(DVD)
ここのところラッセ・ハルストレムを意識してみています。
一度見たものがほとんどですが、もう一度きちんとまとめておこうと思いまして。
さて、このカサノバは、かの有名な史上最大のプレイボーイとして名高い、あのカサノバその人。
ならば、かなり濃密なシーンがありそうなのに、ぜんぜんありませんでした。
18世紀のヴェネチア。
まあ、今も、ヴェネチアの街はその頃とほとんど変わっていないわけで、
そこでロケーションをしたこの映画には、その美しい風景がいっぱいです。
無邪気で、いたずら好きの少年のようなカサノバ。
その彼が、知的で剣の腕も立ち、またひそかに本を書いているフランチェスカという女性に、真実の愛を見つけます。
カーニバルの夜。
花火が打ち上げられる賑やかな夜のベネチアに浮かぶ気球。
そこで語り合う二人。
夢のように美しい情景でした。
この時代、当然TVも写真もありません。
だから、街ではプレイボーイのカサノバの名前は誰もが知っていて有名なのですが、
実のところ、その顔を知っている人はそう多くない。
それは、カサノバに限らず誰もがそうなのですが。
そんなわけで、別人に成りすますなんてことは意外と簡単にできてしまうわけです。
そういうところがこの映画のポイントになっているんですね。
このカサノバは、屋根を走り回ったり、隣の建物の窓に飛び移ったり、ロープにぶら下がって馬に飛び乗ったり、
なんとアクションもこなす、チャーミングな青年です。
だから私はヒース・レジャーはこの映画で偲びたい。
「キャンディ」ではちょっとつらすぎます。
総じて、この作品は、ラッセ・ハルストレムとしては異色作。
いつもはもっとつらい現実を、ほんのり温かい目で見守るような作風。
この作品はほとんどコメディになってますので・・・。
監督がちょっと茶目っ気を出して、こんなこともできるんですよ~と、遊んで見せた、私にはそのように感じられます。
この作品の他の脇役たちがまたそれぞれユニーク。
最後に船に飛び乗ってヴェネチアを出奔するメンバー、
そしてまた、そこに残る選択をしたメンバー、
最後のちょっと意外な展開も、なかなかおしゃれでした。
2006年/アメリカ/112分
監督:ラッセ・ハルストレム
出演:ヒース・レジャー、シエナ・ミラー、ジェレミー・アイアンズ