映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

SUPER8 スーパーエイト

2011年06月30日 | 映画(さ行)
情感にウケてしまったのは、筋違い?



             * * * * * * * *

1979年、アメリカ。
米空軍のあるものを輸送途中の貨物列車が、脱線事故を起こします。
倒れたその貨車の中から、ナニモノかがうごめき出す・・・。

その町に住む14歳の少年ジョーは、
仲間と共に8ミリカメラで映画制作をしていました。
ちょうどその夜、駅で撮影の最中にその脱線事故が起こったのです。
ものすごい迫力の脱線事故シーン。
まあ、貨物列車でまだ良かった・・・と、映画ながら思ってしまいました。
彼らは逃げ惑い、とりあえず無事だったのですが、
その間も8ミリカメラは回り続け、
貨物列車から這い出す不気味な影を撮ってしまう。
極秘事項を撮影されたことに気づいた米空軍は、
目撃者を捜し当てようとするのですが・・・。



映画はこの少年ジョーが事故で母親を亡くしたところから始まるのですが、
いきなり切ないそのシーンに、
心をわしづかみにされてしまいました。
また、今では懐かしい、8ミリカメラの映像が郷愁を誘います。
そして更には彼の初恋。
少女にむけた初々しい感情。
何もかもが甘酸っぱく、懐かしく、哀しいのです。
そんな情感がこの作品を支えていると思います。
だから彼は始めちょっと暗いですね。
特に、親友チャールズの何とも騒々しく賑やかな家庭から、
ひっそりと静まりかえった我が家へ帰ってきたときの気落ちした感じ。
誰もいないかと思えば、父がトイレにこもって泣いていたりする・・・。
切なさ倍増。
なぜかしら、私はこの作品、
あとのエイリアンの暴走シーンなどよりも、
こうしたささやかな感情を描写するシーンの方が心に残っているのです。
ジョーがアリスにメイクを施す、おずおずとしたシーンとか・・・。
アリスの演技のシーンも抜群でしたよねえ・・・。



ところがこの内気っぽい少年がいきなりリーダーシップを表すのは、
アリスが行方不明になってからです。
どうぞこの変貌ぶりをお楽しみください。
でも、彼が母を亡くすというつらい体験をしたことは、
後々に大きな意味を持ってきます。
心の痛みを知っている人は、他の人の心の痛みもわかるということですね。

さて、アメリカ映画らしく、彼は父親とはうまくいっていません。
この父子の確執をどう乗り越えていくのか、
そこも見所だとは思ったのですが、
どうもそこのところの解決編が今ひとつ物足りなく思われました。
でも子供たちが力を合わせてがんばる、
そういうシーンはやっぱり大好きで、楽しめました。
中では花火オタクの子がよかったですよね~。
君はヒーローだぞ!!
ゾンビ役も堂に入っていたし。


さて、最後の最後にお楽しみがあります。
完成した彼らの8ミリ映画作品。
ゾンビが登場するホラー映画です。
なかなか粋な趣向でした!


というようなことで、全般的には悪くはない。
ただ、前宣伝が派手過ぎましたね。
そこまでオーバーに宣伝しなくても、(しない方が)
楽しめた作品なのではないかと思います。
ひっそりと上映していて、何気なく見てみたら
すごく面白かった・・・、と
そういう見方をしたかった作品だなあ。
しかしこの制作陣ですから、鳴り物入りになってしまうのは無理もないか・・・。

「SUPER8 スーパーエイト」
2011年/ アメリカ/111分
監督・脚本:J・J・エイブラムス
制作:スティーブン・スピルバーグ、J・J・エイブラムス、ブライアン・バーク
出演:ジョエル・コートニー、エル・ファニング、カイル・チャンドラー、ライリー・グリフィス