このように、初めから「お涙ちょうだい」狙いなのは、やや警戒してしまうのです。
泣かせればいいってモノじゃないでしょう・・・、という気がしまして。
しかし、飛んで火に入る夏の虫、とでも言いましょうか、
つい引き寄せられてしまうのですねえ・・・。
いまや、子役NO.1のフレディ・ハイモアが、孤児エヴァン役。
彼は、たった一晩の出会いで結ばれた、ロック・ミュージシャンのルイスと
チェリスト、ライラの間の子供なのです。
しかし、2人はその日互いの素性もわからないままに別れ別れになり、
おまけに、彼が生まれたときには、ライラには死産と告げられ、
ひそかに養護施設に預けられて成長したのです。
ただ、彼は両親の血を受け継いで、類まれな音楽の才能を身に付けていました。
麦畑を渡る風、かすかな風鈴の音、街の喧騒・・・、
彼にとってはすべてが音楽。
いつかきっと音楽が彼の両親を呼び寄せる。
そう信じているのです。
ある夜、彼は養護施設を脱走。
ニューヨークで、ストリートミュージシャンの子供たちを率いるウィザードという人物に拾われます。
・・・このあたり、「オリバー・ツイスト」を意識してませんかね。
オリバーがフェイギンに拾われるあたりとそっくり。
ウィザードとフェイギンがまた、そっくりなんですよね・・・。
とにかく、エヴァンはどこへ行ってもその才能を発揮し目立ちまくるので、
とうとう音楽院に見込まれ、そこで学び、
彼自身の作曲による狂想曲の指揮をとることになった。
運命に引き寄せられるように、シカゴにいたライラ、
サンフランシスコにいたルイスが同時にニューヨークに来ることになり、
いよいよその夜、エヴァンの野外コンサートで起こる奇跡!!
う~む、あらすじで書くと陳腐ですよね。
しかし、こんな都合のいい話なんかあるわけない、と言ってはいけないのです。
これは音楽が起こした奇跡のファンタジーなのです。
ここでいちゃもんを付けるのは、ハリー・ポッターに魔法なんていんちきだ、というのと同じ。
時には、こんな奇跡もあったらいいなあ・・・と、夢みるためのストーリー。
感動を呼ぶことも、映画の役割だと思うのですよね。
その意味ではピカイチの映画でした。
写真のシーンは、エヴァンとルイスが
双方親子だとは知らずに、ギターのセッションをするシーンです。
ここも、涙なくしては見られません。
それから当然ながら、音楽がまたすばらしいのです。
ロックがあって、クラシックがあって、ゴスペルなどもあって
・・・そして、さまざまな生活の音、自然の音。
ルイスとライラがそれぞれ別の場所で歌を歌い、チェロを弾くシーンがあるのですが、
それが、ぴったり重なって一つの音楽になっている、
そんなところはなかなか見所&聞き所。
そして、やっぱり、フレディ・ハイモアは只者じゃないです。
つい、彼の表情を追ってしまって、見とれている。
音楽に触れている時の彼は至上の笑み。
あの無邪気な笑顔がたまらないなあ・・・。
感動のラストはもう、涙涙・・・。
すっかり、術中にハマりました。
降参です。
これ、原題は、オーガスト・ラッシュなんですね。
エヴァンの芸名。
でも、これは、「奇跡のシンフォニー」の邦題が正解ですね。
オーガスト・ラッシュ(8月の興奮)では、情緒も何もあったものではない。
2007年/アメリカ/114分
監督:カーステン・シェリダン
出演:フレディ・ハイモア、ケリー・ラッセル、ジョナサン・リース=マイヤーズ、ロビン・ウィリアムズ、テレンス・ハワード