古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

蜘蛛女のキス   プイグ    野谷文昭・訳

2015-12-17 10:26:40 | 小説の紹介
同性愛者と政治犯が同じ監房に入れられ、映画を通して、愛を



深めてゆく。僕は六つある映画の中でヒョウ女の話が一番好き




だった。常に抑圧に晒されている現代の中で、監房の中という



のは常に抑圧の対象となり得る。その中で、発芽としての同性



愛は必然なのだろうか。映画(シネ)マニアというモリーナ



の姿は映画好きとしては讃辞に余りある。というか、この人、




映画が好きなんだろうなあ、と思わざるを得ない。そして、映




画という一方的なコミュニケーション同様、二人のコミュニケー



ションも、時折、一方的になる。しかし、その結果として結ばれ



るのだ。バレンティンの指示通り働き、最後は射殺されてしまう。




いったいこれは何をさすのか?性的開放は政治的な攻撃により、萎



えてしまうということか。政治の力で解放も途絶えてしまうという



ことだろうか。



会話だけで成り立っている小説だが、その会話だけでイキイキとモ



リーナもバレンティンも想起されるというのはこの小説が成功して



いる証であろう。
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ドミニック     ウジェール・フロマンタン

2015-12-16 17:02:34 | 小説の紹介
”僕”がドミニックと猟に出ていて、出会い、親しくなって



行くうちに語られる。ドミニックの若き日の人妻に恋する告




白を小説としたもの。マドレーヌとドミニックは幼いうちから




サロンでカードをするよプな家族ぐるみの付き合いだったが、




18歳で結婚してしまう。その時からドミニックはマドレーヌに



恋してることを悟り、お互いに言い尽くせぬ関係に陥ってゆく




のだ。実に内省的で省察的なドミニックは、読んでいると、ホ



ントに友のように感じた。140年か以上前の作品なのに、ひとは



ひとに恋して、その気持ちっていうのは変わらぬものなのだナ、




と感じ入った、恋に、愛を知ることによって、ひとは成長して




きたことが分かる。という僕は、全く恋とは無縁な生活を送っ




ているのであるが……。この先百年経ってもひとはひとを愛す



るのであろうか?
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さすらいの女   シドニー・ガブリエル・コレット  片山正樹訳

2015-12-15 10:16:36 | 小説の紹介
この作品はコレットの自伝的要素の強い作品らしい。



元作家の33歳の舞台パントマイマーが、仕事もして



いないような資産家の同じ年の男と恋に落ちて、彼




を捨てる、という話だ。女は哀しみによって死ぬこ



とはないそうだ。より強くなってゆく。そうなんだ



ろうなあ、と僕も思う。恋をしないと決めた女が、



恋に溺れていくんだが挿絵のその主人公の女性は



美しいとは思えない。それに恋の相手の男も気持



ちの悪い男だ。だから多分、このカップルはイタ



イカップルじゃないかな、と言う風に思うのだけ



れど。



当のコレットも写真で見ると、厚化粧で、年を取って




からの写真でさえ、かなりスレた、厚顔な感じのする




女性である。あまりお近づきになりたくはない感じで




ある。小説自体はうまいとは思うが、女性としての姿が





そのまま語られる。孤独でありながら、自活していくことに




喜びを求めるような女性が描かれている。
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ある流刑地の話   フランツ・カフカ   本野享一訳

2015-12-14 16:25:56 | 小説の紹介
旅行者が流刑地で精密な機械で処刑される視察




に行く。精密な機械は文字を体に刻む。何か、



社会から隔絶された地で行なわれる残虐性。



処刑人のこのうえもない恍惚の表情を浮かべ




ながらも6時間もかけて殺されるという将校


の話し。それは、体を切り刻み、突き刺し、



血を流させる。暗い謀略の中で、命令に背き



、罪を犯したとされる処刑人の恍惚。暗鬱な



中に、社会のもたらす、得体のしれないシス


テムで時間をかけて殺されてゆく、知らない



人々のことのように思える。
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二百十日    夏目漱石

2015-12-13 16:33:31 | 小説の紹介
(1906年  明治39年)



