図書館から借りていた、葉室麟著 「潮騒(しおさい)はるか」(幻冬舎)を、読み終えた。
実は、先日読み終えた、葉室麟著 「黒島藩シリーズ」の「陽炎の門」の続き、第2段「紫匂う」を、借りてこようとしたが、貸出中だったため、予約し、その代わりにと、何気なく手を伸ばして借りてきた書で、読み始めて直ぐ、菜摘?、千沙?、男装?、鍼灸医?、誠之助?・・・、
なんとなく見覚えのある文字が目に付き出し、もしかして、すでに読んだ書をまた借りてきてしまったかな?・・と思ってしまい、確認したところ、今年の4月に読んでいた、葉室麟著 「風かおる」の続編であることが分かり、「へー!、続編があったんだ・・・、」、納得して、一気に読み終えたものだ。
▢目次
(一)~(二十五)
▢主な登場人物
佐久良亮(さくらりょう)・菜摘(なつみ、佐久良亮の妻、渡辺半兵衛の三女)
千沙(ちさ、稲葉照庵の次女、男装の美少女)
渡辺誠之助(渡辺半兵衛の次男、菜摘の弟)
加倉啓・佐奈(さな、稲葉照庵の次女、千沙の姉、国)・ゆめ、
平野次郎国臣
馬淵故山、
田代甚五郎(福岡藩横目付、田代助兵衛の弟)、
岡部駿河守長常(長崎奉行)・香乃・加代、
ポンペ、
いね(シーボルトの娘、其扇、たき)・ただ、
松本良順、
勝麟太郎(海舟)、西郷吉之助(隆盛)、
月照、
▢あらすじ等
確か、前作「風かおる」では、鍼灸医の菜摘が、長崎の西洋医学伝習所で蘭学を学ぶ夫佐久良亮を追って、弟渡辺誠之助と彼を慕う千沙と共に、長崎に移り住むことになるところで終っていたと思うが、その菜摘が、女だてらに、腕を買われて長崎奉行所の御雇医となり、長崎での生活に馴染みだしたところから、物語が始まっている。
そこに突然現れたのが、福岡藩の横目付田代甚五郎。何事?、千沙の姉、加倉佐奈(さな)が不義密通の末、夫を毒殺し逃亡、尊皇攘夷を唱え脱藩した密通相手の男平野次郎国臣を追って、長崎に逃げ込んだと告げる。菜摘は、長崎奉行所女牢に入牢している武家の妻女らしき身なりの女早苗(さなえ)に、佐奈の心あたりを感じ、信じられない思いを抱きながら、亮、菜摘、千沙、誠之助等と共に、その事件の真相を探索し、佐奈を助けるための方策をしていく物語だ。
敵だか味方だか分からなかった福岡藩横目付田代甚五郎は、実は、前作「風かおる」で、横目付にも拘らず、菜摘の相談に乗って探索を続ける中で命を失ってしまった田代助兵衛の弟で、兄同様、次第に変わり者?振りを発揮し、真相究明、謎解きに加わっていくが、その展開は、小説として面白い。
時代背景は、安政の動乱期。尊王派、攘夷派、乱れる中、コレラが蔓延した頃。シーボルト、いね、松本良順、勝麟太郎(海舟)、平野次郎国臣、等、実在した人物まで登場し、長崎を舞台にした、臨場感溢れる作品になっている。
菜摘はその後も長崎で鍼灸医を行う町医者として働き続けた。
そして、長崎奉行岡部駿河守長常から、「町医者として看板を上げてはどうだ」と言われ、
「時雨堂」という看板を門に掲げることにした。
・・・・・・・、
人は苦難の中にあっても、負けずに進み続けるならば、やがて天から慈雨が降り注ぐのだ。
・・・・・・・、
よく晴れた日だった。菜摘は青空を見上げた。風にのって潮鳴りが聞こえてくる。
で、終っている。