(DVD)
先日見た「JUNO」に関連して、見たものです。
同じく10代の望まない妊娠というテーマ。
こちらは、とても地味ですが、深い映像でじっくりと描かれています。
クレールはスーパーで働く17歳の少女。
妊娠5ヶ月。
病院で勧められて、「匿名出産」をすることにします。
匿名出産とは、「マドモアゼルXの出産」ともいわれるもので、フランスにある制度。母親の身元を伏せたまま、産後すぐに子供を里子に出すという仕組みなんですね。
クレールは妊娠を職場仲間にも親にも告げることができない。
彼女は刺繍が好きで、本当はその道に進みたいと思っていた。
それで、刺繍職人のメリキアン婦人のアトリエを訪ね、そこで働くことになる。
メリキアン婦人の方は、愛する一人息子を事故で亡くしたばかり。
生を授かった女性と、失った女性。
・・・とはいえ、この2人に多くの会話はありません。
何しろセリフの少ない映画です。
2人をつなぐものは、刺繍作品。
向かい合い、一針一針糸を刺し、またはスパンコールを縫い込んでいく。
そんな穏やかな時が過ぎる中で、クレールの中の何かが変わっていく。
つまり、初めは妊娠という事実にただ戸惑うだけで、受け入れられなかったのでしょう。
おなかの中で、少しずつ子供が育っていることを実感しながら、
クレールの中で、生きることや愛の大切さの実感もまた、一緒に大きくなっていく。
なんというこの渋さ。
この作品に出てくる刺繍は、さすがフランス。
決してケバケバしくなく、緻密で繊細で、ゴージャスを漂わせながらもシック。
たとえて言えばいぶし銀。
まさに、この映画の印象ですね。
それを言うなら、JUNOはさしずめ、12色のクレパス。
同じ題材でも、こうも違う。
だから映画って面白い。
2004年/フランス/88分
監督:エレオノール・フォーシエ
出演:ローラ・ネマルク、マリアンヌ・アスカリッド