圭さんと碌さんの会話からほとんど成る。阿蘇の




旅行のことだが、阿蘇の噴火はとてつもなく手の



付けられない自然だ。その自然に真っ向から立ち



向かうことの困難さ、えてして、噴火は近代化の



文明の暗喩のようにもとれる。この文明にのほほ



んとしながら、剛健な圭さんが穴に落ちて出てこ



れなくなるところなどは、罠のような気がする。



あらゆる点で、暗喩的な意味にとれて仕方がない。




行こうとしても、見えているのに行けない噴火口




は真実のような気がするし、社会の現象のような




気がしてしまう。
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生徒募集のお知らせ!

2015-12-12 17:25:11 | 教室
絵画(ペン、水彩)、糸つむぎ、の生徒さん




を募集しています。




鶴岡たか、が子供から大人まで、初心者から



また始めたいな、と思っている方まで、親切





にお教えします。教室の時間はいつ来られて




も大丈夫ですよ。(月曜定休)。(通うことができる




方が対象です。)




お気軽にお問合せください。



古民家ギャラリーうした、


         082・221・5401まで






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異邦人   カミュ   窪田啓作訳

2015-12-12 09:55:59 | 小説の紹介
ムルソーは、母の死でも涙を見せず、次の日、女と関係し、




好きでもない、と言いながら結婚を約束しコメディー映画を観て




人を殺した。悔恨を抱かず、神を信ぜず、神父を罵倒し、死刑




を受け入れ期待さえしている。




これはカミュの処女作だ。四年の歳月をかけて、この小説を書いた。




文は平面的で、感情が排除されている。何かが欠如している、それは




豊かな感情というか、対人における愛情と言ったものだけではないよ




うな気がする。存在にたいする信念がないのか、ムルソーはひどく




残酷な男である……。



                     ……新潮文庫
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カチアートを追跡して  ティム・オブライエン   生井英考・訳

2015-12-11 14:30:08 | 小説の紹介
1994年作品。新潮文庫。



ベトナムの戦火の中でカチアートがパリを見たい、と言って





脱走する。それを追い、中尉はじめ、主人公、ポールバーリ



ンらは追跡を開始する。脱走というのがひとつのモチーフに



なっていて、それにつられて逃避行ということになる、T・



オブライエンはあのベトナムから遠く離れた今でさえ、その



戦いの意味や真実を探しているのだと思う。真実を追求す




るのは義務であり、義務とは想像の中であっても、投げ出



されてはならない、ということだ。この話しは、ポール・バ



ーリンのおそらく死にゆく中で見た夢想の中なのだと思う。



見たことのない地に向けてゆく旅、これは想像の中であっても




放棄されてはならない。たとえ死んでも、自由という地に立



つ本分を忘れては真実を見ることはできないのである。



一体真実とは?そこにある虚妄さえ、真実となる場合もある



のではないか。ベトナムは見えないカチアートを追ってどこ



までも続くのだ……。
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囚われのマーケット   P・K・ディック

2015-12-10 11:47:10 | 小説の紹介
「模造記憶」所収



囚われのマーケット  浅倉久志・訳





おばあさんがトラックを運転しているときに見つけた




、未来への扉の入り口。おばあさんは雑貨店をしていて




その未来の世界は放射能に汚染されている。そこに物




資を売りつけ、大金をせしめている。未来世界では、




星外にロケットを飛ばし、脱出している準備をしていて、




行ってしまう。しかし、おあばあさんは、ロケットの



飛び立つのが失敗する扉を選び、お金を稼ぐことを止




めようとはしなかった……というブラックなお話しです。






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楽文カフェの日です・・・・・!

2015-12-06 11:03:10 | 教室
今日は、bebeさんの講義が楽文カフェで



あります。



楽しいヲシテ文字に関する話しが聞けるのでは




ないかと思います。



ヲシテ文字に関して、学びたいという方にはいい



と思います。



まだ受け付けていますので、興味があって来たい




という方はご一報を。




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