映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

パーマネント野ばら

2011年06月16日 | 映画(は行)
こんな「群れ」なら居心地は悪くない



           * * * * * * * *

先日「八日目の蝉」で、感じ入ってしまったので、
奥寺佐渡子さん脚本のこの作品を観てみました。


離婚して、一人娘を連れ、故郷の海辺の町に帰ってきたなおこ(菅野美穂)。
母、まさ子(夏木マリ)の美容院「パーマネント野ばら」を手伝っています。
そこには、パンチパーマのおばちゃんたちや、
男運の悪いなおこの幼なじみたちが出入りし、
明け透けな男関係に話の花が咲く。
実に生活感たっぷり、地に足のついた男女の恋愛話・・・と思ったのですよ。
始めは。
ところが、ここにはある秘密が隠されていました。
何ともたくましい女性たちの生き様のシーンの合間に、
なおこと今の彼のデートシーンが入ります。
この彼が江口洋介。
作品中唯一、生活感がなく“さわやか”なんですよね・・・。
その謎が、最後の方で明かされます。



作品中こんな言葉が出てきます。
「人は2回死ぬ。始めは、生きるのをやめたとき。
二度目は、人から忘れられたとき。」
つまりなおこは、
必死で彼の二度目の死を阻止していたということなのかもしれません。
いつもここにいるのに、心がここにない母を、
あきらめた目で見つめる娘の悲しみも、
ようやくそこで理解できるのですね。
またストーリー上は、
いつもなおこは皆のすったもんだの恋愛話を静かに聞いて、慰める立場であったわけですが、
実は彼女こそが皆に見守られ、
いたわられていたことが解ります。



厚かましく言いたい放題のおばちゃんたち。
だけれどもそれぞれに、人のことにはよけいな口を出さないし、
実はやさしく寄り添っている。
そんなふんわりした人々の輪がここちよく、
ラストの意外な事実にも嫌な後味がありません。
それぞれがそれぞれの生き方、違いを認めている。
こんな“群れ”なら、居心地は悪くなさそうです。

パーマネント野ばら [DVD]
菅野美穂
デイライト


「パーマネント野ばら」
2010年/日本/100分
監督:吉田大八
原作:西原理恵子
脚本:奥寺佐渡子
出演:菅野美穂、江口洋介、小池栄子、池脇千鶴、宇崎竜童、夏木マリ