生き抜くための究極の決断

* * * * * * * *
登山家アーロン・ラルストン氏が体験した実話です。
この「実話」というところが大変に重いのです。
フィクションだったら「嘘くさい」と思ってしまうでしょうね。
27歳のアーロンは単独でユタ州ブルーキャニオンの渓谷へ入ります。
ところが誰も通りそうもない谷で落下し、
大きな岩に右手を挟まれ、身動きできなくなってしまう。
水も食料もわずかしかなく、たちまち尽きてしまう。
さあ、どうする・・・。
と、あらかじめこのようなストーリーを読んだだけで、
だいたい結末の想像はつきますね。
はい、そうです。多分、皆さんの想像も当たっています。
なので、怖くて私はこの作品は見ないでおこうと思っていたのです。
でも、いろいろな映画評で、かなり評価がいいですね。
となると、やっぱり見届けてみたい。
かなりの勇気をふるってシアターへ!!

冒頭、都会の喧噪を思わせるシーンから始まります。
映像はドキュメンタリータッチではなく、ちょっとポップな感じ。
アーロンはいかにも解放的な陽気さを持つ反面、
都会的でクールな一面も持ち合わせています。
都市の喧噪を離れて、一人大自然の渓谷を歩き、
ロッククライミングを楽しむ。
孤独に耐えるタフな男、
そんな自負もあったのでしょう。
しかし、このような事故に遭うと、すべてが裏目に出ます。
一人ではどうにもならない。
誰にも行く先を告げていない。
パニックになりそうな自分を極力押さえ込み、
今自分が持っているモノで何ができるか考えてみる・・・。
とりあえずはナイフがある。
しかし安物でぜんぜん切れない。
が、まずはこれで岩を削ってみるか・・・。
けれども、その作業もどうもムダのことのようです。
時間だけはたっぷりありますが、
次第に喉の渇きは増し、体力も衰えて行く・・・。
この極限状態で、彼はしばし過去を回想したり、脱出を夢想したりします。
シーンとしては彼がただ谷底につなぎ止められているだけなのですが、
カメラワークや彼の妄想シーンなど変化に富んでいて、
飽きることがありません。
そして結末へ向けて次第に緊張が高まっていきます。

この大自然の中にたった一人瀕死でいることで、
彼はこれまで自分がいかにきちんと人と接してこなかったのかを思い知ります。
もう一度生きたい。
きちんと社会や人々とつながりたい。
その思いの強さが、彼に一つの決断をさせるのです。
生き延びることが、こんなにもつらいなんて。
でも、彼は自分の生を勝ち取るのですね。
人間の意志の強さに感嘆せざるを得ません。
ややもすると、グロテスクなテーマになってしまいそうに思うのですが、
この作品、実に輝かしい人の生きる力を描いています。
数々の高評価も、当然ではありますね。
「この岩は、俺の手を挟むために何億年もかけて宇宙をさまよった末に
この谷に落ちてきて、俺が通るのをまっていた・・・」
彼がそんな風に思うシーンが印象的でした。
確かに、この広い渓谷の中で、
たまたま落ちてきた岩にどうして手を挟まれなければならないのか。
神秘的な何かを感じずにはいられません。
が、それはやはり、単に物理的な現象の一つに過ぎない。
何でたまたまこの現代のこの日本、この東北で巨大な地震が起きて、
かつてないような大津波が押し寄せるのか。
そうしたどうにもならない疑問にも似ています。
このような自然現象の中で、人間はいかにも弱く儚いのですが、
でもなおかつ、人間は時にその精神の力で、驚くような力を発揮するのですね。
私たちも強くならなければ・・・・・。
2010年/アメリカ・イギリス/95分
監督:ダニー・ボイル
原作:アーロン・ラルストン
脚本:サイモン・ビューフォイ、ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ、ケイト・マーラ、アンバー・タンブリン

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登山家アーロン・ラルストン氏が体験した実話です。
この「実話」というところが大変に重いのです。
フィクションだったら「嘘くさい」と思ってしまうでしょうね。
27歳のアーロンは単独でユタ州ブルーキャニオンの渓谷へ入ります。
ところが誰も通りそうもない谷で落下し、
大きな岩に右手を挟まれ、身動きできなくなってしまう。
水も食料もわずかしかなく、たちまち尽きてしまう。
さあ、どうする・・・。
と、あらかじめこのようなストーリーを読んだだけで、
だいたい結末の想像はつきますね。
はい、そうです。多分、皆さんの想像も当たっています。
なので、怖くて私はこの作品は見ないでおこうと思っていたのです。
でも、いろいろな映画評で、かなり評価がいいですね。
となると、やっぱり見届けてみたい。
かなりの勇気をふるってシアターへ!!

冒頭、都会の喧噪を思わせるシーンから始まります。
映像はドキュメンタリータッチではなく、ちょっとポップな感じ。
アーロンはいかにも解放的な陽気さを持つ反面、
都会的でクールな一面も持ち合わせています。
都市の喧噪を離れて、一人大自然の渓谷を歩き、
ロッククライミングを楽しむ。
孤独に耐えるタフな男、
そんな自負もあったのでしょう。
しかし、このような事故に遭うと、すべてが裏目に出ます。
一人ではどうにもならない。
誰にも行く先を告げていない。
パニックになりそうな自分を極力押さえ込み、
今自分が持っているモノで何ができるか考えてみる・・・。
とりあえずはナイフがある。
しかし安物でぜんぜん切れない。
が、まずはこれで岩を削ってみるか・・・。
けれども、その作業もどうもムダのことのようです。
時間だけはたっぷりありますが、
次第に喉の渇きは増し、体力も衰えて行く・・・。
この極限状態で、彼はしばし過去を回想したり、脱出を夢想したりします。
シーンとしては彼がただ谷底につなぎ止められているだけなのですが、
カメラワークや彼の妄想シーンなど変化に富んでいて、
飽きることがありません。
そして結末へ向けて次第に緊張が高まっていきます。

この大自然の中にたった一人瀕死でいることで、
彼はこれまで自分がいかにきちんと人と接してこなかったのかを思い知ります。
もう一度生きたい。
きちんと社会や人々とつながりたい。
その思いの強さが、彼に一つの決断をさせるのです。
生き延びることが、こんなにもつらいなんて。
でも、彼は自分の生を勝ち取るのですね。
人間の意志の強さに感嘆せざるを得ません。
ややもすると、グロテスクなテーマになってしまいそうに思うのですが、
この作品、実に輝かしい人の生きる力を描いています。
数々の高評価も、当然ではありますね。
「この岩は、俺の手を挟むために何億年もかけて宇宙をさまよった末に
この谷に落ちてきて、俺が通るのをまっていた・・・」
彼がそんな風に思うシーンが印象的でした。
確かに、この広い渓谷の中で、
たまたま落ちてきた岩にどうして手を挟まれなければならないのか。
神秘的な何かを感じずにはいられません。
が、それはやはり、単に物理的な現象の一つに過ぎない。
何でたまたまこの現代のこの日本、この東北で巨大な地震が起きて、
かつてないような大津波が押し寄せるのか。
そうしたどうにもならない疑問にも似ています。
このような自然現象の中で、人間はいかにも弱く儚いのですが、
でもなおかつ、人間は時にその精神の力で、驚くような力を発揮するのですね。
私たちも強くならなければ・・・・・。
2010年/アメリカ・イギリス/95分
監督:ダニー・ボイル
原作:アーロン・ラルストン
脚本:サイモン・ビューフォイ、ダニー・ボイル
出演:ジェームズ・フランコ、ケイト・マーラ、アンバー・タンブリン