古民家ギャラリーうした・ガレッジ古本カフェ便り

古民家ギャラリーうしたと隣のガレッジ古本カフェで催している作品展、日々の発見!、書評、詩などを紹介していきます。

蜘蛛女のキス   プイグ    野谷文昭・訳

2015-12-17 10:26:40 | 小説の紹介
同性愛者と政治犯が同じ監房に入れられ、映画を通して、愛を



深めてゆく。僕は六つある映画の中でヒョウ女の話が一番好き




だった。常に抑圧に晒されている現代の中で、監房の中という



のは常に抑圧の対象となり得る。その中で、発芽としての同性



愛は必然なのだろうか。映画(シネ)マニアというモリーナ



の姿は映画好きとしては讃辞に余りある。というか、この人、




映画が好きなんだろうなあ、と思わざるを得ない。そして、映




画という一方的なコミュニケーション同様、二人のコミュニケー



ションも、時折、一方的になる。しかし、その結果として結ばれ



るのだ。バレンティンの指示通り働き、最後は射殺されてしまう。




いったいこれは何をさすのか?性的開放は政治的な攻撃により、萎



えてしまうということか。政治の力で解放も途絶えてしまうという



ことだろうか。



会話だけで成り立っている小説だが、その会話だけでイキイキとモ



リーナもバレンティンも想起されるというのはこの小説が成功して



いる証であろう。
コメント
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