
主人公は 火盗改方(火付盗賊御改役)与力の娘、17歳の結寿(ゆず)、
竜土町(りゅうどちょう)の堅苦しい実家(組屋敷)を嫌い 火盗改与力を引退して狸穴町(まみあな町)の町方の口入屋(くちいれや)「ゆすら庵」(傳蔵・てい夫婦)の離れに居を移した気難しい祖父溝口幸左衛門と小者の百介と 暮している。
江戸時代、町奉行所の捕り方は 巡査、火盗改方は 秘密警察のような存在で いがみあい 犬猿の仲だったとされているが、火盗改方の娘 結寿が 町奉行所同心 妻木道三郎(つまきみちさぶろう)と出会い、魅かれ、次第に心通わせていく物語である。
全体的に ユーモアあふれる文体で ほのぼのとした雰囲気のある作品だが 1編、1編には 市井の残酷、陰鬱な事件が起こり 結寿と道三郎が関わりながら解決していく捕り物帖的な痛快時代小説の要素も有り 読み応えがある。
自由恋愛が許されなかった江戸時代の武家社会、火盗改方の娘 結寿と 町奉行所同心 道三郎の恋愛は 果たして実を結ぶことが出来るのだろうか。
「狸穴あいあい坂」シリーズの続編 「恋かたみ」、「心がわり」が 楽しみになっているところだ。
(つづく)
作品の舞台を実際に歩かれるとは羨ましい限りです。幕末の江戸の地図を片手に時代小説を読んでいますが,距離感や高低までは分かりませんのでもどかしい気持ちを抱えながらです。
歴史小説や時代物は東海道や中山道などの地図も必須になっています。
読書は一人で楽しめる趣味ですが,自分が面白く読んだ作品を同じように楽しんでいらっしゃるtakezii様の感想文に出会えて嬉しくなりました。
ありがとうございます。(連れ合いでした)
考えてみますと 数年前に、やれこら様の奥様から 藤沢周平作品をおすすめいただいたり 海坂藩や鶴岡市の話を聞かせていただいてから 私の読書が 始まったようなもので 「偉大なる恩人」と思って 感謝しています。
諸田玲子氏の作品も 情景描写が細やかで、どこかほのぼのとした中、テンポもよくて 私好みの作品が多いような気がしています。作者が描く舞台を地図で確認したり 想像したり、私も結構 やっています。
読書歴ゼロに近い爺さんです。是非 これはというおすすめ作品、作者等 耳打ちしていただければ 幸いです。
これからもよろしくお願いします。