鼓 直・訳 新潮社 1972年
30年前から読むのを切望していて、ようやく、古本で
手ごろな価格で手に入れることができて、読むことが叶っ
た。
昨年の12月半ばから読み始めて、約一か月かけて、ちま
ちまと読みすすめた。長大なホセ・アルカディオ・ブエン
ディーアとアウレリャーノ・セグンドに続く一族の歴史を描く。
ここで問題にしたいのが視点のことだ。この作品は昔風の書き
方で書かれているとはいえ、すべてが、等間隔で見つめられてい
るように思えた。豚の尻尾が生えてくることも土を食べる女のは
なしもすべてだ。それは、ちょっと狂気のような視点じゃないかと
思う。このはなし自体が、バカげていて、実にけったいなはなしに
満ち満ちていることを鑑みて、それは当然のことのようにも思える。
天才は狂っているもんだ、とも捉えられる。日本人には絶対に書けえ
ない魔術的な文体、めくるめくイメージの奔流に、酔うことしばし、
極上の読書体験となりえたのではないか。
(読了日 2023年1・11(水) 21:07)